デノンのアナログレコードサンプラーができるまで Part.1
フラッグシップ・プリメインアンプ「PMA-SX1」の発売を記念した「デノンミュージックサンプラー Vol.2」を現在、鋭意制作中!今回はマスタリングを終えたばかりの制作陣にインタビューを敢行しました。
フラッグシップ・プリメインアンプ「PMA-SX1」の発売を記念して制作されている
限定プレス・アナログレコード「デノンミュージックサンプラー Vol.2」。
キャンペーン対象期間中にPMA-SX1展示店にてPMA-SX1をご購入のうえ、
ご応募いただいた方全員にプレゼントされる、特別制作のアナログレコードです。
現在日本コロムビア株式会社の全面協力により、鋭意制作中!
今回は美空ひばり「川の流れのように」やノイマン指揮の「新世界より」などが収録されたこのアナログレコードについて、
マスタリングを終えたばかりの制作陣にインタビューしてみました。
対談参加者(Photo左端より)
D&Mホールディングス セールス&マーケティング 国内マーケティンググループ マネージャー 川北 裕司
日本コロムビア A&C本部 スタジオ技術部 技術支援グループ マネージャー 主任技師 冬木真吾
D&Mホールディングス デノン サウンドマネージャー 米田晋
日本コロムビア A&C本部 スタジオ技術部 マスタリングエンジニア 田林正弘
Talking about Concept.
●まずこの「デノンミュージックサンプラー Vol.2」の企画趣旨から教えてください。今回はなぜアナログディスクなのでしょうか。
川北:まずPMA-SX1を購入していただいた方、すなわちデノンブランドを支持いただいた方に、
感謝の気持ちを込めて何かをプレゼントしたい、ということが前提としてありました。
そしてPMA-SX1の機能面の特長としては、アナログレコードの再生に関し、
より高音質な「CR型フォノイコライザー」を搭載しましたので、
それをわかりやすいカタチでお客さまに伝えたい。
とするとアナログレコードがいいのではないか、と考えました。
川北 裕司
米田:昨今オーディオの世界での話題は「ハイレゾ」がメインになりつつあります。
PMA-SX1はハイレゾ音源の再生でも、もちろん非常に高い能力を発揮しますが、音楽のメディアはハイレゾだけではありません。
現状ではCD、アナログディスクも含めた幅広い音楽メディアがあり、フラッグシップ・プリメインアンプのPMA-SX1としては、
全てのメディアに対し、最高の音質を提供することを目指しています。
PMA-SX1をご購入いただいたお客さまは、恐らく数多くのアナログレコードをお持ちのはずです。
ですから今回のサンプラーでは、特にアナログディスクが非常に高いクオリティで再生できることをアピールしよう、という趣旨で企画を進めました。
●このアナログディスクの制作上の特徴について教えてください。
冬木:制作にあたってはデノンさんから、アナログ波形再現技術「Advanced AL32 Processor」を使ってみたい、というアイディアを頂きました。
通常私たちコロムビアのマスタリングスタジオでは、デジタルドメインでマスタリングが行われることが多いです。
しかし今回は全てのマスター音源をいったんAL32プロセッサーでアナログ信号に変換し、それを「アナログ素材」として扱いました。
具体的にはアナログ信号をマスタリングのために192kHz/24bitのハイビット・ハイサンプリングでAD変換し、
DAWに取り込んでマスタリング処理を行いました。
冬木真吾
田林:DAコンバーターも通常は業務用の機材を使っていますが、
今回は民生機のAL32プロセッサーということで、若干の技術的な苦労はありました。
でも結果としては、デノンらしい個性が出せたと思っています。
業務用DAコンバーターは、よくも悪くも何の着色もしません。
歪みがちな部分もそのまま歪みがちに再現します。一方でAL32プロセッサーは、
デジタルの嫌な部分を回避し「アナログだったら本当はこうなっているはず」というようにコンバートしてくれます。
アナログ信号を作ることに非常に長けた回路だという印象を持ちました。
田林正弘
●盤面の表と裏で回転数が違うのはどうしてでしょうか。
冬木:アナログレコードで高音質を実現するためには、ある程度の溝の送り幅が必要になります。
たとえば45回転なら15分ぐらい、33回転なら22、3分ぐらいが収録時間の目安です。
そんなお話をデノンさんにお伝えしたら
「片面は45回転、片面は33回転のレコードにできないか」という返事がありビックリしました。
川北:美空ひばりの「川の流れのように」については、高音質な再生が行える45回転でやりたいというアイディアがありました。
ただそれだとトータルの収録時間が減ってしまうので、片面は33回転にできないかと(笑)。
冬木:レコードの規格をいろいろ調べたのですが、特に問題はないと(笑)。
それでプレス工場にお願いしたら今度は「前代未聞だ」と(笑)。
A/B面が別回転という意味でもこのレコードは稀少盤だと思います。
●盤の重量も180gと重量盤ですね。
米田:通常のアナログレコードは120gぐらいです。
やっぱり重量があるほうがレコードプレーヤーに装填した際の安定性や、
盤の鳴きなど、様々な面でメリットがあるので、今回は重量盤としました。
米田晋
Talking about Selection.
●ところで選曲はどんなふうに行われたのでしょうか。
川北:選曲にあたっては、いろいろな条件がありました。
できるだけ多くのHi-Fiオーディオファンの喜んでいただけるように古い音源から新しい音源までをカバーしたい、
マスターの録り音がいい音である必要がある。
さらに市場で手に入りにくい、あるいはここでしか手にはいらない的なプレミアム感も考慮しつつ、アイディアを出し合いました。
●33回転のA面にオーディオチェックトラックが入っていますね。
米田:選曲の時、今はもう、みなさんチェックディスクお持ちでないのでは、という話になりました。
事実、オーディオチェック用のレコードは、現状ではレアでなかなか入手しにくいんです。
このディスクに収められたチェック用トラックは短時間で簡単に左右のチャンネルチェック、
位相、再生周波数帯域、トラッカビリティのチェックができます。
しかも冬木さんの提案で、信号ではなく、楽曲素材を使いました。
信号でチェックするより聴いていて面白いよっていうことで。
冬木:もし測定器をお持ちなら、測定器と組み合わせた信号できちんと調整すべきだと思いますが、そこまでされる方は少ないと思います。
でなければ、音楽はやっぱり聴いてどう感じるか、感性が重要だと思ったので、楽曲によるチェックトラックを提案しました。
実は中には「この盤でしか聴けない」音源もあります。
たとえばトラッカビリティチェック1「 宮内庁式部職楽部の演奏による雅楽から太鼓の音」や
2の「ガラス楽器を使った実験音楽集団による『ガラスを割る音』」は
以前コロムビアが出していたオーディオチェックレコードで使われていた古い音素材です。
今回コロムビアの音源アーカイブから探しましたが、その後使われた形跡がありませんので、まさに発掘音源です。
(Part2に続きます。)
プリメインアンプ PMA-SX1
(SP:プレミアムシルバー)
希望小売価格 580,000円(税抜)
PMA-SX1発売記念 「特別制作・限定プレス・アナログレコードプレゼントキャンペーン」
詳細はこちら
(Denon Official Blog 編集部I)