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 (昭和47年)

プリメインアンプ
PMA-500
\75,000
■1972年9月




 今、トランジスタ・アンプが直面している諸問題の中て、最も重要と思われるのは音質に関する事と思います。ひと口に“良い音”といっても、カタログの規格数値などで簡単に良さが表わせるものでありませんが、それらの静特性あるいは動特性といった数値をもう一歩深く研究し、特性を改善することが、Hi-Fiへの地道な努力ではないか、と考えています。
 一貫して、放送局用向けのプロ用機器をつくり続けているDENON。その実績と高度な技術の粋を集め、ひたすら“音楽性”を求めてここに生まれのがPMA-500です。
 PMA-500は、特に音質面に強く影響を及ぼすと考えられる回路方式や特性上での入力インピーダンスとひずみの関係や、SN比、そして、負荷(スピーカ)の性質を考えたうえでの出力インピーダンス(ダンピング・ファクタ)などのありかたに留意し、アンプの概念を大きく飛躍させたところに位置づけられるものでしょう。


【セールスポイント】

■パワー段は、音質の良さで定評のある全段直結(OCL)・純正コンプリメンタリ回路

特性のよいPNP-NPNダーリントンバワートランジスタを使用、低ひずみ率で大出力が得られるとともに、ドライブ効率や出力帯域幅、ダイナミック特性のバランスが飛躍的に向上しました。

■プリアンプには、ローノイズトラシジスタ、タンタルコンデシサなどの最良部品を採用

プリアンプ部に精度の高いパーツと、耐圧の優れたローノイズトランジスタを採用。ダイナミックマージンとSN比の向上はもちろん、あらゆる動作に対しても十分すぎるほどの配慮がなされています。特にイコライザの帰還回路には、RIAA曲線からの偏差を少なくするため、精度の高いパーツが使用されております。

■オーディオ・ミューティング回路3段切換えの高性能

適性入力レベルで、最良のS/Nを発揮するようアッティネート式のミューティング・スイッチが0dB、−10dB、−20dBの3段切換えになっています。したがって、ソースや環境に応じた小音量時でも、ポリュウムコントロールは微妙な音量変化に対しても、スムーズに可変することができます。

■あらゆるプログラム・ソースを十二分にこなす豊富な2系統入力端子

オーディオ・ファンにとって大切な切換機構(ファンクション)も、PHONO、TUNER、AUX、PLAY、MICすべて2系統を備えていますので、アンプ本来の特性をそこなうことなく、Hi-Fiバリエーションが実現できます。

■2台のテープデッキをフル活用できるテープモニタ、ダビングスイッチつき

オープンリール、カセットテープなど、種類に関係なく2台のテープデッキへの同時録音、どちらのデッキへのダビングも自由自在。録音時、ダビング時でのモニタも、モニタスイッチの切換え1つで行えます。

■聴きやすい音創りのロー、ハイフィルター

ローフィルタ、ハイフィルタは、あらゆるプログラムゾースを検討した結果、カットオフ周波数をそれぞれ40Hz(12dB/oct)、9KHz(12dB/oct)に設定することにより、ソースの音質をそこなうことなく効果的に、モータゴロやレコードのスクラッチノイズを軽減できます。

■容易に左右出力バランスがとれる、ナル(NULL)・バランス・スイッチ

左右スピーカの中央まで足を運んでバランスをとらなくても、カートリッジなどの出力レベルまで、容易にバランスがとれるナル・バランス・スイッチが設けられています。

■2系統のスピーカ端子

お手持ちの数あるスピーカ・システムを無駄にすることなく、フルに楽しんで頂けるよう2系統のスピーカ端子が設けられています。従ってAスピーカとBスピーカを切換えて聴いたり、A、B両方を同時に楽しむこともできます。

