飯田有抄のオトナ女子のオーディオ入門「アナログブームに乗って、レコード再生を楽しもう!」前編
デノンブログでお馴染みのクラシック音楽ファシリテーターの飯田有抄さんの「オトナ女子のオーディオ入門」シリーズ。今回は手軽にレコードが聴けるオーディオシステムを用意して音楽好きな5人のオトナ女子を招き、みんなで持ち寄ったアナログレコードを再生してみました。前後編でお送りします。
レコード生活、はじめませんか?
レコードを聴いてみたいけど、どんな準備が必要なの? どんなプレーヤーを買ったらいいの? 昨今のアナログブームに乗って、レコードを聴きたい人が増えているようですが、何からどうそろえたら良いものか、ちょっとわかりにくいなという人も少なくないことでしょう。
昨年スタートした「オトナ女子オーディオ入門」企画、今回は「サクッとスタイリッシュに、そしてもちろん良い音で!」をテーマに、レコード・ライフの始め方をご案内しました。
昨年の女子オーディオ〈超入門編〉は、こちらからお読みください♪
あらためて、レコードの魅力ってなに?
いまでは音楽鑑賞のスタイルといえば、Apple Music、Amazon Music、SpotifyなどのストリーミングサービスやYouTubeがすっかり主流となりました。でも、手に取ることのできない音楽メディアって、ちょっと寂しかったりします。好きなアーティストのファン・アイテムとして、30センチ四方の大きなジャケットに収まったレコードは、やはりモノとしての魅力に溢れています。それに、肉眼でも見える溝に音楽が刻まれているなんて、なんだかロマンチック。
もちろんレコードは音がいいんです。音には、その周波数の整数倍の音が複合的に含まれています。それを「倍音」と呼んでいますが、デジタル音源ではカットされてしまう倍音も、アナログ機器で再生されるレコードでは倍音が豊かに含まれることがわかりました。レコードの音質はよく「温かみがある」とか「滑らかな感じがする」と言われますが、このあたりにヒミツがあるのかもしれません?!
飯田有抄さん
そのあたりのレコードの音についての詳しいお話はこちらで読めます。
→レコード・カッティングエンジニア 北村勝敏さんのインタビューによる、驚きの証言!
難しいお話はさておき、アーティストのグッズはとことん欲しいという方や、最近ちょっとデジタル音源に飽きてきたなぁ、……という方にも、レコード鑑賞はオススメです。盤面にゆっくり針を落として聴き入るひと時は、格別の充実タイムです。
レコード再生が気になる「オトナ女子」メンバー
そんなわけで、今回は、レコード生活を始めたいオトナ女子たちに集まってもらいました。みなさん音楽とディープに関わりのある方々ですが、ご自分の音楽再生の現状を改善したいとお考えです。
平井千絵さん
「フォルテピアノというピアノのご先祖にあたる楽器を演奏しています。子どもの頃はオーディオマニアの父が組んだシステムで音楽を聴いて育ちました。今は自宅に再生できる機材は何も持っていません。自分でもCDをリリースしていますが、以前、苦労してマスタリングしたはずのCDが、家庭用のシステムで聴いたときに、響きがまったく違ってしまっていて、それで嫌になってしまった経験があります。今は大学で教えている学生たちがタブレットやスマホ、安いイヤフォンホンで聴いているので、つい私もそれにつられがちです(苦笑)」
平井千絵さん
かわいさん
「作曲ユニット『Happy Ever After』で活動しています。シンセやコーラスを担当しています。先日、7インチのシングル盤レコードをリリースしたので(レコードのカッティングの仕上がりを大瀧詠一さんのレコードを担当された方と確認しました!)、レコード再生について学びたくて参加しました。家ではむかし買ったCDコンポを使っています。レコードは昔買ったプレーヤーがあるけれど、パソコンを経由してヘッドフォンで聴いている状態です」
かわいさん
山形まどかさん
「岩手県の盛岡市から来ました。あ、東京までそんなに遠くないですよ。2時間半ですから(笑)。飯田(有抄)さんとは大学時代からの友達です。大学卒業後、地元の放送局でラジオのディレクターをやり、その後は事業部でコンサート制作などをしてきました。今は営業デスクをやっています。スマホで音楽を再生するとカシャカシャした音質なので、最近はやりのお風呂や台所でも使えるBluetoothスピーカーを買いました。電気屋さんに行ったらあまりに種類が豊富で驚きました。いつの間にか中2の娘のものになってしまっています」
山形まどかさん
大塚一美さん
