
AVR-X4100W 開発者インタビュー part2

先頃発表されたAVアンプAVR-X4100W。開発者インタビュー part1では音質面にフォーカスしましたが、今回は話題のDolby Atmosをはじめとした新機能について、開発チームの渡辺敬太にインタビューしました。
話題のDolby Atmosに対応したデノンAVアンプのニューモデルAVR-X4100Wが発表となりました。
製品の概要はAVR-X4100W 製品詳細ページをご覧いただくとして、
今話題のDolby AtmosやWi-Fiなどの新機能について、開発チームの渡辺敬太が語ります。
ディーアンドエムブランドグループジャパン
CSBUデザインセンター渡辺 敬太
7.2ch AV サラウンドレシーバー AVR-X4100W
希望小売価格:150,000 円(税抜価格)
発売時期:2014年9月中旬
■AVR-X4100Wは話題のDolby Atmosに対応していますが、まずDolby Atmosとはどんなものか教えていただけますか。
渡辺:Dolby Atmosはシネマサウンドにおける新世代のプラットフォームです。
その第一の特長はオーバーヘッドスピーカーを使用すること。
そして第二の特長は音の動きの描写を視聴環境に合わせて精密に再現できること。
これらによって映画制作者はクリエイティブな能力を存分に発揮でき、Dolby Atmosのサウンドトラックは制作者の意図を正確に再現できます。
■オーバーヘッドスピーカーとは天井のスピーカーのことでしょうか。
渡辺:そうです。直接天井に設置するシーリングスピーカーももちろんですが、床に設置したスピーカーの音を天井に反射させる方法もあります。
いずれにしてもスピーカーによる上方向からの音の再生ということです。
サラウンドスピーカーに加えてオーバーヘッドスピーカーを採用したことで、
今までより自然でよりリアルなサラウンド体験が楽しめるようになりました。
具体的にはオーバーヘッドスピーカーによって高さ方向の立体表現が可能になったため、臨場感や躍動感が大幅に向上しました。
またチャンネル間の音の切れ目がなくなり、音のつながりが滑らかになっています。
その結果、観ている人は音で包み込まれるようになり、今までよりはるかに映画の世界に没頭することができます。
■オーバーヘッドスピーカーを含めたスピーカーの配置は、具体的にはどんな構成になるのでしょうか。
渡辺:Dolby Atmosは劇場用で64チャンネル、家庭用で32チャンネルが定義されています。
AVR-X4100Wではそのうち「5.1.2」「5.1.4」「7.1.2」をサポートしています。
ちなみにスピーカー構成の表記ですが、今までは5.1など小数点が1つで、サブウーハーを意味していました。
しかしDolby Atmosではオーバーヘッドスピーカーが設定されましたので、さらに小数点が追加されました。
ですから「5.1.2」の意味は、フロアスピーカーが5つ、サブウーハーが1つ、オーバーヘッドスピーカーが2つ、となります。
※5.1.4、7.1.2の構成では外部パワーアンプが必要です。
■もう一つの特長である「動きの描写の精密な再現」について教えてください。
渡辺:Dolby Atmosはオブジェクトベースでリアルタイムにレンダリングするシステムです。
今まで、再生する音は既存の5.1chや7.1chに固定されていましたが、
Dolby Atmosでは映画の中で動く音(オブジェクト)が位置情報と時間情報を持っており、
その情報から音の動きをリアルタイムに演算して各スピーカーに振り分けます。
ですから今までより観ている方の部屋のスピーカーの設置環境に最適な音空間が再現できるようになりました。
■音の振り分けをリアルタイムに演算するとなるとマシンパワーもかなり必要となるのではないでしょうか。
渡辺:その通りです。
従来モデルのAVR-X4000で搭載しているDSPは2基でしたが、AVR-X4100W では、
強力な計算処理能力を持つDSP「SHARC プロセッサー」を4基搭載することで処理能力を飛躍的に向上させています。
それにより高精度で、かつ膨大な演算を必要とするDolby AtmosとAVR-X4000でも搭載していた音場補正機能「Audyssey MultEQ XT32」、
さらにデノンオリジナルのビット拡張技術「AL24 Prossesing Plus」との共存を実現しました。
■サラウンド再生時の音質評価で使用したものは、どんなソフトでしたか。
渡辺:音質評価のためには様々な映画ソフトを使っていますが、そのうちの一つは「マン・オブ・スティール」でした。
格闘シーンで飛び交う、ひとつひとつのパンチの重みの表現、各場面での低音の響き方やエネルギー感。
さらに飛行機が飛び回るシーンがあるのですが、その飛行機の定位の表現や、空気感など。
さんざんチェックで使ったので、もう何回この映画を観たのか、自分でも覚えていません(笑)。
『マン・オブ・スティール』
ブルーレイ ¥2,381+税
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
c2013 Warner Bros. Ent. Inc. All Rights Reserved.
