
Apple MusicのDolby Atmos「空間オーディオ」をAVR-X2700Hで4.0.2chで試聴してみた

2021年6月革新的なアップデートを行い、Dolby Atmosを採用した「空間オーディオ」と呼ばれる3Dミュージックの配信や、スタジオで録音されたマスター音源と実質的にほぼ変わらないロスレスや、ハイレゾロスレスでの音楽配信をスタートしたApple Music。今回は「空間オーディオ」を、AVレシーバー「AVR-X2700H」によるサラウンド再生で試聴してみました。

Apple Musicの空間オーディオ・ロスレス・ハイレゾ対応
もうすでにご存じの方も多いとは思いますが、Apple Musicが2021年6月に革新的なアップデートを行いました。「空間オーディオ」と呼ばれるDolby Atmosフォーマットによる3Dミュージックの配信や、スタジオで録音されたマスター音源と実質的にほぼ変わらない音質を再現するロスレス、ハイレゾでの配信がスタート。具体的にアップデートされた3点をまとめてみました。
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空間オーディオに対応
音声フォーマットは「Dolby Atmos」。AVアンプを使って聴く場合には、「Apple TV 4K」経由で再生するのがおすすめです。対応機器の詳細についてはAppleのウェブサイト(外部サイトへリンクします)をご確認ください。 - カタログの9000万曲すべてがロスレス配信(一部例外あり)
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上記のうち、100万曲以上の楽曲がハイレゾロスレスで配信
いずれもApple Lossless Audio Codec (ALAC) というオーディオ圧縮技術で、44.1kHz/16bit (CD品質) から最大192kHz/24bit(ハイレゾ)の解像度でエンコードされるようになっています。
3Dサウンドといえば、Amazon Music HDにも3Dオーディオがありますが、そちらはスマートスピーカーやヘッドホンで再生可能なバーチャルサラウンドのみ。AVアンプを介してDolby Atmosのリアルなサラウンドで音楽が楽しめる配信サービスは、今のところApple Musicだけ。ちなみに月額利用料は据え置きの980円となっています。
フロント、リア、トップの4.0.2チャンネルで再生
今回はこのApple Musicの「空間オーディオ」を社内の試聴室にセットアップしたホームシアターで体験してみました。使用したAVレシーバーはAVR-X2700H。Apple TV 4Kをつないで、4.0.2チャンネルのサラウンド環境で再生しました。
まるで自分も同じステージにいるかのような、全く新しい音楽体験
Apple Musicには「空間オーディオ」の楽曲を集めた多くのプレイリストがあります。その中から初めに聴いたのは、「Spatial Audio」。まずは、ラジオDJの落合健太郎さんのオーディオガイド「ステレオから空間オーディオへ」を聴いてみました。
空間オーディオが今までの音と何が違うのか、というポイントの解説がとても分かりやすいので最初に聴くのがおすすめです。曲はマーヴィン・ゲイの1971年の名曲「What’s going on」です。※現在このトラックの配信は終了しています。
「What’s going on」の音が、当時録音されたままの「モノラル」→普段聴き慣れている「ステレオ」→新しい音楽体験ができる「空間オーディオ」と変わっていくのですが、そうやって順を追っていくとそれぞれの違いが大変分かりやすく、面白いのです。
空間オーディオで再生された「What’s going on」が流れる中、ガイドの落合さんの「アコースティックギターとエレキギターの間に空間を感じませんか?」という解説に大きく頷いてしまいます。楽器、ボーカルとの間にも空間があり、その場がまるでステージのようです。よくある“包み込まれるような感覚”ではなくて、マーヴィン・ゲイの音楽に“実際に包まれている”のが分かることの驚きといったら。いまこの空間の中にマーヴィン・ゲイがいるような感じがしてしまいます。この曲が誕生して50年後の今、こんな新しい聴き方がされるとはマーヴィン・ゲイもびっくりではないでしょうか。
次に、ビートルズの「Here Comes the Sun(2019 MIX)」、レディ・ガガ&アリアナ・グランデの「Rain On Me」を続けて試聴しました。
ジョージ・ハリスンが作詞作曲した「Here Comes the Sun(2019 MIX)」は“その年(1969年)初めての春らしい日差しを感じて歌詞とメロディが頭に浮かんだ”ことで生まれたとされる名曲です。アコースティックギターの優しい音色とボーカル、コーラスが重なり、その音に囲まれると、ビートルズのメンバーがスタジオで演奏しているただ中に放り込まれたような感覚になり、とても不思議で、同時にあたたかい気分になりました。今さらですが、なんていい曲なんだろうと、楽曲の持つ魅力も改めて実感しました。
レディ・ガガとアリアナ・グランデの共演で人気の楽曲「Rain On Me」。空間オーディオの聴きどころとしては、やはりボーカルのかけ合いでしょうか。レディ・ガガとアリアナ・グランデがそれぞれ別の位置にいて、歌っているその様子がリアルに分かって興奮します。クオリティの高い楽曲、ポップスター2人の存在感にとても密度が濃い空間が出来上がっていました。
流れる音楽によって、その場が圧倒的に変わってしまう感じ、その音楽体験は今までにないものでした。とにかく面白くて、これも!これも!とどんどん聴いてしまいます。クラシックは、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団によるホルストの「惑星」を、音数という面でその対極にあるヒップホップでは、ミーゴスの「Malibu (feat.Polo G)」を試聴。
クラシックは自然な臨場感があり、フルオーケストラの音に囲まれる迫力と心地よさにうっとりしてしまいます。対して、ヒップホップは背面からトラックが流れ、ラップが移動しながら方々のスピーカーから聴こえてくると、どこかのストリートで彼らと一緒に楽しんでいるような感覚がしました。全体的に音を聴くというより、音を浴びる、体験するという感覚のほうが近いと思います。
空間オーディオ内、音楽ジャンルでカテゴライズされたプレイリスト
音楽をロスレス&ハイレゾロスレスで聴くには?
次に、空間オーディオではなく、ロスレスの曲も試聴してみました。Apple Musicのカタログ9000万曲すべてがロスレス配信といっても、どんな環境でもロスレスやハイレゾロスレスで聴けるわけではなく、設定や接続方法などで、音質は変わります。デノン製品と合わせて見て行きましょう。音質的にはAAC→ロスレス→ハイレゾロスレスとグレードアップしていきますが、それぞれをどの設定で聴けるのか、整理すると下記になります。
- Bluetoothでのワイヤレス接続 → 圧縮されたAACで再生(今までどおり)
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Apple TV 4KをAVアンプにHDMIで接続(有線) → 48kHz/24bitのロスレスで再生可能。さらにDolby Atmos 3Dオーディオも再生できます。「Denon Home Sound Bar 550」もDolby AtmosのHDMI入力に対応しているので同様に再生可能。
※Apple TV 4K は、現時点ではハイレゾロスレス (48 kHz を上回るサンプルレート) には対応していません。 - Mac/PC、またはiPhoneやiPadなどに有線ヘッドホンを接続、またはUSB-DACに接続(有線) → 192kHz/24bitのハイレゾロスレスでそのまま再生可能。有線ヘッドホンでもハイレゾ再生が可能ですが、ソース機器の内蔵DACやアンプを使用することになるので、クオリティ的には外付けのUSB-DACを使いたいところです。


