迷うことなくスティーヴィー・ワンダー「キー・オブ・ライフ」一択で!
無人島に1枚だけCDを持って行けるとしたらどれを選ぶ? 「アルバムは収録順に聴く」というポリシーを持つAPマーケティング部の社員D.K.が選んだのは、盲目の天才アーティストが作った、あの名盤でした。
第9回となる今回の無人島CDは、APマーケティング部の社員D.K.が担当いたします。
「無人島に持っていける、たった1枚のCDを選ぶって、かなり難しいよね」といいつつも、
私は迷いなく、スティーヴィー・ワンダー「キー・オブ・ライフ」を持っていきます。
彼の曲は全部好きですが、このアルバムを選んだ理由は、「曲が素晴らしいから」としか、いいようがありません。
どれも名曲揃いで素晴らしいのですが、「永遠の誓い」(原題:As)や「愛しのアイシャ」(原題:Isn’t She Lovely)あたりが特に好きです。
このCDは2枚組ですが、アルバムを聴くときは、いつも頭から順番に流して聴いています。
だってアルバムを制作しているアーティストは、流れを考えて曲順を決めているわけですよね。
ですから、私は普段からシャッフルで聴くことはありません。
このアルバムは曲順の流れもよくて、「やっぱりアルバムは、最初から順番に聴くべきだな」と聴くたびに思います。
それにジャケットのデザインもいいんです。音楽の完成度、曲順の流れ、ジャケットの雰囲気……、全体がひとつの作品としてつながっているんです。
だから、無人島でたった一人で過ごす間、「このジャケットを眺めながら、頭から順番に聴く」なんて、いい感じじゃないですか。
私がスティーヴィー・ワンダーにハマったのは、アメリカで仕事をしていたころ。
当時の先輩が、スティーヴィー・ワンダーの曲をほとんどカラオケの持ち歌にしているようなマニアで、一緒に仕事をするうちに影響を受けました。
ハリウッドボウルやノキアシアターなど、スティーヴィーのライブには何度も足を運びました。
スティーヴィー・ワンダーはまさに音楽の天才です。バラードからファンク、R&Bまで幅が広くて、しかもどのジャンルでも名曲ばかり。
そしてどんな楽器も演奏できるという多才ぶり。「スティーヴィーの分身がいたら、一人でバンド組める。
そしたらどんな凄いことになるんだろう」なんて、妄想を働かせるのも楽しいです。
それから何といっても彼の音楽がすごいのは、決して古びないこと。
1976年に発表された「キー・オブ・ライフ」は、40年くらい前のアルバムだというのに、最近の曲と並べても聴いてもまったく違和感がありません。
これって凄いことですよね。普通ならどんな名曲でも、これだけ時間が経つと「懐かしさ」とか「あの時代らしさ」を感じさせてしまうと思うんです。
でも、スティーヴィー・ワンダーの曲は、常に「今」を感じさせます。
そのせいか、聴く人の年代も広いんですよ。
スティーヴィー・ワンダーは10代のころから活躍していますから、ライブに行くと70歳、80歳の人たちも踊っているんですね。
その横には若い少年もいたりして。そういう場にいるだけで「音楽って素晴らしいな」と心の底から感じます。
音楽を通して「人としての暖かみ」が感じられるのもいいです。特にライブに行くと、それを強く感じます。
たとえば「可愛いアイシャ」という曲、あれは彼の娘であるアイシャのために作った歌なんです。
そのアイシャが、ライブでスティーヴィー・ワンダーのバックコーラスをやっていて、
そしてこの曲を歌うときスティーヴィー・ワンダーは、観客にアイシャを紹介しつつ歌わせたりするんですね。
娘に対する想い、愛情が、ライブに参加している私たちにも伝わってきます。
そういうひとつひとつの曲に込められた彼の想い。それは聴く人の気持ちにも届いているんだと思います。
彼が所属していたデトロイト市のモータウンレコードにも行ったのですが、その道すがらタクシーの運転手や地元の人と会話すると、
みんな「スティーヴィーのことなら何でも聞いてくれ」みたいな雰囲気で、「ああ、こんなにも彼は愛されているんだな」と実感しました。
「キー・オブ・ライフ」はCDで持っていたのですが、何年か前に状態の良い中古レコードを見つけたんです。
レコードプレーヤーを持っていないのに、ジャケットを飾っておきたくて衝動買いしました。
買ってみてわかったのは、2枚のLPのほかに、EPが1枚付いていたこと。本当は2.5枚組だったんですね。
この原稿を書く機会にアナログレコードでも聴いてみたのですが、初めて聴いたアナログ盤の「キー・オブ・ライフ」は、
CDとは違う味わいが本当に感じられました。
聴く前は「私の耳がCDに慣れてしまってアナログ盤との違いなんて聞き分けられなくなっているかも」と
ちょっと不安を感じていたのですが、まったくの杞憂。
レコードプレーヤーを購入したい気持ちがすっかり盛り上がってしまいました。
さらに今チェックしてみたら、「キー・オブ・ライフ」のハイレゾ盤もすでに配信されていました。
ハイレゾ版の感触も確かめてみなくてはと思っています。
アーティスト名:スティーヴィー・ワンダー
アルバム・タイトル:キー・オブ・ライフ
ユニバーサルミュージック