MAN OF STEEL and all related characters and elements are trademarks of and cDC Comics.
■その他にAVR-X4000から大きく進化した点はありますか?
渡辺:Wi-Fi とBluetooth 機能を内蔵しました。ですから煩わしい配線なしで、
ネットワークオーディオやスマートフォン、タブレットのからのワイヤレス再生が楽しめます。
今まで設置時にはルーターとの接続が面倒でしたが、ワイヤレスで接続できますので置き場所で悩む必要がありません。
■ハイレゾ音源もネットワーク経由で再生できるわけですね。
渡辺:AVR-X4100WはネットワークとUSB メモリー入力で新たにDSD とAIFF のファイル再生に対応しました。
映画だけでなく、スタジオマスターに限りなく近いDSDの高精度なサウンドもお楽しみいただけます。
またBluetooth 機能も搭載していますので、Bluetoothに対応したスマートフォンやタブレットのからのワイヤレス再生も行えます。
スマホなどで持ち歩いている音源を、リビングでもワイヤレスで気軽に再生できるわけです。
(手前と奥に見えるアンテナが、取り外しも可能なダイバシティアンテナ)
■ワイヤレス化に関しての開発の苦労もあったのでしょうか。
渡辺:ありました(笑)。AVR-X4100Wは金属筐体ですのでワイヤレスで電波を受信するにはもともと不利なのです。
AVR-X4100Wはワイヤレスでハイレゾ音源のネットワーク再生が行えますが、
それを実現するためには高速なデータのやりとりが安定して行える必要があります。
そのために2本のアンテナで受信状態の良いアンテナを選択する ダイバシティアンテナを 採用しました。
アンテナの取り付け場所も、さんざん検討して「ここしかない」という場所にしています。
なおワイヤレスを使用しない方のために、アンテナは取り外し可能としました。
■今回、AVR-X4100Wの開発で一番苦労した点は何でしたか。
渡辺:やはり音質でしたね。
AVR-X4100Wはデノン初のDolby Atmos対応モデルということで、社内でも非常に期待値が高く、
日本だけでなく北米や欧州のスタッフとも何度も音質評価を繰り返しました。
それぞれが良いモノを作りたいという気持ちが強かったので、スタッフの要求が高くて苦労しました。
試作機は白河工場の設計や川崎本社の試聴室、そして欧州の試聴室を何度も往復しています。
ただその甲斐あって、妥協することなく細部まで突き詰めて音質の検討が行え、自分としても満足できる音質に仕上がったと思っています。
■最後に読者の方へメッセージをお願いします。
渡辺:AVR-X4100WはAVアンプとして非常に多機能なのですが、
Dolby Atmosに対応したこと、ハイレゾ音源のネットワーク再生などは、機能を持っていても、
ベースとなるアンプの音質が優れていなければ、その良さが伝えられません。ですから「アンプ」としての音質を重視して作りました。
最先端の機能を持つAVR-X4100Wですが、その機能を支える土台となっている
伝統あるデノンの高音質なサウンドをじっくり聞いていただきたいと思います。
■どうもありがとうございました。
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