【無人島CD】馬鹿な大人になってすいません
無人島に1枚だけCDを持って行けるとしたらどれを選ぶ?ゲームソフト「ペルソナ4 ダンシング・オールナイト」のアシスタントプロデューサー(株)アトラスの宇田洋輔氏は何を選んだか?
お初にお目にかかります。
私、株式会社アトラスというゲームの開発販売を行っている会社にて、
ビジネス全般を見る仕事をしております宇田洋輔と申します。
このたび、弊社PlayStation®Vita用ゲームソフト
「ペルソナ4 ダンシング・オールナイト」にて
デノンさんのヘッドフォンとコラボレーションをさせていただきました関係から、
デノンさんと懇意にさせていただきまして、
このような記事を書かせていただく機会をいただきました。
では……本題です。
無人島に持っていく1枚選んでください、というお題、
好きなアルバムは様々あるのですが、無人島に1枚、ということで
真っ先に思い浮かんだのがこのアルバムになります。
私、ド田舎の生まれでして、町にある唯一の本屋さんで「ロッキング・オン」を立ち読みして、
レビューを見てCDを買うような中学二年生からの中二病を発症し、今に至っております。
このアルバムも「ロッキング・オン」にてレコメンドされているのを見て、
電車で30分ほどかかる隣の大きめの街の、
当時唯一の輸入レコード&CDを取り扱う店舗にて購入いたしました。
僕の安物のCDダブルカセットラジカセから、
このアルバムの楽曲の音が発せられた瞬間の衝撃を、今でも覚えております。
この記事をご覧になっている皆様はオーディオ機器に興味があるお客様で、
かつ、様々な音楽雑誌等もご覧になっている、音楽を愛されている方かと思われます。
なので、音楽雑誌「ミュージックマガジン」や「レコードコレクター」などを
ご覧になっている方も多いかと思いますが、
そういった雑誌で「特定のアルバムの盤違いを何枚もコレクトしている人」
もしくはそのコレクションが特集されませんか?
よくあるのはビートルズやローリング・ストーンズの特定のアルバム……
「サージェントペパーズ~」や「メインストリートのならず者」などを
超細かい差異でも買い集めてしまう人の特集、などです。
ありますよね?
で、中学生高校生の僕は田舎の書店でそれらの特集を立ち読みしながら、
その細かい差異を求める大人たちを
「馬鹿なんじゃねえの、超無駄だよ。
そんなんなら違うアーティストの違うアルバム買えよ。
ほんと金の無駄遣いだ、アホだよな」と思っておりました。
はい、ここまでふっておけばわかると思いますが、
私このアルバム「Loveless」ですが、
盤違いやらリリース元違いやらの小さな差異を追い求め、何枚も持っています。
はい、馬鹿な大人ですいません。
このアルバムは再生環境を選びません。
超安いダメダメなラジカセから聞くこのアルバムも、
妻に稟議が通る限りの金をぶっこんだオーディオシステムで聞くこのアルバムも、
それぞれに良く、どちらが正解とは言えません。
ドンシャリのイヤホンヘッドフォンで聞いても、フラットなもので聞いても、
ものすごい帯域が狭いダメヘッドフォンで聞くものも、
それぞれに味があり、それぞれが素晴らしいのです。
このアルバムから流れ出てくる轟音ノイズギターや
ヘンテコとしか言いようのないドラムパターンには聞くたびに
常に新しい発見があり、環境の変化が差異を生み出し、
その差異が本当に楽しく、嬉しくなるアルバムです。
で……このアルバムのCDですが……元盤のクリエイティブが出したものと、
その後の海外のプレス盤とで、ほんとうにものすごい小さな差異ですが、
弱冠違いがあります。
で、違いがあることに気づいてしまうと
「発せられる音に違いがあるのではないか?新しい発見があるのではないか?」
と思って、買ってしまうのです。
なるほど中学生の自分に言いたいですね。
1つのアルバムの盤違いを買ってしまう大人は馬鹿ではないが、
間違いなく何かのタガが外れている、と。
アナログはより顕著で、オリジナル盤とオリジナル盤の何回かの再発、
海外再発されたUSA盤は重量180g盤と軽量盤があり、
ちょっと違ったところだとEU盤(ドイツ製)などなどがあります。
同一再生環境でも聞こえてくる音がまったく違います。
ちょっとペラっとしてる軽量盤アメリカ版が好みです。
安いビニール使ってるのが明白ですぐにプチプチノイズが乗るようになりましたが、
それがまた良いのです。
また2年ほど前にリマスター2枚組版が発売されましたが、
日本版とUK版の双方を買いました。
何か日本版のほうが音が良い……気がする、
というプラシーボを感じました。
しかしながら、この一連のリマスター版でのベストはやはり、
マスタリング時にミスったのであろうプチノイズが
しれっと除去されていたEU版だと思います。
何も言わずにしれっと直すところがMy Bloody Valentine
(というか中心人物のケヴィン・シールズ)っぽくていいですね。
無人島にこのCDを持っていく。
再生環境はたぶんたいして良くないものだろう。
無人島というぐらいだからきっと、南の島の、どこかに違いない。
その島で、僕が「ヤシの木の下で聞くのと、波打ち際で聞くのでは違う」と様々な場所で、
このアルバムを聞き、自分の好きな聞こえ方がする場所を探し求めて歩いている姿は、想像に難くない……。
アーティスト名:マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン
アルバム・タイトル:ラブレス
品番:SICP-20380-20381