音楽機材専門店、池部楽器店「パワーレック」にデノンヘッドホンAH-D5200について聞きました
楽器から音楽制作機材まで幅広いラインアップで日本最大級の規模を誇る池部楽器店。そんな池部楽器店の中で、デノンのヘッドホンAH-D5200を取り扱っていただいている「パワーレック」(渋谷)にお邪魔してきました。レコーディングやDTMなど音楽制作機材を専門に扱うパワーレックでAH-D5200がどう評価されているのか、スタッフの大倉さん、大田さん、鹿島さんにお話をうかがいました。
池部楽器店パワーレックはレコーディング機材の専門店
パワーレック 5Fフロアチーフ 大倉祐介さん
●パワーレックは音楽制作用機材の専門店とのことですが、主にどんな製品を扱っているのか教えてください。
大倉:レコーディング機材専門店ですので、マイクやモニタースピーカー、ヘッドホン、ボーカルエフェクターやアンプシュミレーターなど、レコーディング関連のソフトやハード、AV関連の製品を扱っています。2フロアあってパソコンを介するソフトウェア系の製品は5階に、マイクやスピーカーなどハードウェア系の製品は6階に置いています。
●お客さんは音楽制作やレコーディングをする方がメイン層なのでしょうか。
大倉:そうですね。もともとミュージシャンでレコーディングをする方がターゲットでした。今はPCを使って制作から入る方も多いですけど、やはり今でも楽器をやっていて、その流れでデモテープを作りたい、という方が多いです。
AH-D5200の販売を始めたきっかけはプロのエンジニアたちの口コミ
パワーレック 鹿島さん
●今回はデノンのヘッドホンAH-D5200についてお話うかがいたいのですが、パワーレックではAH-D5200以前にデノン製品をお店に置いていたのでしょうか。
鹿島:扱ってなかったですね。
●このAH-D5200からということなのですね。扱い始めた理由を聞かせてください。
鹿島:プロのエンジニアたちが音楽制作の現場で使い始めているという口コミですね。エンジニア界隈でAH-D5200のことが広がっていたので、ちょっと聴いてみようとラインアップを取り寄せて聴いてみた感じです。
●最初はどんな印象だったんですか。
鹿島:扱いやすいというか、フィット感がやっぱり優しいと思いました。音の解像度の部分もオーディオ用に特化してるという感じはしなかったです。
●音楽制作においてヘッドホンは必須ですよね。
大倉:必要ですね。
●パワーレックに置いてあるヘッドホンのシェア的にAH-D5200はどんな位置にありますか。
大倉:ヘッドホンを買いに来る若い世代のお客さんからすれば、AH-D5200は価格帯としては少し高い製品ですので、正直言ってシェアとしてはあまり大きくないです。シェアの大半は1~2万円の低めの価格帯のものになります。ただ、ローコストなものを探してる方が多い中でも、より高いクオリティのヘッドホンを探している方もいる。そんなお客さんの選択肢の一つになっているかなという風には思っています。
パワーレック 大田清さん
●スタンダードなヘッドホンより解像度が高いもの、よりいいものを求めているお客さんもいて、そのうちの選択肢の一つということですね。実際のお客さんの反応はどうですか。
大田:はじめから製品を決めて買いに来るお客さんもいますが、音を聴き比べて決めようというお客さんもいらっしゃいます。そういうお客さんは明確にどういう音が欲しいのか、どういうフィット感がいいのかがあらかじめ頭に入っていて、色々選択肢のある中で試聴して、他のメーカーと比べてAH-D5200を選ばれることが多いです。
最近は全体的に昔に比べてレコーディングの需要のボトムはすごく広がってるんです。楽器をやる以外の方、普通にPCなどで音楽制作をしてネット配信する若い方が増えていて、中高生はもちろん小学生でもできてしまいます。
●今は小学生でも音楽制作ができるんですね。
大田:そうなんですよ。そういった若い層が今後ステップアップして、いいものを求めるようになった時、AH-D5200のようにグレードが高いヘッドホンの需要はもっと高まるかもしれません。
あと、もう一つの需要がオーディオ層です。今ハイエンドオーディオを扱っているメーカーが少なくなってきていて、ハイエンド機が集中している価格帯があります。それらと比較すると、レコーディング機材ってコスパがすごくいいんですね。ハイエンドオーディオだと何百万円するものがレコーディング用機材だと数十万円で買えるといった部分で、オーディオ好きの方でもレコーディング機材を扱うお店に来て、購入していく傾向もあります。ヘッドホンも同じですね。
●なるほど。音楽制作をしている人だけではなく、いわゆる一般的に音楽を楽しむ方にも需要があるんですね。
大田:はい。DACを使ってPCミュージックを聴く方も増えていますので、そういう方のニーズももちろんあります。完全にレコーディングだけをやるというよりも、マルチな方向、色々なニーズを取り込んだ需要ですね。
パワーレックはレコーディング専門店という専門性の高さで、他にはない認知度があります。例えば家電量販店のハイエンドオーディオコーナーに行く方が、こっちに来たらもっと刺激的なものがあるんじゃないかって、ネットで調べて来てくださる方もいます。
メーカーによって違うモニターヘッドホンのフラットさ
●オーディオ好きの方の中でも、音楽制作専門ショップにある業務用の機器のほうがプロっぽくていいと思う方もいますよね。その場合音楽制作用のモニター環境、スピーカー、ヘッドホンはオーディオ用のものとどのあたりが違うのでしょうか。それともあまり変わらないのでしょうか。
