イーグルスとアース・ウィンド・アンド・ファイアの追憶
ポップミュージックシーンの歴史を変え、ほぼ時を同じくして惜しくもこの世を去った 2人アーティスト。イーグルスのグレン・フライ、アース・ウィンド・アンド・ファイアのモーリス・ホワイトを追悼します。
前回このブログでデヴィッド・ボウイを追悼しましたが、
ほぼ時を同じくしてイーグルスのグレン・フライ、そしてアース・ウィンド・アンド・ファイアのモーリス・ホワイトと、ポップミュージックの歴史を変えた優れたアーティストが逝去しました。
今回は追悼の意味を込めて、イーグルスとアース・ウィンド・アンド・ファイアについてお送りしましょう。
アーティスト名:イーグルス
アルバム・タイトル:イーグルス・ファースト
ワーナーミュージックジャパン
規格番号:WPCR-80229
文学では「処女作にはその作家のすべてがある」とよく言われますが、音楽にもおなじことが言えるのかもしれません。
カントリーとロックの絶妙なブレンド、抜群に美しいコーラスの魅力、爽やかで軽快な曲想といった、
イーグルスの魅力がバランス良く凝縮されているのがこのデビューアルバムの収録されているデビュー曲の「テイク・イット・イージー」ではないでしょうか。
ただ面白いことに、「テイク・イット・イージー」はイーグルスのオリジナルではありません。
実はシンガー・ソング・ライターのジャクソン・ブラウンと亡くなったグレン・フライとの共作なのです。
ジャクソン・ブラウンとグレン・フライはルームメートだったことがあったそうで、すでにジャクソン・ブラウンが「テイク・イット・イージー」のほとんどを書き上げていたのですが、そこにグレン・フライが歌詞を追加して完成させたと言われています。
ジャクソン・ブラウンはそのことについて「最初は自分ひとりで書き始めたが、グレンといっしょに作った。
全部ひとりで書いていたら、今のような曲にはなっていなかっただろうし、こんなにみんなに愛される曲にもなっていなかったと思うよ」と語っています。
今年のグラミー賞ではグレン・フライを偲び、イーグルスのメンバーが集まって「テイク・イット・イージー」を演奏しましたが、グレンの代わりにメインボーカルとして歌ったのは、やはりジャクソン・ブラウンでした。
気楽に行こうぜ、といった意味の「テイク・イット・イージー」ですが、ここまで悲痛な思いで歌われたテイク・イット・イージーは初めてかもしれません。
アーティスト名:イーグルス
アルバム・タイトル:ホテル・カリフォルニア <SACD/CDハイブリッド盤>
ワーナーミュージックジャパン
規格番号:WPCR-14165
ちなみにイーグルスの代表曲といえば、この「ホテル・カリフォルニア」でしょう。
イーグルスは60年代から始まったロックの黄金期の最終ランナーとして登場し、ロックが最も幸福だった時代の幕引き役をしたバンドという気がしてなりません。
この曲を聴く度に、そう思います。
このアルバムは音が良いアルバムとしてもよく知られており、開発者が音色チェックのリファレンス用としてこのアルバムを使うことも多いようです。
また「ヘル・フリーゼルズ・オーヴァー」というアルバムに収録されているアンプラグドバージョンの「ホテル・カリフォルニア」も音が良く、同じくリファレンス用としてよく使われています。
アーティスト名:アース・ウィンド・アンド・ファイア
アルバム・タイトル:灼熱の狂宴
ソニーミュージック
イーグルスとアース・ウィンド・アンド・ファイアは、音楽的には対極を行くバンドではありますが、不思議な共通点もありました。
イーグルスはグレン・フライとドン・ヘンリーというボーカル2枚看板でしたし、アース・ウィンド・アンド・ファイアは、モーリス・ホワイトとフィリップ・ベイリーというボーカル2枚看板でした。
そして、アメリカの白人のカントリーロックの雄がイーグルスだったとすれば、アース・ウィンド・アンド・ファイアは、ブラックミュージックの雄、という言い方もできるかもしれません。
アース・ウィンド・アンド・ファイアは、1978年あたりで「セプテンバー」などの大ヒットを連発してスーパーバンドになりますが、このアルバム「灼熱の狂宴」は、その大ヒット前夜のアルバムであり、1974年から1975年にかけて録音されたライブとスタジオ作品がカップリングされたものです。
ここで聴いていただきたいのが、彼らのライブでの演奏の凄さです。
リズムセクションのグルーヴの強度、分厚いホーンセクションのキレの鋭さ、そしてリズムギターの名手、アル・マッケイのリズムカッティング。
もはや圧倒的といっていいでしょう。
この演奏力がベースにあったからこそ、その後から続々と名曲が生まれてきたのだなと痛感します。
アーティスト名:アース・ウィンド・アンド・ファイア
アルバム・タイトル:ベリー・ベスト・オブ・EW&F
Sony Music
アース・ウィンド・アンド・ファイアのヒット曲は数多くありますが、このベスト盤では「セプテンバー」「レッツ・グルーヴ」「宇宙のファンタージー」「ゲッタ・ウェイ」「ブギ・ワンダーランド」、さらにモーリス・ホワイトのソロ名義のヒットチューンである「アイ・ニード・ユー」が収録されています。
1970年代後半から1980年代のディスコチューンの多くは、今聴くと「古色蒼然」、あるいは「時代を感じるなぁ」というものが多い中、アース・ウィンド・アンド・ファイアの曲は、今聴いても全く色褪せることのない魅力を放っており、むしろ、今の方が輝いて聴こえるような気すらします。
ちなみにこのアルバムにはビートルズの「ガット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ」のカバーも収録されています。
これを聴いて私、思うのですが、世の中にはビートルズの名曲をカバーしたバージョンは数多ありますが、本家のビートルズよりカッコイイと思えるのは、このアース・ウィンド・アンド・ファイアの
「ガット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ」だけではないでしょうか。
そんなことを思いながら、最近は毎晩、アース・ウィンド・アンド・ファイアとイーグルスを聴いています。
(Denon Official Blog 編集部 I)