AH-D9200、AH-D7200、AH-D5200を編集部で聴き比べてみた。
先日発売されたデノンのヘッドホンのハイエンドモデルAH-D9200が話題を集めています。そこで今回デノンオフィシャルブログでは、デノンのリアルウッドシリーズの兄妹モデルであるAH-D9200、AH-D7200、AH-D5200の比較試聴をしてみました。
オーバーイヤーヘッドホン
AH-D9200
AH-D9200のスペシャルコンテンツもぜひご覧ください。
オーバーイヤーヘッドホン
AH-D7200
オーバーイヤーヘッドホン
AH-D5200
AH-D9200、AH-D7200、AH-D5200とは、どんなヘッドホンなのか。
AH-D9200(左)、AH-D7200(右)、AH-D5200(中央)はいずれもリアルウッドシリーズのモデルで、ハウジングとして使用されている天然木がAH-D9200が高知産孟宗竹、AH-D7200がアメリカンウォールナット、AH-D5200がゼブラウッドとそれぞれ違います。
今回は、このデノンのオーバーイヤーヘッドホンの上位3モデルを、実際に同じ条件で聴き比べてみました。
比較試聴の前に、リアルウッドシリーズのAH-D9200、AH-D7200、AH-D5200とは、どんなヘッドホンなのか、その概要についておさらいしておきましょう。シリーズの特長としては、
・音響特性に優れた質感の高い天然木のハウジングを使用
リアルウッドシリーズはいずれも天然木のハウジングを採用。AH-D9200、AH-D7200、AH-D5200のハウジング材の性質は以下のとおりです。
AH-D9200:軽量性と高剛性、すぐれた振動吸収性をあわせ持つ孟宗竹
AH-D7200:ほどよく重く硬い一方で弾性もありバランスが取れた音がするアメリカンウォールナット
AH-D5200:この3つの中では一番硬く、鳴きの少ない締まった音がするゼブラウッド
さらに、天然木ならではの、ひとつとして同じではない木目を活かし、デザイン性の高さにもこだわっています。
・振動板外周を柔らかいロールエッジで支持したフリーエッジドライバーを搭載
スピーカーに近いより自然な音を追い求め、スピーカーと同じ素材、同じ構造を取り入れています。
ちなみに、それぞれのモデルで、ドライバーの材質、形状などを少しずつ変えています。
・ストレスフリーな装着感
イヤーパッドのクッションに、耳や頭のかたちに合わせて変形する低反発ウレタンを採用し、快適な装着性を実現しています。
そのクッションを一般的な人工皮革のおよそ2倍の耐久性を備える新開発の人工皮革で覆っています。
デノンヘッドホン、リアルウッドシリーズのスペシャルコンテンツもぜひご覧ください。
というわけでいよいよ試聴開始です!
今回はAH-D9200、AH-D7200、AH-D5200を比較するために、まずは同じ音源を聴いてみます。
編集部Iがよく聞きこんでいる、ドナルド・フェイゲンの『ナイトフライ』です。
アーティスト名:ドナルド・フェイゲン
アルバム・タイトル:ナイトフライ
タイトで引き締まったサウンドが魅力のAH-D5200
AH-D5200は非常にクリアなサウンド、という印象です。
この後でご紹介するAH-D9200、AH-D7200と比較するとほんのわずかにナローレンジにも感じられますが、音が緻密で、よく引き締まっており、アタック感とサウンドの一体感、まとまりが感じられます。
AH-D5200のソリッドなサウンドを堪能するために、ロック系のサウンドを聴いてみました。
The Rolling Stonesのアルバム『Some Girls』に収められている『Miss You』です。
アーティスト名:ザ・ローリング・ストーンズ
アルバム・タイトル:サムガールズ
AH-D5200で聴いてみると、ロックバンドならではのドライブ感と、てらいのない荒々しさ、そして彼らのロックバンドの王者らしいサウンドのまとまりが強く感じられます。
また、ある意味でのスタジオ的な密室感というか、飽和感が他のヘッドホンより堪能できる気がします。
中央に定位しているミック・ジャガーのボーカルの存在感にも際立ったものが感じられました。
中音の伸びがいいのかもしれません。
AH-D5200にはある種の押しの強さがあるのか、ロックバンドサウンドに向いている気がしました。
ヘッドホン専門店である「e☆イヤホン秋葉原店」のカイヤさんはデスメタルの曲を試聴で使うそうですが、カイヤさんがAH-D5200を高く評価してくださった理由がわかる気がします。
