私のオーディオ道 APマーケティング部T 「それでもデノンのカーステレオを使い続ける」
オーディオ機器メーカーで働く人の音楽観や使用機器に興味はありませんか? 「私のオーディオ道」ではデノンのカーオーディオシステムをこよなく愛するセールスアンドマーケティング部のTさんにインタビューしました。
オーディオ機器メーカーで働く人の音楽観や使用機器に興味はありませんか?
その疑問にお答えする連載「私のオーディオ道」。
第8回は、現在はもう販売を終了しているデノンのカーオーディオシステムをこよなく愛する
APマーケティング部のTさんにインタビューしました。
●デノンのカーステレオは、なかなか珍しいですね。
デノンのカーステレオは1985年に北米で始まりました。
デノンならではの音質や信頼性で評価は高かったようです。
そして国内では1995年にCDレシーバー DCT-950RとCDチェンジャー DCH-600が発売されました。
ただ残念なことにカーステレオ業界は次第にナビを含めたAVセンター化が進み、オーディオ単体製品としてのニーズが減少したため、
2004年に最終モデルを発売した後、デノンはカーステレオ分野から撤退しました。
↑デノン カーコンポーネントカタログ(海外用)
↑デノン カーコンポーネントカタログ(国内用)
●デノンのカーステレオにはどんな特長があったのでしょうか。
やはり音質重視でしたね。非常にHi-Fiコンポ的な構成で、多くのモデルがアンプ非搭載でした。
つまりデノンのパワーアンプだけでなく、他のお気に入りのアンプを使っていただいてもいいです、というコンポーネントの考え方だったんです。
当時のHi-FiのCDプレーヤーの最新技術「AL24プロセッシング」を搭載したモデルもありました。
いわば当時のデノンのHi-Fiの技術を、カーステレオの1DINサイズ(50mm×幅178mm)にまで凝縮したものでした。
最近発売したデスクトップタイプのUSB-DAC / ヘッドホンアンプ DA-300USBのサイズが
W170×H57×D182mmですから、それより小さいですよね。
しかもそこにCDのドライブユニットもあるので、当時としてはかなりの集積度だと思います。
それと、デザインも当時Hi-Fiで一世を風靡していたSシリーズを継承したもので、
他のカーステレオのデザインとは一線を画したモデルでした。
↑DA-300USB スペシャルサイト
↑カーステレオDCT-R1の基板。電源パターン、スピーカー出力パターンなどはすべてハンダで強化されている
●Tさんが使っているのはどんなモデルですか。
DCT-Z1やDCT-A1、そしてフラッグシップモデルであるDCT-1などは、外部パワーアンプが必要だったのですが、
私が購入したのはアンプを内蔵したDCT-R1というモデルでした。
DCT-R1は2001年頃に発売されたのですが、私が購入したのは2002年です。
買ってから一度も故障がなく、音飛びもなく、バリバリに現役で使っています。
デノン カーコンポーネントカタログより
●そもそもTさんがデノンのカーステレオを使おうと思ったのはどうしてですか。
今の車を新車で購入した時、純正で2DINのCD/MDコンポが入っていました。
これがどうも音が悪かったのとカーナビがついていなかったのもあり、自分でダッシュボードを剥がし、
1DINのカーナビといっしょに1DINのカーステレオに入れ替えました。
当時、車のイベントやドレスアップの雑誌を見ていると、カーオーディオに力を入れている人がたくさんいて、
彼らの間ではデノンは「音がいい」ということで一目置かれていました。
それなら私も、ということで購入しました。
●音はかなり変わったのでしょうか。
純正の時は音が軽い感じで、ラジカセっぽい音で、ボリュームを上げていくと音が潰れていく印象でした。
デノンに変えたら純正とは明らかに違う音なので「なんだこれは!」と思うぐらい変わりましたね。
●それはどんな印象の音ですか。
「原音がそのまま素直に出ていて、パワフル」という印象です。
カーステレオに凝る人はそれぞれ傾向があって、5.1chのサラウンドにする人や、
「低音命」でウーハーをたくさん車に埋め込んでガンガン鳴らす人もいるのですが、
私のカーステレオはかなりHi-Fi的で原音に忠実です。
これがデノンのカーオーディオの持ち味だと思います。パワーも十分で、DCT-R1だけでもとても豊かに響きますが、
せっかくプリアウトが2系統ありましたのでサブウーハーを2系統接続し、更に低音の補強をしています。
ルームミラーが揺れるぐらいの音量までパワーを上げても音が潰れることなく、とても豊かに響きます。
●デノンのカーステレオでは主にどんな音楽を聴いているのですか。
最近はそれほどCDを使っていなくて、おもにAUX経由でiPodを鳴らしているんですが、
車で聴く音楽はメリハリのあるダンスミュージックが多いですね。
Perfumeのポリリズムなどをよく聴いています。
「ポリリズム」を収録したアルバム
アーティスト名:Perfume
アルバム・タイトル:『GAME』
徳間ジャパンコミュニケーションズ
●カーステレオの醍醐味とはどんなところにあるのでしょうか。
音楽と車窓に流れる景色とのマッチングですね。
これは家のオーディオルームでは楽しむことができません。
それと車内は空間が狭いので「自分だけの空間で、いい音を聞いている」という贅沢な感覚になれるところも気に入っています。
いわば「自分だけのリスニングルーム」なんです。
家にいると家族に「うるさい」とか、「テレビを見たい」と言われて気を遣ったりしますが、車内ならひとりで音楽を堪能できます。
私は高速道路が好きなのですが、夜ひとりで高速道路を走りながら聴く音楽は格別。
車にドレスアップしたネオンを光らせながら、音とイルミネーションに包まれて夜のハイウェイを走る、これが最高の悦楽です。
●その後デノンはカーステレオ事業から撤退してしまいました。
残念ながら……。車に搭載されている純正のカーオーディオの機能が良くなってきたこと、
さらにオーディオと一体化したカーナビが一般的になってきたこと、
そのために個人で簡単に換装ができなくなってきた、という背景によるものかもしれません。
カーステレオはデノンの事業としては終わりましたが、その経験とノウハウは財産となっています。
たとえば、カーステレオというのはもの凄く小さいところに様々な技術を凝縮するものです。
Hi-Fiの技術をギリギリにまで小さくする高密度実装技術は、カーステレオで培われ、今のモデルにも活かされています。
まもなく発売になる ポータブルUSB-DAC / ヘッドホンアンプ DA-10などは、そのいい例でしょう。
私のカーステレオは10年以上たった今も現役バリバリで故障知らずですから、まだまだ使い続けていきたいと思っています。
↑ポータブルUSB-DAC / ヘッドホンアンプ DA-10 スペシャルサイト
●Tさん、ありがとうございました。
(Denon Official Blog 編集部 I)