【無人島CD】新入社員Nさんは日本のロックバンドのちょっと変わったライブ盤をセレクト
無人島に1枚だけCDを持って行けるとしたらどれを選ぶ? 唐突に突きつけられる究極の選択。名付けて「無人島CD」。今回は新入社員のNさんにお願いしました。Nさんのセレクトは、日本のロックバンド「くるり」のちょっと変わったライブ盤でした。
初めまして、2023年4月に入社しましたNです。
私は、音楽を演奏する側になったことはないのですが、音楽自体は幼い時からずっと好きでした。私の音楽のルーツは、車の中で流れていた両親セレクトの音楽にあります。
幼少期を北海道と長野県で過ごしたので、車で長時間移動することが比較的多かったと思います。
その車内で、ユーミンや米米CLUB、サカナクションなどの邦楽から、リベラやエンヤなどのヒーリング系まで幅広いジャンルの音楽をずっと聴いていたことが、私の音楽の嗜好に大きな影響を与えました。現在もそれらのジャンルを中心に、音楽の世界を冒険しています。
さて、自己紹介はここまでにとし、さっそく今回のお題です。
まず、私が想像する無人島はひたすらサバイバル。強い直射日光とそれを遮る鬱蒼とした木々、突然降る猛烈なスコール、よくわからない生き物がモリモリ出てくる環境に一人、ただ救援を待ち続ける無人島ライフ。
おそらくかなり大変であるに違いない環境を生き抜くためには、サバイブするためのモチベーションが必要です。それは、今までの人生で一番聴き込んだアーティストから選ぶのがいいのか、最近ハマっているインディーズバンドがいいのか、けっこう悩みました。結局、私はくるりの「Philharmonic or die」がモチベーションを保つ上で一番だと結論づけました。
アーティスト名:くるりアルバム
タイトル:Philharmonic or die
この作品は2枚1組のライブアルバムで、異なる2つのライブ音源が収録されています。
1枚目には、パシフィコ横浜でウィーン・アンバサーデ・オーケストラと共演し1万人を動員したライブの様子が、そして2枚目には京都にある磔磔という350人ほどのキャパのライブハウスで行われたライブ音源が収録されています。
くるりのたくさんある魅力のうちの一つとして、音楽ジャンルの幅が広いことがあります。
「くるりって何系のバンド?」と質問されたら、すごく返答に困ってしまうぐらいです。そして、このアルバムでは、くるりの原点である熱の籠ったバンドっぽいアレンジのギターロックと、その一方でオーケストラと見事に融合する一風変わったライブアレンジの両方が味わうことができます。一つで二度おいしいアルバムとなっています。
個人的にこのアルバムで注目していただきたいのが素敵でナイスなアウトロたち。
アウトロが大好きな私は、ついついそこに注目して音楽を聴いてしまうのですが、このアルバムの中には、素晴らしいアウトロがたっぷり詰まっています。
たとえば1枚目11曲目の「ワールズエンド・スーパーノヴァ」の原曲は、打ち込み音とシンセサイザーのエレクトロサウンドが特徴的ですが、このアルバムに収録されているのは、ドラムとエレキギターのバンドサウンド、そしてストリングスを組み合わせたアレンジです。特に、アウトロの弦楽器の音の波がどわーっと流れ込んでくるところのなんともいえない高揚感は原曲とはまた違っていてとても良いです。
そして1枚目2曲目の「ブレーメン」。この曲には「ワールズエンド・スーパーノヴァ」のような大胆なアレンジはありません。原曲ももともとオーケストラと演奏しているので、このアルバム収録曲では、その迫力がぐんと増しています。
この曲のアウトロには大胆な転調があります。それまでの語っているようなやわらかい雰囲気が一転、ボーカルの合図で疾走感あふれる曲調へ変身します。
ちなみにこの楽曲と映像はくるりの公式Youtubeチャンネルで公開されています。映像が追加されると、また違う印象を受けると思いますので、ぜひご観ください。
そして最後、触れないわけにはいかない超有名曲、「ばらの花」(2枚目7曲目)です。
2001年に発表されたこの楽曲ですが、最近では令和5年度高等学校用の音楽の教科書に掲載されたことでも話題になりました。
この曲もアウトロに素晴らしいアレンジが施されています。原曲はイントロの延長線上に、静かに盛り上がっていくような印象なのですが、このアルバムに収録されたライブバージョンでは、くるりの名曲「Baby I Love you」のメロディをなぞったスキャットがアウトロに投入されます。原曲の面影は残しつつ、より盛り上がる、雄大で素晴らしいアウトロに胸を打たれます。
さて、ここまで私がこのアルバムの好きなところやくるりについて少し偉そうに語ってきましたが、一つ白状しなければいけないことがあります。実は、私がくるりというアーティストを好きになったのはほんのこの2、3年のこと。いろいろと制限がかかっている中でしたので、残念ながらまだライブに行ったことはありません。
無人島生活はつらく苦しいと思いますが、長い時間聴き込むことで、くるりとこのアルバムのさらなる魅力を探しつつ、ぜひともサバイブしてライブに行きたいという点から、生存意欲を高めてくれるであろうこのアルバムを今回のお題に選びました。
これがあれば、どんな無人島でも行けそうな気がします。