「e☆イヤホン秋葉原店」のカイヤさんのインタビューはこちら
Professional's choice 「e☆イヤホン」 AH-D5200
またパワー感のある締まった低音が楽しめそうだったので、EDM系のサウンドも聴いてみました。
アーティスト名:Perfume
アルバム・タイトル:TOKYO GIRL
この曲のイントロで無音から急に「ドーン」と鳴るエフェクティブなドラムの重低音や、曲中のうねりのある低音のシンセベース、高音のキラキラしたシンセのシーケンスのフレーズなどが高い明瞭度で再生します。
AH-D5200のサウンドのタイトさ、そしてスピード感のあるアタックは、EDMのリスニングにも向いていると思いました。
↑AH-D5200に付属の4N OFCケーブル
またケーブルもAH-D9200、AH-D7200、AH-D5200はそれぞれ違います。
いずれもリケーブルが可能な着脱式ですが、AH-D5200には4N OFC(99.99% 無酸素銅)を導体に用いたケーブルが付属しています。
ステレオミニプラグに標準プラグアダプターがついているので、スマホなどに接続する時も変換プラグは不要です。
豊潤でゴージャスな響きのAH-D7200
次はAH-D7200を試聴します。
AH-D9200が発売されたことでデノンのフラッグシップモデルの座は譲ったものの、2016年にデノンヘッドホンのフラッグシップモデルとして発売され、高い評価を得ているモデルです。
まずは共通で聴いている音源、ドナルド・フェイゲンの『ナイトフライ』を聴いてみました。
AH-D7200はすでにデノンブログでも何度がとりあげており、編集部Iも何度か試聴もしているので馴染みのある音ですが、締まってクリアなサウンドのAH-D5200と比べると、非常にゴージャスで重厚なサウンドだと感じました。
コシがあって重心の低い、ゆったりとした音で、まるで座り心地のいいソファーにどっしりと座ったような落ち着き感。音域的には高音も中音もしっかり出ている上で、低音がやや強めに感じます。
AH-D7200の豊潤な鳴りを楽しむなら、と思い、日頃から愛聴している坂本龍一の『BIBO NO AOZORA』を聴いてみました。
この演奏はバイオリン、チェロ、ピアノの三重奏で演奏されていますが、冒頭部のチェロの豊かな低音とバイオリンの高音、そして中音域でのピアノのメロディがとても美しくそしてバランスよく再現されており、それらの響きが混ざり合った豊潤な空気感と、音の艶、色気を感じます。
やはりAH-D7200は、デノンらしい低音の深みと豊かさ、そしてゴージャスでリラックスできる音色だと言えるのではないでしょうか。
帯域としては高域まで低域までをカバーしつつ、やや低域に粘りとコシを感じる音色です。
またプラグとケーブルのクオリティもAH-D7200は非常に高く、7N OFC(99.99999% 無酸素銅)を導体に用いたケーブルが付属しています。
またプラグは削り出しのアリミスリーブで高い耐久性も備えています。
音楽信号を高い純度で伝送できるケーブルのクオリティの高さもAH-D7200の音質に重要な役割を果たしています。
↑AH-D7200に付属する7N OFCケーブルとプラグ
圧倒的な空間感と解像度のAH-D9200
そして最後に登場するのが、デノンヘッドホンの新たなハイエンドヘッドホン、AH-D9200。
ハウジングには前述のとおり高知県産の孟宗竹が使用されており、「うづくり」という手法を用いることで、ご覧のように木目に沿った凹凸がある、ハイエンドの名に相応しい、非常に高級感溢れるヘッドホンです。
では音を聴いてみましょう。
共通で聴いている音源、ドナルド・フェイゲンの『ナイトフライ』をまず聴いてみました。
AH-D9200、AH-D7200、AH-D5200を何度か繰り返して比較試聴しましたが、AH-D9200のクリアさ、明瞭度、解像度の高さには驚きました。
一つ一つの楽器の音の表情が非常によく聞こえます。
また楽器の音だけでなく空間感もあるため、結果として音場が広く、一つ一つの楽器音がよく分離して綺麗に聞こえます。
このあたりは恐らく孟宗竹ハウジングの貢献が高いのではないかと感じました。
というのも、孟宗竹は軽量性と適度な剛性、そして非常に優れた振動吸収性を併せ持つ素材だからです。
AH-D9200を装着したままハウジングを指で弾くとそれが良くわかります。
また弾いた音が全く尾を引かずにすぐに減衰していきますが、このあたりが優れた制振性を示しているのでしょう。
