
ブルックナーとオーディオのお熱い関係〜SACDで聴く広がりある響き

デノンブログでお馴染みのクラシック音楽ファシリテーターの飯田有抄さんがブルックナー生誕200周年をきっかけに、SACDプレーヤー「DCD-1700NE」を購入されたとのこと。DCD-1700NEでの聴き心地はどうだったのでしょうか。 DCD-1700NEレビューレポートとともにブルックナー初心者にもおすすめな曲をたくさんご紹介いただきました。
2024年はブルックナー生誕200年でした
およそ400年ほどの長い歴史あるクラシック音楽界では、毎年だれかしらの生誕・没後メモリアルイヤーにあたり、特定の音楽家がフィーチャーされます。
2024年は、交響曲作曲家のアントン・ブルックナーの生誕200年として、けっこう盛り上がったような気がします。気がします、というのは、ブルックナーは「大好き」か「ニガテ」か、音楽ファンの間でも二分されがちな作曲家で、モーツァルトやショパンのように、基本みんな大好きだよね!というノリで言い放てないのです。
ニガテという人たちの掲げるポイントといえば、まずは「曲が長い」(交響曲第8番は1曲で80分超え)、その次に「音が大きい」とか「しつこい」とか。「食わず嫌い」という人もかなりいそうです。やはり「長い」というのはなかなかにネックで、それだけでも「無理っぽい」と手を出しづらいのかもしれません。
じつはオーディオとの相性バッチリなブルックナー
でも、ブルックナーの音楽は、オーディオ・ファンとの相性はバッチリではないかと思うのです! 実は私もあまりブルックナーの音楽を率先して聴くほうではなかったのですが、オーディオの趣味を持ち始めてから、かなりブルックナーが楽しくなってしまいました!
ブルックナーの交響曲が、オーディオ再生と相性のよいところといえば、なんといっても壮大で豊かなサウンドを味わえる点です。
ブルックナーは長らく、教会の巨大なパイプオルガン奏者として実績を積んできた人。オルガンといえば、人間の可聴域ギリギリなんじゃないかと思うほど、地響きのするような低音から、天使の声かと思うような繊細な高音まで、音域も音色も幅広く出せる楽器です。「楽器の王様」と称されるオルガンの特性を知り尽くしたブルックナーが書いた交響曲は、とにかく響きの厚みがハンパなく、とりわけ勢いよく放つ金管楽器のサウンドは分厚く、コンサートで聴くと、あまりの音圧・音量にぞくぞくと鳥肌が立つほど煌びやかです。一方で、いくつかの交響曲は、弦楽器の繊細なトレモロで始まります。とてもデリケートな弱音で、深く暗い霧の中から音楽が立ち上ってくるようであります。これを「ブルックナー開始」とか「原始霧」なんて言ったりします。
音色やダイナミクスのレンジがハンパなく広く、そして文句なくヒロイックなメロディーラインが登場したり、甘く包まれるようなロマンティックな場面もあったりと、これはもうオーディオファンならば、自室のシステムでどっぷりたっぷり鳴らしたくなるのではないでしょうか。鳴らす価値、多いにアリです!
まずはチョイ聞きからでもOK
まずはチョイ聞きでも良いので、どんな雰囲気かアクセスしてみてください。ブルックナーの交響曲の中でもとくに人気が高いのは第4番「ロマンティック」です。
第4番第1楽章冒頭は例の「原始霧」で開始です。
美しい第7番や長大な第8番、第9番も人気曲。
文句なく美しい第7番第1楽章
第8番第4楽章なんてもう、あまりに分かりやすくヒロイックで、ちょっと照笑いしてしまうかもしれないけど、すぐ引き込まれて真顔になることでしょう。
個人的に大好きなのは第9番第2楽章。ド迫力スケルツォ。ちょっとしつこいけどクセになる。
ややマイナーな第6番第1楽章もとてもかっこいいです。
第2楽章なんて、それはもう美しい映画音楽のような聞きやすさ。
どうですか? もっと高音質で聴きたくなりませんか? そんなブルックナー好きになりかけのオーディオファンに朗報! 生誕200年のメモリアルイヤーは、往年の名盤の新リマスターが相次ぎ、SACDでの最新版が次々とリリースされているのです。ホクホクです。
相次ぐ最新リマスターSACDの登場につき、SACDプレーヤー「DCD-1700NE」買いました!
こうした事態を受けまして、ついに私も自宅のCDプレーヤーをSACDプレーヤーも再生できるモデル、デノンのDCD-1700NEに買い替えました。祝! ミドルクラスのプレーヤーではありますが、同時に購入したマランツのワイヤレス・ストリーミング・アンプ MODEL M1に接続し、フロアスタンディング型スピーカー Bowers & Wilkins 603 S3のから鳴らしたところ、鮮やかでパンチ力があり、とにかくサウンドステージが上にも横にも広がって、豊かなブルックナー体験ができるようになりました!

正直体験してみるまでは、普通のCDとSACDとの違いってどうなの? と思っていたのですが、聴き比べてみるとその差は歴然。とにかく「広がり」が違うのです。また、オーケストラがザンッと鳴り響いたあとの残響が特に違い、それまで聞けていなかった奥行き、減衰・増大のプロセスを味わえるようになりました。いや〜導入して本当によかった!
先にSpotifyのプレイリストをリンクした音源はみな、2024年の最新リマスターSACDでリリースされているものです。音の粒ダチの解像度が別物で聞こえます。オーケストラの楽器一つ一つが描く線の一本一本がそれぞれ太く濃くなった印象で、カイベルト指揮ハンブルク・フィルによる第9番や、チェリビダッケの濃厚な演奏はいずれも、鮮烈なブルックナー体験をさせてくれます。
メモリアルなブルックナー祭りを、ぜひSACDで堪能してみるのはいかがでしょうか。
飯田有抄 プロフィール
東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Macquarie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。「クラシック音楽ファシリテーター」を肩書としながら、クラシック音楽の普及にまつわる幅広い活動をおこなっている。音楽専門誌、書籍、楽譜、CD、コンサートプログラム、ウェブマガジン等に執筆・翻訳、市民講座講師、音楽イベントの司会やトークの仕事に従事。ラジオやテレビなどのメディアに出演。書籍に「ブルクミュラー25の不思議〜なぜこんなにも愛されるのか」(共著、音楽之友社)、「ようこそ!トイピアノの世界へ〜世界のトイピアノ入門ガイドブック」(カワイ出版)、「さぁはじめよう!オーディオのある暮らし」(音楽之友社)等がある。公益財団法人福田靖子賞基金理事。
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