■正確に周波数特性を平坦にできるトーン・ディフィート・スイッチ

BASS、TREBLEのつまみを中央にセットすれば、周波数特性はほぼ平坦になりますが、より平坦な特性を望まれる場合は、このスイッチで操作できます。

■MCカートリッジに使用するマッチングトランス用ソケット組み込み

■本格的2マイク・ミキシング採用

マイク入力端子は2系統で、それぞれ専用のマイクアンプとレベル調節ボリウム付属の高級ミキシング回路です。


【新製品PMA-500の特長】

■プロ・センスから生まれた高級回路構成

本機の回路構成について、まず入口のPHONO回路は、高耐圧ローノイズ・トランジスタ使用の3段直結E-E帰還形、別売MC用昇圧トランスAU-305をソケットに差し込めばS/Nの良いMCカートリッジの音がスイッチひとつで使えます。MICアンプは2チャンネル専用で単独のレベル・セットができ、バッファ・アンプの後にバランスタイプ高級ミキシング回路に続きます。ミキシングOFFのときは、回路が完全に切り放され、S/N比劣化などの心配がありません。次に、トーン・コントロール回路は高耐圧ローノイズトランジスタとFETを含む3段直結NF形で超低ひずみ率と高ダイナミックレンジを誇っています。また、トーン・デフィート・スイッチによりワンタッチで正確に周波数特性を平坦にでき、さらにトーン回路出力部もエミッタ・フォロアでフィルタ回路に送るバッファ・アンプ付きです。
続いてローカット、ハイカット・フィルタは本格的なオクターブ12dBのアクティブ・フィルタ回路です。次に、LRバランサーと3段切換のオーディオ・ミューティグが続き、エミッタ・フォロアのバッファ・アンプにより、ローインピーダンスでプリアンプ出力端子、及びパワー段に送られています。パワー回路は、ダーリントン・パワートランジスタによる全段直結差動増幅OCL回路で超低ひずみ率、ダンピングのきいた大出力を得ています。もちろん安定な動作が要求されるプリアンプや、コントロール・アンプの電源回路は、安定化電源でドライブする一方、要所要所にバッファ・アンプを使い、プロセンスの高級な回路構成となっています。

■ダーリントン・パワートランジスタ採用 超低ひずみ率0.03%の“タフ”な全段直結差動増幅 SEPP OCL回路

本機のパワーアンプには、世界の著名アンプでおなじみの半導体メーカ米国モトローラ社の優れたダーリントン・パワートランジスタをPNP-NPN形をペアで採用しました。
電気的特性で対称性が優れたPNP-NPN ダーリントン・パワートランジスタと直流アンプ並の全段直結OCL回路からなるパワー段は、-3dB定格出力時で調波ひずみ率0.03%以下、混変調(IM)ひずみ率0.05%以下という超低ひずみ率を実現し、さらにスピーカのドライブと制動能力(ダンピング)を示す出力インピーダンスも十分に低くすることができ、音楽性に最も大切な中音域から低音域のダンピングとパワー・バンドワイズ(出出帯域幅)特性を大きく改善しました。従来のコンデンサー結合のアンプに比べ、ひずみの無い澄んだ音、さらに高音から重低音まで歯切れの良いエネルギッシュな音を再生することができました。
ちなみに、両チャンネル駆動時での連続定格出力は、40W+40W(8Ω、0.5%)の大出力、さらに出力短絡にも耐えるタフな心臓部がPMA−500のダーリントン・パワートランジスタなのです。

■両チャンネル駆動40W+40W(8Ω 0.5%)の連続定格出力にもゆとりをもつ大形ラジエータ、温度 補償回路

パワーアンプの連続最大出力は、トランジスタの最大定格と二次破壊により動作領域が制限され、この範囲内、すなわち安全動作領域(ASO)内に負荷曲線の軌跡を収めなければなりません。特に負荷が誘導性、又は容量性が著しい場合は注意が必要となってきます。本機では、ジャンクション耐熱温度(T)200℃、コレクター損失(Po)200Wという驚くべき性能のダーリントン・パワートランジスタと余裕のある絶大な表面積をもつ大形ラジエータを採用し、シリコングリスや絶縁シートの細部に至るまでの放熱効果と、バイアス回路の温度補償の安定性を考慮し、ASOを充分に検討し設計しました。ゆとりのあるパワー回路設計が40W+40W(8Ω 0.5%)の連続定格出力を満し、負荷短絡にも耐える“力”のあるアンプ PMA-500を生みだしました。

