50年前から作り続けているデノンのレコード針 DL-103
デノンでは50年前からDL-103というレコード針を作り続けています。実はこのDL-103、FMステレオ放送で流す音楽を再生するために、NHKとデノンが共同開発したものなのです。今回はそのエピソードを紹介しましょう。
最近は「アナログレコードを見たことがない」という方もいらっしゃるかもしれませんね。
そんな方のために簡単にご説明すると、レコードは「回転するレコード盤の上にレコード針を載せて、
盤に刻まれた溝から音を読み取る」ことで音楽を再生します。つまり、音はレコード盤の溝に記録されており、
レコード針が溝から音の情報を取り出すのです。
ですからレコード針は、音質を左右する非常に重要なパーツ。
溝に刻まれたわずかな振幅を読み取る繊細さ、素材、重量(レコード盤にかかる圧力に影響)、耐久性など、
レコード針は種類や品番ごとにさまざまな個性を持っています。
当然レコード針を変えるだけで音はガラリと変わります。
デノンではDL-103というレコード針(MC型カートリッジ)を長年製造してきました。
今回は、DL-103にまつわるエピソードを紹介しましょう。
アナログレコード全盛の時代、レコードは高価で、若者が気軽に購入できるものではありませんでした。
ですから音楽好きはFM雑誌などでオンエア曲をチェックして、ラジオのFM放送から流れてくる音楽を聴き、
本当に欲しいと思った曲をレコードで買う、という人が多かったのです。そんな意味でFM放送は、音楽の試聴会でもありました。
そのFMのステレオ放送で音楽を流すためにNHKとデノンが共同開発したレコード針
がDL-103です。「FMステレオ放送における音楽再生の基準」となるものとして、「原音を忠実に再現できるレコード針」を
作ろうと開発されました。完成したのは1964年のこと。今からだいたい50年前ですね。
そのような経緯でしたから、当初DL-103が使われたのは、もっぱら放送局などのプロ現場。
業務用機器だったために一般の人はなかなか入手できませんでした。
ところが、しばらくすると一般の音楽愛好家からも「DL-103がほしい」という声が聞こえるようになりました。
FM放送で曲を知った視聴者が「FM放送と同じ音で再生したい」と思うのは自然ですよね。
もちろん「放送局で使われているレコード針」というものに対する憧れもあったのだと思います。
そこで1970年、ついにDL-103が市販されるようになり、その後現在まで製造・販売を続けています。
これまでにレギューラーモデルとして7機種、その他に限定モデルとして9機種、全部で16モデルが作られましたが、
基本的な仕様はまったく変わっていません。作り方も50年前と同じく、ひとつひとつ手作りです。
残念なことに今では、アナログレコードを楽しむ方が減ってしまいました。
しかし、アナログレコードでしか味わえない音楽の楽しみは、代え難いものがあります。
みなさんのなかにも、長年集めてきたレコードのコレクションを大切にしている方がいらっしゃるのではないでしょうか。
そんなみなさんのために、デノンは今もDL-103を作り続けています。
DL-103について興味を持たれた方は、ぜひ以下の記事をご覧ください。
(Denon Official Blog 編集部O)