サウンドマネージャー山内セレクションVol.4
デノンのサウンドマネージャー山内がHi-Fiオーディオシステムで味わってほしい音楽をセレクトする山内セレクションのVol.4。超有名盤からマニアックな盤までを独自の切り口でご紹介。今回はレアなアナログ盤も2枚セレクト!
デノンのサウンドマネージャー山内がHi-Fiオーディオで味わってほしい音楽をセレクトする山内セレクションのVol.4。超有名盤からマニアックな盤までを独自の美意識でご紹介します。
【今回のナビゲーター】 GPD エンジニアリング デノンサウンドマネージャー 山内慎一
■山内さん、山内セレクション、非常に好評です。今回は第4回ということで、よろしくお願いします。
山内:よろしくお願いします。
■恒例ですが、音源をご紹介いただくまえに、今回の試聴環境を教えてください。
山内:今日はPMA-2500NEとDCD-SX11,DNP-2500NEをメインにしたシステムです。
スピーカーは前回と同じくB&Wの最新世代である800 D3シリーズの「802 D3」です。
■では1枚目の音源からお願いします。
山内:今日はベックからいきましょうか。「モーニング・フェイズ」というアルバムです。
このアルバムはカントリーやフォーク的なアプローチも見せつつ、でも「これは新しい音楽だ」と本人も言っていて、聴いてみると確かに個性のあるベックでなければ作れなかった曲に仕上がっていると思います。
アーティスト名:ベック
アルバム・タイトル:
アルバム・タイトル:モーニング・フェイズ
■(試聴が終わって)ちょっとニール・ヤング的な、カントリーロックのようなイメージを感じます。
山内:とはいえ、やはり新しい音楽ですね。私はCORNEPUSの音と似たニュアンスも感じます。
ベックは実験的な作品もあったり、かなり作風に振幅がある人なんですが、たしか病気をして、回復してこのアルバムを作った、というようなことを読んだことがあります。
そのせいでしょうか、穏やかで暖かい雰囲気で、聴いていて癒されるアルバムですね。
このような真っ当な曲を作るベックも、かなりいいなと思います。
■音源を聴いてみると、結構低音が出てきますね。
山内:やっぱり一筋縄ではいかないアーティストではあって、低音もありますし、音源としての情報量は多いので、きちんと音が整理できるオーディオシステムでないと、正確な再生は難しいかもしれません。
そういう意味では、オーディオ的に手強いアルバムではあります。
■では次をお願いします。
山内:次はバッハのバイオリン曲を聴いていただきましょう。いろんな人が弾いている有名な無伴奏バイオリンのソナタなんですが、私が試聴で使うのはルーシー・ファン・ダールという人です。
バロックバイオリンという、昔のバイオリンを使った演奏です。
アーティスト名:ファン・ダール
アルバム・タイトル:J.S. バッハ:無伴奏バイオリンのためのソナタとパルティータ BWV Volume2
■やはり今のバイオリンとは違う音ですね。
山内:現代のバイオリンではいろんな人が録音している曲ですが、バロックバイオリンの魅力は、音が柔らかなんですよね。
モダンな演奏に比べると刺激が少なめな演奏ではあるのですが、ゆったり、かつ心に浸透してくる響きなので気に入っています。これならバロックバイオリンの演奏を聴いたことがない方にも、安心して勧められる演奏だと思います。
■なるほど。では次をお願いします。
山内:一気に80年代に遡ってみましょうか。カラーフィールドというバンドがあります。
スペシャルズのボーカルのテリー・ホールがスペシャルズ解散後にFun Boy Threeというバンドを作って、さらにその後に作ったのがこのカラーフィールドです。
アーティスト名:The Colourfield
アルバム・タイトル:Virgins & PhiPstines
■(試聴が終わって) 80年代にしてはキラキラしたシンセ音などが入っていないですね。
ちょっとアコースティックっぽいサウンドです。
山内:このあたりのサウンドはネオアコの走りみたいなところがありますね。
それと80年代からみるとなんとなく60年代っぽいという原点回帰的なニュアンスもあります。
実際それなりにヒットしたアルバムなんですが、ある種の「メジャーではない感」があって、しかもちょっとした先鋭性も見え隠れする。演奏スタイルや曲を含めてイギリス人だなぁ、と思います。この感じは好きですね。
■私は聴いたことがある曲でした。
山内:「Thinking of you」という曲は、わりとヒットしました。