デバイス・アプリ側の「オーディオの品質」と「ストリーミング」、「ダウンロード」時の設定も必要
いくつか設定がありますが、ざっくり言うと無線接続の場合は、従来通りのAAC再生となり、有線で接続した場合はロスレスやさらにその上のハイレゾロスレスの音質が楽しめます。Appleの公式サイトにロスレスでの楽しみ方についての説明がありますので、こちらもチェックしてみてください。
▼Apple Musicのロスレスオーディオについて(外部サイトへリンクします)
Dolby Atmosの空間オーディオをめいっぱい楽しむならリアルサラウンド環境で!
Apple Musicとしては、まずは気軽にAirPods Proなどのイヤホンで聴くことを想定していると思いますが、Dolby Atmosによる空間オーディオをフルで、めいっぱい楽しんでみたい人は、AVアンプに接続して、リアルなサラウンド環境で聴くことをおすすめします。イヤホンやヘッドホンではバーチャルサラウンドしか聴けません。それも十分画期的なことではあるのですが、さらにその上を行く、実際の音に囲まれるというのは本当に圧倒的です。現時点でこれほど贅沢な音楽の楽しみ方があるのか、と驚くとともに、この音楽ストリーミング時代が新しいフェーズに入ってきたなということも実感しました。
以前デノンブログでご紹介した、レコーディングエンジニアでご自身でもDolby Atmosスタジオをお持ちの古賀健一さんのインタビューに、海外におけるDolby Atmosスタジオの拡大や、音楽事情なども触れていただいてます。合わせてチェックしてみてください。
(編集部S)
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