「公益財団法人民間放送教育協会という、教育番組を系列を超えて制作放送する公益法人に勤めています。ドキュメンタリーの制作などをしている財団です。10年前、入社した頃にデノンのプレーヤー、マランツのアンプ、Bowers & Wilkinsのスピーカーを買いました。そろそろ新しいものに変えようかな、と思っている今日この頃です。レコードプレーヤーはデノンのダイレクトドライブが出たときにすごく欲しくて憧れたましたね。安いモデルが出た頃に買いましたが、それもだいぶ年季が入ってきました」
大塚一美さん
山平昌子さん
「会社員をしながら、アーティストさんたちを集めて「ひとうたの茶席」というサイトを主宰しています。自宅には音が部屋中に広がる12面体のスピーカーがありまして、それをうまく鳴らしたいなぁと思っています。プレーヤーやアンプは、スピーカーのメーカーさんにオススメいただいたものを使っていますが、CDプレーヤーが古くなってきたので、いろいろ改善していこうと考えているところです」
山平昌子さん
レコード再生、基本の3点セット
レコードプレーヤー:デノン DP-450USB
2018年に発売されたモデルで、市場価格は57,000円程度(2024年10月現在)。レコード針を取り付けているトーンアームは、まっすぐなストレートアームではなく、カーブしているS字型のユニバーサルアーム。ゆくゆくレコード針(カートリッジ)を交換したいと思ったときに、手軽に取り替えることができるタイプです。たとえば、モノラルレコードを聴きたい時は、モノラルカートリッジに替えたりするのが簡単です。78回転にも対応しているので、懐かしのSP盤も再生できます。レコードの音声信号を増幅させるフォノイコライザーも内蔵されています。
ネットワークCDレシーバー RCD-N12
こちらは前回の女子オーディオ「飯田有抄のオトナ女子のオーディオ入門 オールインワン・ネットワークCDレシーバーRCD-N12を遊び尽くす」でもしっかりご紹介したネットワークCDレシーバーです。1台でCDもストリーミングも聴けるスグレモノですが、PHONO入力も付いていますので、レコードプレーヤーを繋いで、スピーカーから音を鳴らすために音を増幅させるアンプとしても使えるのです!
ブックシェルフスピーカー:DALI OBERON1
ヨーロッパはデンマークのメーカー、ダリ。洗練されたおしゃれなデザインが女性にも人気のモデルです。お部屋のインテリアにもマッチするサイズ感。音質もとても良好です! 繊細に音を鳴らしてくれるので、クラシック音楽の鑑賞にもぴったりなスピーカーです。市場価格は約46,000円/ペア(2024年10月現在)くらいから購入可能。コスパ良しです。
プレーヤー、アンプ、スピーカー。いわゆるHi-Fiオーディオと呼ばれる世界、つまり音源がもっている音情報を損なうことなく忠実に再生させるために組むオーディオシステムとして、基本的な3点セットですね。イラストのように繋げるのが基本です。
イラスト:飯田有抄
出典:「さぁはじめよう!オーディオのある暮らし」(飯田有抄著、音楽之友社)
今回はシステム全体で20万円を切る価格帯。いわば初中級レベルの機材と言えるでしょう。
オトナのお小遣いをがんばって貯めたら、少し贅沢な自分へのご褒美に買い揃えられる価格帯でしょうか。ミニコンポなどでまとめて買うのも便利でお安いですが、別々に機材を揃えることで、より高音質を目指すことができますし、デザインも含めて自分なりの組み合わせを楽しむことができます。
今回のセットはシンプルな機材なので、繋ぐのも簡単です。みなさんに機材の背面などもチェックしてもらいました。ケーブルを赤は赤、白は白に繋いで…カンタン!
レコードプレーヤーは、「針圧」といって、針によって決められた重さ(通常は2g前後)がかかるように調整します。目盛りを使って調整したら、いざ試聴です!
後編では、みんなでいろんなレコードをわいわい試聴した様子をレポートいたします。
飯田有抄 プロフィール
東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Macquarie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。「クラシック音楽ファシリテーター」を肩書としながら、クラシック音楽の普及にまつわる幅広い活動をおこなっている。音楽専門誌、書籍、楽譜、CD、コンサートプログラム、ウェブマガジン等に執筆・翻訳、市民講座講師、音楽イベントの司会やトークの仕事に従事。ラジオやテレビなどのメディアに出演。書籍に「ブルクミュラー25の不思議〜なぜこんなにも愛されるのか」(共著、音楽之友社)、「ようこそ!トイピアノの世界へ〜世界のトイピアノ入門ガイドブック」(カワイ出版)、「さぁはじめよう!オーディオのある暮らし」(音楽之友社)等がある。公益財団法人福田靖子賞基金理事。