「デノンオリジナル・サウンドチェックディスク」レコーディングレポート
デノンのレコードプレーヤー「DP-400」または「DP-450USB」を買うともれなく全員にサウンドチェック用のEPレコード「デノンオリジナル・サウンドチェックディスク」をプレゼントするキャンペーンが始まりました。このレコードには日本のポストロックバンドの旗手である「toe(トー)」のドラマー柏倉隆史氏によるドラムソロと、toeのサポート・キーボーディスト中村圭作氏とのセッション「trace a ripple」の2曲が収録されています。今回はこのサウンドチェックディスクのために行われたレコーディングの様子をレポートします。
今回実施される「デノンオリジナル・サウンドチェックディスク・プレゼントキャンペーン」は、2018年10月18日(木)から2019年1月7日(月)までの期間中、レコードプレーヤー「DP-400」または「DP-450USB」をお買い上げくださった方に、もれなくサウンドチェック用EPレコード「デノンオリジナル・サウンドチェックディスク」をプレゼントするというものです。
詳細はキャンペーンページをご覧ください。
このレコードには日本のポストロックバンドの旗手「toe(トー)」のドラマー柏倉隆史氏によるドラムソロ「PHENOMENON:1」と、toeのサポート・キーボーディスト中村圭作氏との未音源化セッション「trace a ripple」の2曲が収録されました。
いずれもこのためだけに録り下ろされた音源です。
またレコーディングにはtoeのギタリストであり、レコーディングエンジニアとしても活躍している美濃隆章氏が協力。
ポストロックファンなら、この音源のためにレコードプレーヤーを買っても不思議ではないほどのバリューのある音源となりました。
また音源だけでなく、アナログレコードそのものも、サウンドチェック用のディスクとして非常にこだわった、とても高品質な音に仕上がっています。
まずレコード制作はアナログレコード制作に関し長い伝統を持ち、高い評価を得ている日本コロムビアが制作。(ちなみにデノンは日本コロムビア株式会社の電機部門が分離独立した会社です。)
そしてメディアとしては音が良いといわれている重量盤のA面、B面にそれぞれ各1曲を収録。
しかもカッティング方法としてはコロムビアとしても約40年振りとなる「ハーフスピードカッティング」という音質を重視した方式を採用。
ハーフスピードカッティングとは半分のスピードでカッティングをする手法で、高いノウハウと手間を必要とする手法ですが、じっくりとカッティングをすることで音溝を正確に刻むことができ、高品質なアナログレコードを制作できます。
さらにレコードに添えられるライナーノーツはオーディオ評論家の小原由夫氏が担当。
スタジオでの録音に立会い、日本コロムビアのエンジニアへのインタビューを実施。
いち早くラッカー盤を自宅で試聴した小原氏による臨場感あふれる解説は必読の一文です。
↑「デノンオリジナル・サウンドチェックディスク」のジャケット
対象商品
レコードプレーヤー
DP-450USB
レコードプレーヤー
DP-400
DP-400、DP-450USBのスペシャルサイト公開中。ぜひご覧ください。
プロフィール
●柏倉隆史
過去にはREACHのドラマーとして、現在はtoeやthe HIATUSのメンバーとして活動中。
またバンド活動と並行し、サポートドラマーとして、木村カエラ、ACO、SUEMITSU & THE SUEMITH、コトリンゴ、黒木渚、といったミュージシャンのレコーディング、ライブに参加している。
その超絶かつエモーショナルなドラムは、ジャンルを超えて様々な方面から支持を集めている。
●中村圭作
鍵盤担当バンドマン。界を皮切りに現在まで、kowloon、stim、toe、WUJA BIN BIN、ホテルニュートーキョー、田我流とカイザーゾゼ、☆.A/NAOITO等の数多くのバンドに所属し国内および欧米アジア各国でライブを行っている。
最近ではリズムマシン、サンプラーを駆使したソロパフォーマンスや會田茂一とのユニットmulletの活動も精力的に行っている。
CM楽曲制作他、木村カエラ、つるの剛士等アーティストのライブサポート、サウンドプロデュースなど、メジャーインディーズ問わず様々なシーンに神出鬼没。
●美濃隆章(ミノタカアキ)
1974年生まれ、神奈川県出身。toeのギタリストとして活動中。
またエンジニアとして、toeのほかクラムボン、mouse on the keys、ゲスの極み乙女。、ジェニーハイ、Charaなどのレコーディング、ミックス、マスタリングでその手腕を発揮している。
さらに音楽レーベルMachupicchu INDUSTRIASを主宰し、toeやmouse on the keysの音源をリリースしている。