■低域の連続ソースにも “くずれ”をみせない強力2電源回路

パワーアンプをドライブする電源部には、無誘導ハイリップル形大容量ケミカルコンデンサーや、内部抵抗を小さくし温度上昇を押さえ、リーケージ・フラックスの影響をも材質面から考慮した高級電源トランスを使用しました。電源の直流内部インピーダンスを低く設計し、低域特性及び過渡特性に良好な結果を得ました。特にパワーアンプの出力インピーダンス特性は直流域まで伸び、スピーカを良く制動し、ダンピングの向上により、低域の音のニゴリが解消され、澄みきった音を再生することができます。

■PHONOプリアンプは正確なイコライズと最大許容入力200mVrmsの広いダイナミック・レンジ、高S/N比

RIAAイコライザーのイコライズ特性は RIAA標準カーブとの偏差が30Hz〜15KHzにわたり、±0.5dB以内という高精度であります。レコードの音溝に刻まれた芸術的センスを忠実に再生します。
また、電気的諸特性も高級機にふさわしい性能をもっています。最大許容入力200mV(1KHz34dB)の広いダイナミックレンジをもつ本機では、公称出力30mVという大出力カートリッジを使用したとしても、出力波形のクリップの危険性がありません。低雑音化のポイントであるプリアンプ前段には、最新のローノイズ・トランジスタや、抵抗器はもちろんですが、よりノイズの問題となっているコンデンサーには、高価なタンタル固体コンデンサーやアルミ固体コンテッサーなどのローノイズ部品がおしみなく使われています。

■マニアのシビアな要求に答えた3段切替オーディオ・ミューティングスイッチとナル・バランスの採用

適性入力レベルで、最良のS/N比を発揮するようアッテネート式のミューティング・スイッチに-10dBを加え、0、-10、-20dBの3段切換えになっています。また、小音量試聴時で、-10dBポジションとすれば、ボリュームのトラッキングエラーが無く、スムーズに微少音量の変化ができ、残留雑音もなく音を楽しむことができます。
左右スピーカの中央まで足を運ばなくとも、カートリッジやスピーカのインピーダンスのバラツキをも含め、モノラル・ソースで簡単にチェックできます。

■本格的バランス形2チャンネル・マイクミキシング回路

マイク入力端子は2系統で、それぞれ専用のマイクアンプとレベル調節ボリウム付属の本格的バランス形2チャンネル・マイクミキシング回路を採用しました。種類や感度の異ったマイクも苦にせず使いこなすことができます。大きくも小さくも左右、センター自由にミキシング可能で、プロ用、録音マニア用にも最適です。

