
医療技術を応用したパーソナライズ機能でオーダーメイドサウンドを実現する完全ワイヤレス・イヤフォン「PerL」

デノンから医療技術を応用したパーソナライズが可能なTWS「PerL」シリーズが登場しました。今回はPerLシリーズの製品概要やパーソナライズの仕組みなどのプレゼンテーションが行われた製品発表会の様子をレポートします。
ワイヤレスイヤフォン「PerLシリーズ」の製品発表会は、本社ビルにて行われました。製品のプレゼンテーションは国内営業本部 営業企画室 田中が行いました。
※新製品発表会はディーアンドエムホールディングス本社にて人数を限定し複数回実施されました。


Personalized Listeningから着想を得たネーミング「PerL」
田中:本日はデノンの新しい完全ワイヤレス・イヤフォン「PerLシリーズ」のご紹介をさせていただきます。
それに先立って簡単にイヤフォンの歴史を紹介させてください。
最初は有線イヤフォンで、耳にひっかけるタイプから始まりました。
そして耳栓タイプのカナル型のイヤフォンが登場し、その後ノイズキャンセリング機能搭載のものが出てきました、それと前後してBluetoothを使ったワイヤレス接続ができるイヤフォンも登場し、今の完全ワイヤレス式、いわゆるTWSとなりました。今は完全ワイヤレスでノイキャン搭載などはかなり一般的になっています。
国内営業本部 営業企画室 田中
田中:そして、このイヤフォンの歴史の中で次に来るのは何か。デノンが出した答えが「パーソナライズ機能」です。パーソナライズは今、あらゆるカテゴリーで注目されている言葉ですが、我々はイヤフォンの世界でも、パーソナライズ機能が、今後は当たり前になると考えています。
それでは「PerLシリーズ」のPerL Pro (AH-C15PL)、PerL (AH-C10PL)の2モデルを紹介させていただきます。PerLの頭文字のPと一番最後のLは、大文字です。”Personalized Listening”ということで、パーソナライズの“P”とリスニングの“L”を合わせて、「PerLシリーズ」というネーミングになりました。今回の「PerLシリーズ」の最大の機能、パーソナライズ機能をフィーチャーした呼称となっています。
「PerLシリーズ」PerL(左)、PerL Pro(右)製品の縁に光沢があるのがPerL Proの特徴
田中: PerLシリーズの製品コンセプトは、「デノンサウンドを全てのユーザーへ」。つまり全てのユーザーに対し「医療技術を応用したパーソナライズ機能」を使うことで、デノンが考える理想の音をお届けしたい、ということです。
「PerLシリーズ」 新製品発表会資料より
PerLシリーズに搭載された「医療技術を応用したパーソナライズ機能」とは?
田中:まずPerLシリーズに搭載されたデノンの新しいパーソナライズ機能についてご紹介します。
この機能は、ユーザーの聴こえ方を調べ、個々の聴こえ方に合わせた補正を行いデノンが考える最適な再生音を提供するものです。人の聴こえ方は十人十色。視力が人それぞれ異なるように、聴こえ方も十人十色で異なります。PerLシリーズが搭載したパーソナライズ機能は、その個々人の聴こえ方を調べて補正してその人にとって最適な音を届けるための機能です。そして、それを実現するために開発されたのが「Masimo AAT(Adaptive Acoustic Technology)」という技術です。
ただし、最初にお断りしておきますが、このPerLシリーズは医療技術を応用したものではありますが、医療機器ではないことをご了承ください。
田中:ではパーソナライズ機能のMasimo AATについてご説明します。個々人の聴こえ方を調べる方法にはいくつかありますが、Masimo AATでは新生児の難聴検査で使用される医療技術を応用しています。新生児に聴力検査をしても、新生児は「聞こえません!」とかって返事できませんよね。しかし新生児でも耳の中の反応を調べることで、その音が聴こえているかどうかを調べることができます。
その反応は「耳音響放射」と呼ばれる現象です。内耳に音が入ってくると、蝸牛(かぎゅう)の内部にある有毛細胞が入ってきた音とは異なる周波数の音を発します。この微弱な音を高感度マイクで集音し、その大きさに基づいてユーザーの聴覚特性を自動的に解析しています。
例えば、中音域が信号として流れてきたとき、きちんとした音が返ってくれば、その帯域は正常に聴こえていると判断します。しかし、もしも返ってきた音が小さかった場合は、その帯域は聴こえにくいと判断します。このような反応を使って個々人の聴こえ方を調べ、その結果を元に再生音に対して補正を行います。ですからもし高音が聴こえにくい方の場合は、高音を持ち上げる調整を行います。その際に補正のターゲットとしているのは単にフラットなサウンドではなく、デノンが理想とするサウンドです。そうすることで、全ての方に本来のデノンサウンドをお届けできるようになる、というわけです。これがPerLシリーズのMasimo AATというパーソナライズ機能の概要です。
「PerLシリーズ」 新製品発表会資料より
パーソナライズが完全自動で行えるDenon PerLシリーズ