そういえばスペシャルズは2009年にオリジナルメンバーで、26年ぶりにサマーソニック出演のために来日しましたね。
結構評判が良かったようです。では次を聴いてみましょう。
■次は何が聴けるのでしょうか。
山内:マーク・プリチャードという人がいます。
プロデューサーとして有名な方で、エイフェックス・ツイン、ディベッシュ・モード、エイミー・ワインハウス、レディオヘッドといった大物たちのリミックスを手がけています。
その彼が自分名義で出したアルバムです。曲によっていろんなボーカリストをフィーチャーしているんですが、レディオヘッドのトム・ヨークをフィーチャーした曲がありますので、それを聴いてみましょう。
アーティスト名:UNDER THE SUN
アルバム・タイトル:マーク・プリチャード
■(試聴が終わって)トム・ヨークのボーカルが素晴らしいですね。
低い帯域に音が重なっているので、これをきれいに再生するのも大変ではないでしょうか。
山内:曲ごとにボーカルがちがうので、サウンドも曲によって色々ですが、全体としては、再生しやすいように思います。他の曲を聴いてみると、若干アンビエント色が強いように思いました。
■確かにアンビエント系のニュアンスが強い曲もありますね。
山内:サウンドスケープというか、ルーム感が強いアンビエントです。
どちらかというとアンビエントミュージックが生まれた頃のサウンド、ブライアン・イーノやジョン・ハッセルの音に近い気がします。今の若い世代のアーティストは、こういうサウンドはあまり作らないかもしれませんね。
■それでは次をお願いします。
山内:今回もアナログレコードをご紹介したいと思います。2枚用意しました。
まずは「セロニアス・モンクに捧ぐ」というコンピレーションアルバムからご紹介します。
山内:スティーブ・カーンとドナルド・フェイゲンによる「リフレクションズ」を聴いてください。
アーティスト名:オムニバス (アーティスト)
アルバム・タイトル:セロニアス・モンクに捧ぐ
■(試聴が終わって)素晴らしい演奏ですね。アナログシンセを弾いているのがスティーリー・ダンのドナルド・フェイゲンですよね。とジャズギタリストのスティーブ・カーンがアコースティックギターを弾いていますが、この組み合わせもユニークですね。
山内:このアルバムはジャズ界の名作曲家、セロニアス・モンクの曲をいろんなアーティストがカバーするというものですが、ほかにもいい曲があって、カーラ・ブレイとか、トッド・ラングレンとかも入っています。
かなり聴き込んだアルバムです。やはりアメリカのミュージシャンは基本ができているなぁ、さすがだなぁと感じさせられますね。
■アナログレコードで聴くと、また味わいが深まりますね。
山内:そうですね。でもアナログレコードに関してはオーディオ的な聴き所はさておいて、純粋に音を楽しもうという気になります。
このアルバムではモンクの原曲の良さをよく弾きだしていると思います。
しかも普通の人が気づかないようなちょっとした良いところを上手にフォーカスして引きだしてくる。
モンクの曲の本質に含まれているものですが、オリジナルのピアノ演奏だけではわかりにくかった魅力を、ドナルド・フェイゲンのアナログシンセとスティーブ・カーンのアコースティックギターが見事に描き出していると思います。
■それではそろそろ締めの一曲をお願いします。
山内:ザ・スミスの45回転のアナログシングル盤を聴いてみましょうか。
■それはかなりレアな音源ですね。楽しみです。
アーティスト名:The Smith
タイトル: Heaven Knows I’m Miserable Now (12inch single)
■45回転のアナログシングルだと、さらに音がリアルな気がします。
山内:あまり凝らずにサッと録っている感じなので「録れたての鮮度」がある感じです。
特に彼らのギターの特徴的なサウンドがよく描かれていると思います。
録音は1984年ですが、イメージ的な言い方ですが、パンク~ニューウェーブ以降で、モノクロな音楽からかなり色彩感が感じられる音楽へとミュージックシーンが動いていった、その辺の変化の様子をよくあらわしていると思っています。この時期の音楽はかなり好きですね。
■こういう音源もチェックでは使うのですか。
山内:実際、音決めするときに時々使います。
この音源のようにしょっちゅう聴いているものだと、ぱっと聴いてすぐ何が足りないのか、すぐわかりますから。
なるほど、レアな音源のご紹介ありがとうございました。次回もよろしくお願いします。
(Denon Official Blog 編集部 I)