飯田有抄のオトナ女子のオーディオ入門「LPレコードとストリーミングを聴いてみた」
デノンブログでお馴染みのクラシック音楽ファシリテーターの飯田有抄さんは、大のオーディオ好き。しかしオーディオについていっしょに盛り上がれる女子が少ない……。そこでデノンオフィシャルブログと飯田さんとで女性向けオーディオ体験会を開催しました。題して「オトナ女子のオーディオ入門」。第4回はLPレコードとストリーミング再生に挑戦してみました。
第1回飯田有抄のオトナ女子のオーディオ入門「オーディオ、はじまりの、はじまり」はこちらから
第2回飯田有抄のオトナ女子のオーディオ入門「オーディオの基礎中の基礎を習ってみた」はこちらから
第3回飯田有抄のオトナ女子のオーディオ入門「Hi-FiオーディオでCDを聴いてみた」はこちらから
LPレコードの再生に挑戦してみた
昨今はレコード文化が再び盛り上がっております。若い人たちの中には、もはやCDを見たことがない(!)方もいるようですが、ここ数年の間にアナログ・レコードのお店が新しくオープンしていて、若者たちが集っております。なかには、レコードは持っていなくても「インテリアとしてかっこいい」という理由でプレーヤーを買ったり、逆にプレーヤーはなくても30cm×30cmの「ジャケットがほしい」という理由でレコードだけを所有するケースもあるようです。
クラシック音楽ファシリテーター飯田有抄さん
でもせっかくですから、レコードもしっかり再生しましょう! この回では、参加者の皆さんに、まずはざっくりと、アナログ音源(レコードやカセットテープの音)とデジタル音源(CDやMP3やハイレゾ音源)との仕組みの違いをお伝えし、それぞれの特性なども知ってもらいました。パチパチするノイズが乗りやすかったり、扱いにやや手間のかかるレコードですが、きちんと再生すれば、とても綺麗でコクのあるサウンドが楽しめます。
レコード再生に挑戦するのは、自宅に一体型のプレーヤーをお持ちの川野辺さんと、ボタン一つでレコードが鳴り出すプレーヤーをお持ちの村山さんです。
まずはセッティングから。レコードプレーヤー DP-450USBは、ベルトドライブ方式のプレーヤーです。まずは、ターンテーブルをベルトで本体にセット。カートリッジ(針のついている部品)をアームにつけて、バランスを取り、針圧を調整するという、セッティングには一連の作業が必要です。お二人のお手持ちのプレーヤーはセッティングなく使えるものだったようで、「どうやるんだろ? あ、こうか!」などと苦戦しながらも楽しそうです。
村山公美さん(左)と川野辺雪菜さん(右)
スピーカーはPolk AudioのES20です。いざ、スイッチオン!……と思ったらターンテーブルが回らない! 「あれ?なんで?」と原因究明するお二人。どうやら、ベルトの取り付け位置の問題で、ターンテーブルから外れてしまっていたみたい。これぞアナログ(笑)。こうやって確認しながら音を出すのも、オーディオ遊びの醍醐味の一つです。
試聴したのは川野辺さんが持ってきたレコード。まずは、カラヤン指揮、ベルリン・フィルによるシベリウス作曲の交響詩《フィンランディア》です。「レコードの帯に『君のカートリッジはこのサウンドをどこまで再現できるか』という煽り文句が書いてあって思わず買ってしまったのですが、多分私の持っているプレーヤーでは再現できていないんだと思います」と川野辺さん。さっそく針を落としてみると、冒頭の金管楽器、ティンパニの地響きのような音が元気に鳴り出しました。
もう一枚、続いては川野辺さんのお父さんが所有していたというクィーンのアルバム「オペラ座の夜」から『The Prophet’s Song』そして『Love Of My Life』です。
「わぁ、すごい!ブラボーです。今まで再生していた音では、フレディに申し訳なくなってきました」と川野辺さん。
「おお!すごい!」と村山さんも川野辺さんも驚愕。川野辺さんは、自宅の一体型プレーヤーで聴いていたのとは、かなり印象が違ったようです。「ぜんっぜん違う!ノイズが全然ない!」
レコード再生の場合は、プレーヤーやスピーカーを変えると、かなり大きな変化が得られると思います。ポイントは、安定した回転を得られるプレーヤーを選ぶこと。一体型プレーヤーをお持ちの場合は、スピーカーを外付けにすることでもだいぶ音が改善する可能性があります。
ストリーミング再生を楽しもう
昨今ではApple Music やAmazon Music、YouTubeなどのストリーミング音源を楽しむ人が増えています。サブスクリプション契約していれば、旧譜も新譜も好きなだけで楽しめるし、ソフトの置き場所もとりません。また「ロスレス」や「ハイレゾ」といった音源は情報がきめ細かく、低音から高音まで高いクオリティを持った再生が簡単にできるので、気軽に良い音で楽しめます。
日頃はiPhoneでApple Musicの音源をヘッドフォンで聴いているという倉田さんに、ネットワークプレーヤーとしてRCD-N10を使ってもらいました。本機はAirPlay2にも対応しているのため、新しいアプリなどを特別にダウンロードしなくても、Wi-Fi経由であっという間に(というか、いろいろいじっているうちに?!)倉田さんのiPhoneと接続され、Apple Musicのアプリから再生できました。配線はRCD-N10とスピーカーを繋ぐだけです。