田中:パーソナライズ機能の仕組みに加えて、1つだけデノンのパーソナライズ機能について補足をさせてください。他社のパーソナライズ機能との違いです。デノンのパーソナライズ機能であるMasimo AATは、自動的にユーザーの聴こえ方を調べ、その結果に基づいてデノンが考える最適な音を提供します。その特筆すべき点は、すべての調整が自動で行われ、ユーザーの感覚や操作には頼らない、ということです。他のモデルではアプリ上での操作が必要な場合もありますが、PerLシリーズでは、イヤフォンを装着してテストを開始した後は、一切の操作は必要ありません(装着テストは除く)。
田中:また他社のパーソナライズは主に外耳までを対象としている製品が多いようです。つまり、耳の穴の形状だけを調べているということです。デノンのパーソナライズは外耳だけでなく中耳、内耳まで測定し、実際にどう音が聴こえているかどうかまで調べます。そして、その結果に基づいて専用のリスニング・プロファイルを作成し、デノンサウンドカーブに聴こえるようにイコライジングしています。
専用アプリでパーソナライズ、イコライジング、空間オーディオなどがコントロール可能
田中:パーソナライズのやり方も少しご説明します。Masimo AATの測定には専用の「Denon Headphones」(iOS/Android)というアプリが必要です。アプリをダウンロードしアカウントを作成すると、パーソナライズができるようになります。最初に行うのは、耳の穴に正しくフィットしているかのチェックです。イヤーチップのサイズや角度を調節しながらイヤフォンを耳にフィットさせていきます。フィッティングが完了したら、次に外耳と耳の穴の形状を測定します。これはコウモリが洞窟の形状を調べるようなイメージで、耳の穴から鼓膜までの形状を調べます。そして、さらに中耳と内耳の聴こえ方を調べます。するとその人の音の聴こえ方の測定結果が得られます。
「PerLシリーズ」 新製品発表会資料より
田中:測定の結果ですが、私の例をご紹介します。資料の右端の画面が私の測定結果です。右耳と左耳では聴こえ方が異なることが図で分かります。時計の12時の方向から低音で、そこから中音へと進み、最後に高音で終わります。これを見ると、私は高域が聴こえにくくなっていることが分かります。そこを補正するパーソナライズを行いますから、私の場合はやや高域を持ち上げる補正をすることになります。
「PerLシリーズ」 新製品発表会資料より (実際のアプリ画面は日本語です)
PerL Proに搭載されたQualcomm® Snapdragon Sound™ with aptX Lossless
田中:次にPerL Proに搭載された「Qualcomm® Snapdragon Sound™」と「aptX Lossless」についてご紹介します。PerL ProはBluetoothイヤフォンでありながら、ワイヤレスでロスレスオーディオに対応しました。それはQualcomm® aptX ™ Lossless テクノロジーを搭載したSnapdragon Soundによるものです。
Qualcomm社はアメリカの大手の移動体通信と半導体の企業で、Bluetoothのチップなどでも非常に大きなシェアを占めています。PerL Proは最新のQualcomm® Snapdragon Sound™の第2世代を搭載しています。この技術はすでにソニーやシャープなど一部のスマートフォンで採用されており、今後、さらに多くのスマートフォンで採用が予定されているとのことです。PerL ProはQualcomm® Snapdragon Sound™の認証を受けた製品であり、aptX Losslessコーデックに対応したスマートフォンとの組み合わせにおいてはCDの規格と同じ44.1kHz/16bitでのリスニングをロスレスで楽しめます。
PerL Pro
田中:今、先行してPerL ProのaptX Losslessのことをお話しましたが、PerL ProがQualcomm® Snapdragon Sound™を搭載したことで実現した4つの大きな特徴を順番にご説明します。
※以下の機能は、Snapdragon Sound 対応のスマホなどが必要です。
「PerLシリーズ」 新製品発表会資料より
1. ハイレゾ対応
Bluetoothはかつて音質が問題視されることもありましたが、最近ではさまざまなコーデックの登場により、音質が向上し、周波数帯域も広がってきました。その中でもQualcomm Snapdragon Sound に搭載されたaptX Adaptiveは特に音質の良いコーデックの一つで、96kHz/24bitまでのハイレゾ音源を再生することができます。ですからAmazon MusicやApple Musicなどのハイレゾ音源が再生可能です。192kHzの音源も再生できますが、その場合はサンプリング周波数が半分に変換されます。そしてハイレゾは不可逆圧縮されるため、ロッシーでありオリジナルの音と完全に同じではありません。
2. ロスレス対応