レコーディングPhotoレポート
↑録音は2018年8月28日、東京・世田谷の「Studio Sound DALI」のStudio Aで行われた。
↑ドラムのマイクをセットアップする美濃隆章氏。toeのギタリストである美濃はレコーディングエンジニアの顔も持ち、今回のレコーディングの録音を担当した。
↑マイクがセットアップされた柏倉隆史氏のドラム。 ドラムは柏倉が愛用する「CANOPUS」。
↑バスドラムの音を収録するために、ノイマン、シュア、そしてバスドラム専用マイクであるサブキックと合計3種類のマイクが用意された。
↑シンバル類に林立するマイクスタンド。ドラム用に設置されたマイクはアンビエンス用も含めて合計16本にも及んだ。
↑演奏者側からのアングル。スネア、ハイハットの左側にもフロアタムが設置されている点がユニーク。スネアドラムの打面の上にタムにキーホルダーで固定されたキーの束が置かれている。音質的な効果を狙っているのだと思われる。
↑中村圭作氏は専用のピアノブースに設置されたヤマハ製のグランドピアノを演奏。グランドピアノの音の収録にはオンマイク(ステレオ)とアンビエンスマイク(ステレオ)の計4本が使用された。
↑音決めをしながらマイク位置を細かく調整する。ピアノのマイクはレコーディングの序盤で交換された。
↑レコーディングはB面に収められた柏倉氏+中村氏デュオ曲「trace a ripple」からはじまった。圧倒的な技術と高い集中力でレコーディングは快調に進められていく。
↑複雑なドラムパターンをパワフルかつ縦横無尽に奏でる柏倉隆史氏。
↑楽譜を埋め尽くすようなアルペジオをグランドピアノで悠々と弾きこなしていく中村圭作。
↑「trace a ripple」のスコアには溢れるほどのアルペジオの音符が踊っている。
↑演奏を聴きながら細かく音質調整を行うエンジニア担当の美濃氏。演奏している柏倉、中村だけでなく、コンソール側にいる美濃氏も含めて、今のテイクを生かすかどうか、などといった音楽的な判断を瞬 時に行いながらテイクを重ねていく。
↑録音した演奏のプレイバックを聴く美濃氏と柏倉氏。たった今演奏したテイクを聴きながらリアルタイムでどの部分を使用するか、どの部分を録り直すか、などをスピーディーに決めていく。そのやりとりには音楽的に深い信頼関係が感じられた。
↑プレイバックを聴く中村。ピアノの音色はマイクを交換したことで劇的に音のヌケが良くなった。
↑ドラムソロの「PHENOMENON:1」は全くの即興で行われた。こちらは楽譜が一切ないため、やり直しはきかない。高い集中力と音楽性が要求される。
↑複数回のテイクをレコーディングしたが、すべて完全な即興のため、それぞれ内容が異なるテイクとなった。そこから「PHENOMENON:1」となるテイクが選ばれてミキシングが行われた。
ラッカー盤試聴レポート
↑レコーディング後、1ヶ月を経た9月の終わり頃、アナログ盤をプレスするためのラッカー盤が仕上がった。柏倉隆史氏、中村圭作氏を招き、D&M本社デノン試聴室でラッカー盤の試聴を行った。
↑こちらが仕上がったラッカー盤。 ラッカー盤自体はLPサイズの30cmだが、仕上がりが7インチのシングル盤サイズなので音溝もシングル盤サイズの部分にだけにある。
↑ここに音が刻まれているのか、とラッカー盤に刻まれた音溝を見つめる中村氏。
↑試聴を始めるとアナログ盤ならではの音の良さに両名から「すごいね!」と驚きの声が上がる。
↑何度も試聴を繰り返して音を確かめる柏倉氏。再生用のレコードプレーヤーにはキャンペーン対象モデルであるDP-400が使われた。
↑マスタリング用に使用されたデジタルデータとも比較試聴。「デジタルはスタジオで聴いていた音。アナログもデジタルも両方それぞれ面白い」と中村氏。
「家で聴くならアナログのほうが好きですね」と柏倉隆氏。確かにデジタルのほうが帯域は広いが、アナログレコードならではの艶や迫力を生むコンプレッション感は音楽的に大きな魅力だ。
↑ラッカー盤の試聴を無事終えて。左端は柏倉氏、右端は中村氏。中央は今回のオリジナルサウンドチェックディスクの企画者でもあるデノンの宮原利温。
今回レポートした「デノンオリジナル・サウンドチェックディスク」は、ここでしか聴けない、という音源しての希少な価値と高い作品性、そして日本コロムビアが培ってきたアナログレコード制作の粋を集め、レコードとしての音の良さを徹底的に追求した貴重なアナログ盤となりました。
本作品は残念ながら非売品であり、このキャンペーンでしか入手できませんが、この1枚のためにレコードプレーヤーを買ってもいいかも、と思えるほどの出来栄えだと言えるでしょう。
オーディオイベントなどで試聴の機会がありましたら、ぜひ御一聴ください。
(編集部I)