イヤーチップについてComply™ の塩崎さんに聞きました。
イヤーチップには様々なタイプのものがあります。今回はイヤーチップについて、デノンのインイヤーヘッドホンでも採用しているイヤーチップのブランドComply™ の塩崎さんをお招きし、イヤーチップについて、そしてComplyについてのお話をうかがいました。
●本日はお越しいただきありがとうございます。今日はイヤーチップについていろいろお話を聞かせてください。まずイヤーチップが注目されるようになったのはいつ頃からでしょうか。
塩崎: 7、8年くらい前からでしょうか。それまではほとんど注目されていなくて、イヤーチップはとれて無くしてしまったら買うもの、という存在でした。
最近は量販店でもイヤーチップだけのコーナーもでき、注目度もずいぶん上がってきました。
ただし、まだまだイヤーチップを替えると装着感や音質が向上することをご存知ない方は多いと思っています。
●イヤーチップが注目を集めたのはなぜでしょうか。
塩崎:以前から海外のメーカーさんはComplyを採用していただいていましたが、7年ほど前、国内のメーカーで最初にComplyを採用いただいたのがデノンさんでした。
その後だんだん他の日本のメーカーさんにも採用していただけるようになり、Complyを使ったことがある方が増えたことで、イヤーチップの良さが拡がってきたのではないかと思っています。
株式会社エントリージャパン 営業部長 塩崎康史さん
●イヤーチップの種類にはどんなものがあるのでしょうか。
塩崎:シリコン、低反発のポリウレタンの2種類ですね。一般的なイヤーチップはほとんどシリコンで、サイズや形状はいろんなものがあります。
そしてもうひとつはComplyのような低反発のポリウレタンフォームのものがあります。素材に関してはこの2種類がほとんどですが、一部表面がシリコンで中が低反発ウレタンというハイブリッドタイプのものもあります。
●シリコンと低反発ポリウレタンの違いはどんな点でしょうか。
塩崎:低反発ポリウレタンはシリコンと比べると非常に柔らかな素材で耳にフィットします。
ただ、その反面柔らかいので痛みやすく寿命が短いのが欠点です。Complyだと3ヶ月ぐらいを目途に交換してください、と言っています。
一方のシリコンはポリウレタンフォームより硬くて丈夫ですが、耳に入れたときの変形量が少ないため、自分の耳にあったサイズを選ばないと音漏れがしたり、音が籠もったり、装着感が悪くなる場合があります。
ですからサイズはしっかりと選んだ方がいいと思います。
●イヤーチップはサイズが大切なのでしょうか。
塩崎:サイズがとても重要です。小さすぎると耳の穴に隙間ができて音漏れしてしまいますし、大きすぎると音の通り道の穴が潰れてしまいますので、音が籠もってしまいます。
また大きい場合は耳への圧迫感や暑苦しさも生まれます。Complyにもサイズがありますが、私の経験ですと日本人の耳であれば、ほとんどの方がSかMでいいと思っています。
時々Complyの評価で「高域が出ない」とおっしゃる方がいらっしゃいますが、おそらくお使いのイヤーチップが大きすぎるのかもしれません。
適正なサイズのイヤーチップを使うことが大切なのは、シリコンにしてもポリウレタンフォームにしても同様です。
↑AH-C820Wに同梱されているシリコン製のイヤーチップ。L、M、Sの3サイズに加えて、今回からロングタイプのMとSの5タイプが用意された
世界で80以上のメーカーで採用されているComply
●多くのインナーイヤーヘッドホン愛好家がComplyのイヤーチップを愛用しています。なぜComplyはこれほど人気があるのでしょうか。
塩崎:Complyのイヤーチップは今、デノンをはじめ世界80以上のメーカーに採用していただいていますが、その特徴はまず素材で、シリコンの約30倍の柔らかさを持つ独自開発の「低反発ポリウレタン」を採用している点です。
この素材は体温によって柔らかくなるため、どんな耳の穴の形でもフィットします。しかも低反発の素材なので圧迫感が少なく、長時間使用しても耳が痛くなりにくく、快適な装着性を実現しています。
↑AH-C820W用のComplyイヤーチップ
●確かにComplyのイヤーチップは装着感が非常に快適です。
塩崎:低反発ポリウレタンは耳の穴の中の広範囲な部分に柔らかくフィットするので、装着感がよく音漏れも少なくなります。