高品位な高知産の孟宗竹を、優れた加工技術により、いったん炭化寸前まで乾燥させてから積層して削り出したというハウジングは、AH-D9200をデノンの新たなハイエンドモデルたらしめています。
この音場感を味わうなら、と思って選んでみたのが、これまたお気に入りの一枚、マイケル・フランクスの『アート・オブ・ティー』です。
アーティスト名:マイケル・フランクス
アルバム・タイトル:アート・オブ・ティー
このアルバムは1975年の作品で、クルセイダーズのメンバーをバックに従えた、ジャジーなポップス、つまりAORの元祖となったアルバムです。
特にラリー・カールトンのギターが素晴らしくて何度も聴いてきましたが、AH-D9200で聴く広がり感、空間感は素晴らしいです。
また解像度も高く、ラリー・カールトンのギターの微妙なチョーキングのニュアンスや、弦の擦れる音、そしてリバーブ感までが鮮やかに表現されています。
このアルバムは凄腕のジャズマンたちが一発で録音したような、スタジオライブ感が感じられるアルバムですが、ヘッドホンをしていると、まるでそのレコーディングスタジオに居合わせているような気になるほどのリアリティでした。
↑AH-D9200にはデノンサウンドマネージャー山内のサインとシリアルナンバーが添えられる
もう一点、AH-D9200を試聴して感じたのが装着性の良さです。
まず重量ですが、AH-D7200、AH-D5200は385gなのに対し、AH-D9200は375g(いずれもケーブルを除く)。
この10gは比較してみると数値以上の体感があり、聴き比べているとAH-D9200は「軽いな」と感じます。
また側圧もAH-D9200は軽い分だけ少し緩く設定されているようで、締め付けをあまり感じません。
低反発のイヤーパッドとあいまって、このヘッドホンなら何時間していても快適だな、と感じました。(実際筆者はAH-D9200で2時間以上試聴してみましたが快適でした)。
さて、AH-D9200のケーブルですが、こちらは2種類が付属。
1本は音に徹底的にこだわったもので、OFC(無酸素銅)線に対し最も導電率の高い金属である純銀でコーティングしたシルバーコートOFC を使用したもの。
もう1本はOFC(無酸素銅)線で、AH-D5200と同様にステレオミニプラグに標準プラグアダプターが付属しています。
↑AH-D9200に付属するシルバーコートOFC ケーブル。OFC線が伝導率の高い純銀でコーティングされている
AH-D9200 スペシャルムービーもぜひご覧ください。
タイトなAH-D5200、ゴージャスなAH-D7200、スペーシャスなAH-D9200
最後に比較試聴した感想を、簡単にまとめておきましょう。
AH-D5200は硬いゼブラウッド使用しているだけあって、音はソリッドでタイト。まとまりがあり、スピード感があります。
ロックや電子音系のサウンド、またアニソンやメタル系など音圧の高いサウンドにマッチするのではないでしょうか。
AH-D7200は、伝統のデノンサウンドを受け継いだ重心の低い、どっしりとしたゴージャスなサウンドで、どんなジャンルの音楽にもマッチするオールマイティさを持っています。
アコースティック系のサウンドや、再生帯域の広いフルオーケストラなど大人数の演奏などで特に魅力を発揮するのではないでしょうか。
AH-D9200は、孟宗竹という軽量・剛性・制振性において理想的の素材を使うことで、近年のデノンのHi-Fiのサウンドコンセプト「スペーシャス」「ヴィヴィッド」をヘッドホンでも実現させたモデルです。
そのコンセプトどおり、ヘッドホンで試聴していることを忘れてしまうほどの空間感があります。また解像度も今まで体験したことがないくらいの高さでした。
私感ですが、音の方向性としては、AH-D7200はデノンサウンドの集大成的なイメージを感じましたが、AH-D9200とAH-D5200はよりスペーシャスで高解像度な新しいデノンサウンドを志向していて、音の方向性が近いと感じました。
↑音の傾向が似ていると感じたAH-D5200(左)とAH-D9200(右)
というわけで、編集部によるAH-D9200、AH-D7200、AH-D5200の試聴はいかがでしたか?最後に本記事の感想はすべて、編集部Iの個人的な感想、見解であることを申し添えておきます。
ヘッドホンは装着感はもちろんですが、音質の印象も個人によってかなり異なります。
ヘッドホンに興味をお持ちの方は、ぜひ店頭や試聴会、イベントなどで実際にお手にとっていただき、そのウッドの質感や音質の違いをお確かめいただきたいと思います。
(編集部I)