先ほども申し上げましたがPerL ProはロスレスコーデックのaptX Losslessをサポートしています。これは、CDと同等のクオリティの音声信号をワイヤレスで送信できる技術です。通常、CDのPCM音声を送信する場合、約1.4Mbpsの帯域が必要ですが、スマートフォンとイヤフォンの両方がQualcomm® Snapdragon Sound™に対応している場合、1.1Mbpsまでの伝送速度を実現できます。1.1Mbpsまで伝送速度を上げた上で、わずかに圧縮して送信します。この際の圧縮は、ロスレス圧縮なので復元可能です。ですからCD規格の44.1kHz/16bitの信号であれば、完全にオリジナルの音がBluetooth接続において再生できる、ということになります。
※aptX Lossless対応の再生デバイスが必要です。
3. 高音質通話
PerL Proは高音質通話もサポートしています。通常のBluetooth通話では16kHzのサンプリング周波数が使用されます。この場合に再生される周波数の上限は8kHzになります。人間の可聴帯域は20kHzと言われますから、8kHzから20kHzまでの音はすべて捨てられているわけです。しかしQualcomm Snapdragon Sound に搭載された通話用の機能aptX Voiceは、32kHzのサンプリング周波数に対応しているため、その半分の16kHzまでの音が再生でき、可聴帯域のほとんどをカバーできます。これは非常に高音質に通話できることを意味しています。ぜひご体験いただきたいと思います。
4. 低遅延
またPerL Proは低遅延も実現しています。遅延は最短で約48ミリ秒(48/1000秒)であり、事実上ほぼ認知できないぐらいの低遅延です。SBCなど一般的なBluetoothコーデックの遅延は200ミリ秒以上ですが、そのくらいの遅延ですと動画視聴時に口の動きと聴こえるセリフのタイミングがずれてしまったり、音楽の場合はドラムやギターを演奏する手足の動きと音が明らかにズレて見えてしまいます。しかし、PerL Proの低遅延機能を使用すると、ほとんど遅延を感じないで動画を楽しむことができますし、ゲームも違和感なくプレイできます。格闘ゲームやリズムゲームなど、タイミングが非常に重要なゲームでは遅延を感じる可能性はありますが、通常のほとんどのゲームではまったく問題なくプレイできます。
PerL Proはアダプティブ・ノイキャン、高度な通話機能、空間オーディオなどの機能も搭載
田中:最後に、その他の機能についてご説明します。
まず、ドライバーに関して。ベースモデルのPerLは樹脂製ドライバーを使用していますが、上位モデルのPerL Proでは、より高音質でフラッグシップにふさわしいドライバーとして、3層構造のチタニウム振動板を採用しています。さらにPerL Proのみですが「Dirac Virtuo」というあらゆるステレオコンテンツを空間オーディオ化する機能を搭載しました。これにより、より臨場感のあるサウンド体験が可能となります。
ノイズキャンセリングはPerL、PerL Proともに搭載していますが、PerL Proにはアダプティブ・アクティブ・ノイズキャンセリングという、環境に応じてノイズキャンセリングの強度を自動的に調整できる機能を搭載しました。さらにPerL Proについては、2台のデバイスに同時接続できるマルチポイント接続、ワイヤレス充電、音声出力を6dB上昇させるハイゲインモードという機能を搭載しています。
またどちらのモデルにもカスタマイズ可能なタッチコントロールが搭載されています。自分の好みに合わせて操作方法を設定することができ、使いやすさも向上します。
ここまででプレゼンテーションは以上です。このあとは試聴室で実際に「PerLシリーズ」の音と機能をお確かめください。
PerLシリーズの試聴でパーソナライズを体験
プレゼンテーション後は発表会参加者による試聴が行われました。PerLシリーズのパーソナライズ機能を体験していただくため、試聴室に移動。雑音のない静かな状態で専用アプリを使用して耳の特性を測定し、パーソナライズ機能を体験していただきました。
測定が終了すると専用アプリに特性が表示されます。左右の耳の特性がそれぞれ表示されます。測定してみると左右の差が大きい場合もありました。
ちなみに私(編集部I)の測定結果は以下こちらでした。私の耳は低音を強く感じるようでした。
パーソナライズは、丸いイメージの下にあるボタンでON/OFFできます
※アプリの画面は開発用のため、英語版ですが、現在は日本語版アプリを提供しています
ON/OFFするとデフォルトの設定とパーソナライズした音が比較検聴できます。私の場合はかなり違いがありデフォルトと比較すると非常にクリアな聴こえ方になりました。ここまで音が違うのかと驚きました。
参加者のみなさんも、それぞれ測定したあと、デフォルトとの比較を体験。みなさん、その差の大きさに驚かれていたようです。
デノンのPerL Proならではパーソナライズ機能をのぜひ一度ご体験ください。全国の家電量販店、ヘッドフォン専門店などでご試聴いただけます。
(編集部I)
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