また遮音性が高く外部の騒音もシャットアウトできるので、音量をさほど上げなくても音楽が明瞭にきこえます。
ですから不必要に音量を上げる必要がありません。たとえば地下鉄など騒音が多い環境にでも、Complyならいつもより小さめの音量でも十分に音楽が楽しめます。
ですから装着性だけでなく、音量の面でもComplyは耳に優しい、と言うことができると思います。
●Complyを使うと音質も向上するのでしょうか。
塩崎:Complyは密着度が高いので「低音が強調される」「低域が増す」などと言われることがありますが、実際は低音だけではなく、高音も含めた全ての帯域が明瞭になります。
音質が向上するというより、ヘッドホンのユニットの音がそのまま出てきます。
ただしそれまでシリコンのイヤーチップで聴いていた方からすると低音が強く感じられるかもしれませんし、また、先ほど申し上げたようにComplyをお使いの方でも大きめのサイズを使われていると音の出口が潰れて高音が籠もる場合があります。
ですから我々としても「正しいサイズでお使いください」とお伝えしています。
↑デモ用のケースに入った様々な種類のComply
●Complyにはスポーツなどのシリーズがありますが、これはどのように違うのでしょうか。
塩崎:耳垢やホコリ、汗からイヤホンを守るガード機能をもったシリーズがあります。
これらは中に耳垢や汗がヘッドホン内部に入らないようになっていてヘッドホン本体の故障を防ぎます。また汗などを吸い取って外に逃がす機能もあります。
デノン専用にカスタムメイドされたAH-C820W用Comply
●デノンのAH-C620R、AH-C720、AH-C820、そして新製品のワイヤレスインイヤーヘッドホンAH-C820WにはComplyのイヤーチップが付属しています。そのイヤーチップについてお聞かせください。
塩崎:はい。これらのモデルにはデノンのためにカスタムメイドされたComplyが付属しています。
タイプとしては先ほどご説明したスポーツタイプとなります。
市販のものはステムの径が200から600まで幅広く対応するのですが、付属のものは径がデノンの径である400になっており、芯のサイズをぴったり合わせてあります。
↑AH-C820Wは購入時にComplyが装着されている
●スポーツタイプということは汗ガードがついているんですね。
塩崎:はい。まず汗の侵入を防ぐ汗ガード、それからコーティングにも汗に強いものが採用されています。
特に新製品のAH-C820Wはワイヤレスですから、音楽を楽しむシーンとして通勤・通学だけでなく、例えばジムでトレーニングなどをされるときでも使うケースがあると思いますが、そんな用途にも対応しています。
↑AH-C820WのComplyはスポーツタイプ。青色部分が汗ガード
ワイヤレスインイヤーヘッドホン
AH-C820W
2018年12月中旬発売予定
AH-C820Wの詳細はこちらをご覧ください。
塩崎さんはComplyを国内で初採用した銘機、AH-C710を愛用
●塩崎さんはデノンのインナーイヤーヘッドホンを愛用されているそうですね。
塩崎:今日も持ってきました。もうかれこれ使い始めて7年もたちますが、AH-C710というモデルを使っています。
日本国内でComplyを最初に採用していただいたモデルでもあって、個人的にとても思い入れがあります。
●AH-C710はどんなところが気に入っていますか。
塩崎:そうですね。僕はジャズをよく聴くのですが、このインナーイヤーヘッドホンはジャズには本当によく合っていると思います。
ジャズを聴くにはもってこいの、温かみのある音が出ます。しかもダイナミック型でこれだけ音域も広く出すのは、やはりデノンならではですね。
↑Complyが装着されている塩崎さんの私物のAH-C710
●最後にインナーイヤーヘッドホンを使っている方々に、メッセージをお願いします。
塩崎:イヤーチップは、いちばん手軽で、しかも聴き心地や装着感を大きく帰ることができるカスタマイズの方法です。
ぜひComplyをはじめ、いろいろなイヤーチップをお試しいただき、ご自分にいちばんマッチするイヤーチップを見つけてください。
そしてよりいい音で、より快適に、音楽を毎日楽しんでいただきたいと思います。
●本日はありがとうございました。
(編集部I)