スピーカーはPolk AudioのMXT15です。RCD-N10と合わせても8万円ほど。お値段的にもスペース的にもコンパクトでアプローチしやすいセットです。
倉田莉奈さん
倉田さんが選んだ音源はアイスランド出身のピアニスト、オラフソンのアルバム「モーツァルト&コンテンポラリー》からモーツァルト作曲の『小さなジーグト長調 K.574』です。MXT15はコンパクトなスピーカーですが、意外なほど広がりのある響きがしました。
せっかくなので、Polk Audio の少し大きいES20でも聴き比べてみました。倉田さんもみなさんも、「ああ……」と声がもれ出てしまいました。大きい方がゆったりとした響きになり、変化が大きく感じられたのです。
「MXT15はスピーカーから出ている感じがありますが、ES20の方が空間全体から響く安定感があるように感じますね」(倉田さん)
オーディオ・デビュー体験を終えて
CD、レコード、ストリーミングはそれぞれに設定や音質の違いがあり、スピーカーによってもかなり印象が変わることを体験した参加者の皆さん。どんなことを感じたのか、感想を語っていただきました。
○ピアニスト 倉田莉奈さん
「まずは仕組みを知れて大きな進歩。何をどう選べば良いのか、それぞれの機器の組み合わせで選べるのが面白そう。まるでコーヒー豆みたい。豆の種類、産地、焼き方、挽き方、淹れ方、全部の工程で味が変わってしまうのと同じで、家で音楽を再生するという中にも細かな工程があるのですね。
今後CDをリリースしたいと思っているのですが、デバイスでこれだけ音が変わることを知ってしまったので、どんなオーディオで聴いてもいい音で再生されるようなCDを作るのは大変ですね。演奏もですが、場所やエンジニアさんとのお仕事も丁寧に考えることが大切ですね。自分がチェックできる環境を作らないと。」
○音楽ホール 職員 菅原英子さん
「便利に使えるように作られたものは、それがベストだと思っていましたし、正直、どれで聴いてもそんなに変わらないのではと思っていました。でも、全然違いましたね。いろんな組み合わせでカスタマイズできる楽しみがあることを知って、真面目に欲しくなりました。スピーカーがまず欲しくなりましたね。木目の北欧生まれ、みたいなオーディオ機器を自分の好みで選べるっていいですね。カスタマイズすれば愛着も湧くし、音に対して違う耳で聴けるなと思いました」
○コンサルタント 川野辺雪菜さん
「今一番、心に湧き出ている感情は、フレディへの罪悪感(笑)。今の環境の音で聴いていたのではダメだ…と思ってしまいました。マンション住まいの場合、オーディオ機器とどうバランスを取ればいいのかという課題も頭をよぎっています。近隣に迷惑かけることなく、自分の理想を求めたいので、いろいろと試聴をしながら機材選びをしていきたいです」
○国際会議場職員 村山公美さん
「今日はいろいろなスピーカーの音を聴き比べられたので、夢が広がりました。今実家にあるのはマランツのプレーヤーとBowers & Wilkinsのスピーカーで、とてもクラシック音楽との相性が良いものなのですが、家から発掘されたビートルズやローリングストーンズのレコードを鳴らすには、Polk Audioのようなスピーカーの音もいいなと思いました。置き場所をどうしたらいいかなぁ、などと考え始めています」
○輸入ピアノ販売店 店長 熊田かおりさん
「自宅でCD再生ができない環境にあることが、ますますもったいなく感じてきました。スピーカーからきちんと鳴らすことの大切さを知りましたね。スピーカーの違いでずいぶん音質が変わるのを実感して、自分の好みはアレかなぁ…とBowers & Wilkinsの607 S2 AEをじーっと見つめてしまいました(笑)。プレーヤー、アンプも考えなければいけないので、いろいろと妄想に耽っています。プレーヤーは年々いいものが出るでしょうけれど、スピーカーはヴィンテージでもいいものがありますよね。お手頃だからと慌てて飛びつくことはせず、長く使えそうな、自分好みのものをじっくりと選びたいです。ステップアップも楽しそうですね。沼にハマりそうで怖いです(笑)」
皆さんそれぞれのライフスタイル、自分の好みに合ったオーディオとの幸せな出会いをしていただきたいです。オーディオ女子仲間を増やしていきましょう♪
これで、全4回にわたる「オトナ女子のオーディオ入門」の連載は一旦終わりです。
次回の企画を早速練っている最中なので、ぜひお楽しみにお待ちください。
(おわり)
飯田有抄 プロフィール
東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Macquarie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。音楽専門雑誌、書籍、CD、コンサートプログラム、ウェブマガジンなどの執筆・翻訳のほか、音楽イベントでの司会、演奏、プレトーク、セミナー講師の仕事に従事。NHKのTV番組「ららら♪クラシック」やNHK-FM「あなたの知らない作曲家たち」に出演。書籍に「ブルクミュラー25の不思議〜なぜこんなにも愛されるのか」(共著、音楽之友社)、「ようこそ!トイピアノの世界へ〜世界のトイピアノ入門ガイドブック」(カワイ出版)等がある。公益財団法人福田靖子賞基金理事。