その他本機の特長としては

■あらゆるプログラム・ソースを十二分にこなす豊富な2系統入力端子

■本格派のためのMCマッチングトランス用ソケットと切替スイッチを装備

■2台のテープデッキをフルに活用できる2組のテープモニタ回路。同時録音、どちらのデッキへのダビングも自由自在。

■2組のスピーカシステムがA、B、A+Bとスイッチひとつで自由に切替え可能。

■あらゆるプログラムソースをもとにして、音質をそこなうことなく、効果的なカットオフ周波数のオクターブ12dBロー・ハイフィルタ

■ワンタッチで正確に周波数特性を平坦にできるトーン・ディフィート・スイッチ

■世界中の電源電圧に対応するAC電圧セレクター付き。(100V、120V、200V、220V、240V)電源部の使用部品は世界の規格に適する高優秀性・安全性。


【PMA−500主要規格】

  • 形式
    • オールシリコン・トランジスタ ステレオ・プリメインアンプ
  • 使用半導体
    • NPN型トランジスタ37ヶ
    • PNP型トランジスタ2ヶ
    • FET2ヶ
    • ダイオード10ヶ
    • パリスター2ヶ
  • パワーアンプ部
    • ミュージック出力
      • 100W(負荷 8Ω)
    • 定格出力
      • (片チャンネル駆動時)42W×2(負荷8Ω)
      • (両チャンネル駆動時)37W×2(負荷8Ω)
    • 調波歪率 T.H.D.
      • 0.1%以下(定格出力時)
    • 混変調歪率(60Hz/7KHz:4/l)
      • 0.1%以下(等価定格出力時)
    • 出力帯域幅
      • (T.H.D. 0.1%)5Hz〜45KHz(+0/-1dB)
      • (T.H.D. 0.5%)5Hz以下〜75KHz(+0/-1dB)
    • 周波数特性(出力Po=10Wconst)
      • 10Hz〜100KHz(+0/-1dB)
    • 入力インピーダンス
      • 80KΩ±20%(5Hz以下〜20KHz以上)
    • 入力感度
      • 1Vrms/80KΩ
    • 残留雑音
      • 0.01μW以下(入力端子短絡)
    • S/N比
      • 95dB以上
    • ダンビングファクター
      • 50以上(5Hz以下〜10KHz以上)
    • 出力インピーダンス
      • 0.16Ω以下、1KHz以下にて純抵抗
  • プリアンプ部
    • 最大出力
      • 5.0V(20Hz〜10KHz)
    • 調波歪率 T.H.D.
      • 0.1%以下(最大出力時)
    • 定格出力(lV)時 100Hz、1KHz、10KHzの調波歪率
      • いずれも0.05%以下
    • 入力感度/入力インピーダンス
      • PHONO-1 2mVrms/60KΩ±20%(10Hz〜20KHz)
      • PHONO-2 2mVrms/60KΩ±20%(10Hz〜20KHz)
      • MIC 1mVrms/100KΩ±20%(10Hz〜20KHz)
      • TUNER 100mVrms/60KΩ±20%(10Hz〜10KHz)
      • AUX 100mVrms/60KΩ±20%(10Hz〜10KHz)
      • TAPE P.B 500mVrms/100KΩ±20%
    • 混変調歪率
      • 0.1%以下(定格出力時)
    • 周波数特性(TONE DEFEAT ON)
      • 10Hz〜40KHz(+0/-1dB)
    • 最大許容入力(T.H.D. 1%以下)
      • PHONO-1&2 35mVrms(100Hz)、200mVrms(1KHz)、650mVrms(10KHz)
      • MIC 80mVrms
    • イコライザ特性
      • RIAA偏差 ±0.5dB(30Hz〜15KHz)、±0.3dB(30Hz〜10KHz)
    • S/N比
      • PHONO-1&2 65dB以上(入力端子短絡)
      • MIC 55dB以上(入力端子短絡)
      • TUNER 75dB以上(入力端子短絡)
      • AUX 75dB以上(入力端子短絡)
      • TAPE 75dB以上(入力端子短絡)
    • ミューティング
      • -10dB、-20dB
    • トーンコントロール
      • BASS +10dB〜-10.5dB(80Hz)
      • TREBLE +10dB〜-9dB(12KHz)
    • HIGH FILTER
      • カットオフ周波数 9KHz(12dB/oct)
    • LOW FILTER
      • カットオフ周波数 40Hz(12dB/oct)
    • 出力/出力インピーダンス
      • 100mVrms/1KΩ以下(TAPE REC)
      • 40mVrms/80KΩ(DIN)
  • 端子類
    • 入出力端子
      • PHONO-1、PHONO-2、AUX、TUNER 、TAPE-1(REC&P.B)、TAPE-2(REC&P.B)、DIN端子(TAPE-1、TAPE-2)、SPEAKER端子(A&B)、GND
    • ジャック
      • MICジャック、ヘッドホンジャック
    • AC SOCKET
      • SWITCHED  2ヶ 250W
      • UN SWITCHED 1ヶ 150W
  • 電源
    • AC100V 50Hz/60Hz
  • 消費電力
    • 56W(電気用品取締法による)
  • 寸法
    • 430W×140H×350D(mm)
  • 重量
    • 12.5kg

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