「国際文学館(村上春樹ライブラリー)」デノンのレコードプレーヤーを巡る冒険
2021年10月、村上春樹さんの著作、執筆資料、レコードコレクションなどが集められた「村上春樹ライブラリー」(正式名称:早稲田大学国際文学館)が早稲田大学キャンパス内に開館しました。そこにデノンのレコードプレーヤーも展示されていると聞きつけ、デノンブログ編集部が、早稲田の杜に冒険に行ってきました!
※「村上春樹ライブラリー」入館には事前予約が必要です
キャンパス内に現れた異空間、「村上春樹ライブラリー」
とある冬の日、デノン編集部は大隈講堂の前に集合。そこから連れ立って、早稲田大学キャンパス内にあるという「村上春樹ライブラリー」を訪れました。早稲田大学早稲田キャンパスの東門を入ってすぐ、アジアで唯一、演劇を専門的に扱う博物館である早稲田大学演劇博物館の隣に、その異空間はありました。
村上春樹ライブラリー(右)。左は早稲田大学演劇博物館
真っ白な建物に絡みつくような流線型の庇は天然の木を加工したもの。もともとは4号館と呼ばれていた研究室棟を建築家の隈研吾さんが斬新なフルリノベーションを施しました。日常の中に突如現れる「異空間感」は、まさに村上春樹の世界観そのものです。
この不思議なトンネルのような庇をくぐり、さっそく入館。村上春樹さんの世界の中で、デノンのレコードプレーヤーを巡る冒険がはじまりました。
※「村上春樹ライブラリー」入館には事前予約が必要です。詳細は公式サイト(外部サイト)をご確認ください。
村上春樹さんに関わる書籍、レコードなどが楽しめるギャラリーラウンジとオーディオルーム
まずは1階から冒険します。こちらはギャラリーラウンジ。刊行された村上春樹さんの作品、そして世界各国語に翻訳された作品が所蔵されています。また村上春樹さんから寄託・寄贈された関連書、執筆のための資料、書簡、そして膨大なインタビュー記事や書評なども所蔵されており、展示されているものは、このギャラリーなどの閲覧スペースで自由に読むことができます。
その場で閲覧もできるギャラリースペース
50カ国以上の言語に翻訳された村上春樹作品も所蔵
村上春樹氏本人が描いた羊男のイラストが壁面に
そしてこちらはオーディオルーム。村上春樹さんは音楽に非常に造詣が深く「1Q84」に出てくるヤナーチェクの「シンフォニエッタ」など、作品中にはさまざまなジャンルの曲が物語の重要なキーとして登場しますが(「ノルウェーの森」はビートルズの楽曲名そのものですしね)、それもそのはず、村上さんは作家になる前、そして作家デビューした後もしばらくは「ピーター・キャット」というジャズ喫茶を経営していたそうです。村上春樹ライブラリーにはそのジャズ喫茶時代のコレクションを含め、村上春樹さんが集めたレコードやCDの一部が保管・公開されています。オーディオルームではそれらのレコードを聴くことができます。
ゆったりとしたスペースで音楽が楽しめるオーディオルーム
ジャケットに村上春樹さんが経営していたジャズ喫茶「ピーター・キャット」の所蔵のスタンプが押されている
裏面に手書きで「ピーター・キャット」と描かれているジャズピアニスト穐吉敏子のアルバム
このオーディオルームにデノンの製品があるかと思い、国際文学館のスタッフのお許しを得てオーディオシステムを見せていただきましたが、残念ながらこの部屋にはデノンのオーディオ機器はありませんでした。ちなみにマランツのスーパーオーディオCD/CDプレーヤー SA-12 OSEが設置されていました。
マランツのスーパーオーディオCD/CDプレーヤー SA-12 OSE(右端)
そして冒険は2階へ。ここには「ラボ」と呼ばれるセミナースペース、そして音声収録設備を備えた情報発信の拠点となる「スタジオ」、さらに「展示室」がありました。
「ラボ」
「スタジオ」
「展示室」 取材時は建築家・隈研吾氏による「村上春樹ライブラリー」のリノベーションの様子が「建築のなかの文学、文学のなかの建築」と題して展示(取材当時。現在は終了しています)
巨大な本棚階段を降り、ついに地下世界へ
そして次は村上春樹ライブラリーの象徴ともいえる吹き抜けの「階段本棚」を降りて地下1階へと向かいます。
階段本棚では階段に腰かけて本を読むことができるように設計されている
階段を降りてすぐの場所はラウンジスペース。ここに設置されているヤマハのグランドピアノは、村上春樹さんが経営していたジャズ喫茶「ピーター・キャット」に置かれていたもの。ピーター・キャットではこのピアノを使ったライブも行われていたそうです。村上春樹さんの朗読イベントもこのスペースで開催されたのだそうです。
ジャズ喫茶「ピーター・キャット」で使われていたグランドピアノ
そしてピアノの奥にあるのが、カフェ「オレンジキャット」。オレンジキャットは早稲田の学生を主体として経営されているカフェで、村上春樹さんの好みを反映したオリジナルのコーヒーが楽しめます。またスイーツやホットサンド、ドライカレーなどの軽食メニューもあり、どれも美味しそうでした! 「このカフェは予約不要でどなたでも入れますので、村上春樹ファンのみならず、ぜひ気軽にコーヒーやスイーツを楽しみに来てください」とスタッフの女性がにこやかに話してくださいました。
カフェ「オレンジキャット」
美味だったオリジナルブレンドのハンドドリップコーヒー
※カフェは予約不要。休館日は国際文学館に合わせています。
「村上さんの書斎」でついにデノンのレコードプレーヤーの銘機、DP-3000を発見!