大倉:もちろん好みがあると思うので、どちらが良いとか悪いとかではないということを前提にして、レコーディングエンジニアや楽器を演奏する人は、忠実さを求めますよね。自分の楽器の音を忠実に聴きたいし、作業している曲を正しく聴きたいっていう。そういう方はフラット寄りのもの、過剰に音色が変化しないものを好まれる傾向があります。一方でオーディオ好きの方は極端に言えば自分が好きなもの、かっこいいと思うものを選んでいただければ良いのかなと思います。パワーレックにいらっしゃるお客さまは、やはり原音に忠実な、音色傾向がフラットなものを求めていて、どれがより忠実で、クリアなのかというのを実際に聴いて確かめにいらっしゃるという感じです。
●パワーレックで取り扱う各社のモニターヘッドホンはフラット寄りなものが多いのでしょうか。
大倉:そうですね。
●その中でAH-D5200はどういったポジションにあるんですか。
大倉:このインタビューのお話をいただいたのもあって、店に置いているラインアップを改めて聴き比べてみたんです。一応すべてフラットなモニターヘッドホンと言っている以上、フラットさを売りにしていますので、違いが分かりにくいかなと思ったんですが、実際聴いてみると、こうも違うかというぐらいに違うんですよ。
●個々にバラバラと聴くのではなく、一気に聴き比べるとかなり違うんですね。
大倉:はい。もちろんヘッドホンにはいろんな要素があるんですけど、フラットという、言葉一つを信じて判断するのも怖いなっていうぐらいばらつきがありました。
●同じフラットといっても、メーカーによってその内容が違うということなんですね。
大倉:そうですね。同じ曲を再生しても全然違うので、どれが良いとか悪いとかではないんですが。その中でAH-D5200はかなりクリーンで、音色の色付けが少ない方だと思います。音色を派手な感じから大人しい感じの順に並べていくと、これは真ん中ぐらいにいるんだろうなっていう。そういうポジションだと思います。キックの音一つとってもこんなに近いのかっていう製品もあれば、余裕がある感じ、前後感があるなっていうのもあったり。ぱっと聴いただけでもきりがないくらい違って、思いのほかバラバラでしたね。もうちょっとまとまるかなと思ったんですけど。すべてAH-D5200と同じ、密閉型のヘッドホン製品で聴き比べました。
大田:分かりやすく言うとアコースティックギターでも、マーチンとギブソンでは音が全然違いますよね。品番によっても違うし、作られた年代によっても変わる。それと同じ感覚だと思います。マイクもスピーカーも、オーディオもそうですよね。
大倉:AH-D5200は気安く買える価格ではないと思いますが、上をみたら10万円以上するものもありますので、それを考えるとバランスはとてもいいのかなと思います。
●このハウジング、木目のデザインとかはどうですか。
大倉:リッチなイメージですよね。音楽制作のスタジオ家具って安くてつるっとしてるものが多いですが、作業環境にこだわってスタジオ作りをされる方は、形や色味も気にされるので良いと思います。
ステイホームで音楽以外の需要も伸びている
●コロナ禍が続いていますが、影響はどうでしょうか。
大倉:需要は伸びてますね。特にスピーカーが売れてます。
●以前、アーティストの方への取材でステイホームになった途端に音楽制作機材が売り切れになったと聞きました。
大田:そうですね。それには他にも理由があって、リモート会議はじめ、配信等をビジネスでやらなきゃいけないという方々が、我々のような楽器屋が扱っているマイクなどを必要とされていて殺到するということがありました。
●コロナ禍で自宅録音をしている人も増えているんですね。ギターも売り切れていると聞きます。
大倉:ライブもできないし、発信の場がなくて、これを機に家から配信を試してみようっていう動きはありますね。
大田:あとは昔買った機械をクローゼットから引っ張り出してきてまたやろうかなっていう、年代的には80年~90年代にやっていた人たちもいます。コロナ自体は本当に大変なことですが、新しいこと、もしくは昔やっていたことに再チャレンジする方が増えているっていうのはプラスの面ですよね。
●パワーレックの強みというのは何でしょうか。
大倉:一般的な家電量販店にはないもの、 専門性の高いものが揃っているところですよね。お客さんも1日いても飽きないとおっしゃってくださったり、初めて来て、「こんなところがあったんだ」っていう方もいらっしゃいます。
●音楽制作に特化したお店は非常にユニークだと思います。一般の方が来ても楽しめそうですね。
大倉:音楽制作をメインとしたお店は他にもあると思うんですけど、これだけの品数を揃えているのは他にはないかもしれないです。専門店なのでちょっと敷居が高く見えるかもしれないですが、まったくそんなことはないので、いい意味でラフに、楽器屋さんをのぞく感じで来てほしいですね。今はコロナで外出も慎重になる時期だとは思いますので、無理のない範囲でというかたちにはなりますが。
大田:音楽制作を始めたばかりの方には、ビギナー向けの制作ツールも揃えています。始めたばかりの頃は、機材のことを何も知らないのは当たり前なので、そこから一緒に成長して最終的にはプロを目指す、というところでもサポートさせていただければと思っています。
●オンラインショップもありますので、事前にいろいろラインアップを見ておくとスムーズかもしれませんね。本日はありがとうございました。
池部楽器店パワーレック
住所:〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町24-2 第3富士商事ビル 5F&6F
営業時間:11:00~20:00 年中無休(元旦を除く)
※コロナで営業時間が変更になっている場合がございます。お出かけの際は事前にウェブサイト等でご確認ください。
電話番号:03-5456-8809
メールアドレス:[email protected]
店舗特設ページ:
https://www.ikebe-digital.com/
https://www.ikebe-gakki.com/realshop/powerrec/
(編集部S)