そして最後にたどり着いたのが、カフェの奥まったところにある村上春樹さんの仕事場を再現した「村上さんの書斎」。ガラス越しに見ると、どうやらデノンのレコードプレーヤーらしきものが確認できます。現在は立ち入り不可のスペースですが、これはぜひ見せていただかなくては! ということで国際文学館(村上春樹ライブラリー)ゼネラル・コーディネーター 奥村 佳郎さんにお願いして特別に入室許可をいただきました。
ガラス越しに見えるレコードプレーヤーがデノンのものに見える
●奥村さん、今日は村上春樹ライブラリーでデノンのレコードプレーヤーを探す冒険をしていましたが、ついに発見しました。
奥村:よく見つけてくださいましたね。この部屋は全体のレイアウトや広さだけでなく、レコードプレーヤーから、アンプ、そして椅子までが村上さんの書斎と同じ製品で、机の素材やソファ、絨毯もかなり似たものを選びました。実際に村上さんの書斎にかなり近いものに仕上がっていますし、今も本やレコードなどが村上さんから次々に送られて来ています。
早稲田大学 国際文学館(村上春樹ライブラリー)ゼネラル・コーディネーター 奥村 佳郎さん
村上春樹さんの仕事場を再現した「村上さんの書斎」
●ここにあるのはデノンのDP-3000というレコードプレーヤーですが、これもご本人の書斎と同じものなのですか。
奥村:そう聞いています。しかもこのDP-3000は村上さんご本人が、自ら探して持って来られました。デノンのDP-3000というレコードプレーヤーにはかなりのこだわりをお持ちのようです。
デノンのレコードプレーヤー「DP-3000」
デノンDP-3000についてはデノンブログのこちらのエントリーで詳しくご説明しています
ちなみにこちらが「村上さんの書斎」のオーディオシステム。上段のプリメインアンプはマランツのPM-17SA、下段はマランツのCD/MDコンビネーションデッキCM6001
●デノンのDP-3000を村上春樹さんにここまで気に入っていただけて光栄です! もし機会があればデノンオフィシャルブログが取材に来たと、村上春樹さんにお伝えください。
執筆スペースから手が届くところにオーディオシステムが置かれている
村上春樹ライブラリー ゼネラル・コーディネーターの奥村さんにお話を聞きました。
というわけで村上春樹ライブラリーでデノンのレコードプレーヤーを巡る冒険は無事終了! 奥村さん、取材にご協力いただきありがとうございました。最後に少しだけお話を聞かせてください。
奥村:本日はデノンオフィシャルブログに掲載していただけるということで、ありがとうございます。ここ村上春樹ライブラリーは、現在予約制にしておりますが、予約さえしていただければ、どなたでもご覧になれる施設です。
早稲田大学 国際文学館(村上春樹ライブラリー)ゼネラル・コーディネーター 奥村 佳郎さん
●本当にステキな施設で、特に村上春樹ファンにとってはたまらないものがたくさんあります。
日本語版でも初版など貴重な物が揃っていますし、村上さんの作品は50カ国以上で翻訳されています。今ここには20カ国ぐらいあるんですけども、それらを日本で入手するのはなかなか難しいものがあります。そういったものもここでは自由に手にとってご覧いただけます。
●村上春樹ライブラリーは、まるで存在自体が村上春樹さんの小説のようです。
奥村:私もそう思います。この建物は隈研吾さんの設計ですが村上文学の世界観を表現したものになっています。また建物の中に入ったら別の空間に入ったように感じた、という方もいらっしゃって、その辺が面白いなと思います。
村上春樹さんはここを文化発信の場にしたい、とも仰っていて、2階のラボやスタジオはそのための施設となっています。また地下のラウンジでも村上春樹さんの朗読会なども開催していて、2021年10月にはギターの村治佳織さんを迎えての演奏+朗読のイベントも開催されています。今後また朗読会なども開催されることと思います。その折はぜひお越しください。
『Authors Alive!〜作家に会おう〜』10月16日 村上春樹さん×村治佳織さんレポート
●本日は忙しい中ご案内いただきありがとうございました。
(編集部I)