
山内セレクションLIVE! 2018 TIAS編

Hi-Fiオーディオの祭典、東京インターナショナルオーディオショウが去る11月16日〜18日の3日間、東京国際フォーラムで開催されました。デノンブースの様子は前回レポートしましたが、今回はデノンブースで開催された公開取材『山内セレクションLIVE』の様子をレポートします。
デノンブログの人気企画「山内セレクション」ですが、今回は初めてデノンの試聴ブースから飛び出しました。開催場所はデノンブースの試聴コーナー。今回始めて披露されたコンセプトモデル「MODEL X」を使いながら、大勢のお客様の前での公開取材となりました。
↑今回の試聴システムはこちら。オーディオラックの左端が2500NEシリーズのCDプレーヤーとプリメインアンプ、そして中央がコンセプトモデルのMODEL XのCDプレーヤーとプリメインアンプ
まずは2500NEシリーズで試聴開始
●(会場のみなさんにむかって)今日はようこそいらっしゃいました。山内セレクションはいつも、デノンの試聴室で、贅沢にも私(編集部I)がいい音楽を独り占めしていますが、今回はデノンブースでお客様といっしょに、山内さんが選んだいい音楽を楽しめることになりました。いわゆる公開取材です。みなさんよろしくお願いします。山内さん、今日の山内セレクションはどんな感じになるでしょうか。
山内:はい。今日はまずNEシリーズの中核モデルである2500NEシリーズで何曲か聴いていただいて、その後で今回発初お披露目となるMODEL Xを使って試聴したいと思います。
●ちなみにMODEL Xとはどんなものでしょうか。
山内:私がサウンドマネージャーに就任してから手掛けたのがNEシリーズですが、新しいデノンサウンドとして「ヴィヴィッド」「スペーシャス」をキーワードにサウンド作りをしてきました。今回のMODEL Xはその集大成としての役割を持ったものです。したがってまだ製品化の計画はありませんが、今現在デノンの持てる技術をすべて投入して「ヴィヴィッド」「スペーシャス」をより磨き上げたものとなっています。
●それは楽しみです。ではまず2500NEでの試聴からお願いします。まずはどんな曲からいきますか。
山内:まず諏訪内晶子さんのバイオリンで、ボカリーズを聴きましょう。
●このボカリーズはバイオリンとピアノですね。
山内:はい。このアルバムは録音が素晴らしいので、音質評価の際のリファレンス音源のひとつとして使っています。諏訪内さんの楽器はバイオリンの銘器中の銘器、ストラディバリです。ストラディバリには個体ごとにニックネームがつけられていて、諏訪内さんのお使いのものはドルフィンという楽器です。
これはストラディバリのなかでも三大銘器とされていて、あのハイフェッツが使用していたものだそうですが、音色や響きの豊かさも素晴らしいのでご堪能いただきたいと思います。バイオリンはボーカルと帯域的に近いので音質をチェックするのに向いています。ボーカルのほうがわかりやすい点もありますが、バイオリンはビブラートや倍音がどのように表現できるかも鍵となります。そのあたりをぜひ聴いていただきたいです。
●(試聴後)2500NEシリーズの表現力は素晴らしいですね。空間感がよく味わえました。
山内:ありがとうございます。2500NEはスペーシャスな表現がしっかりできていると思います。特にピアノとバイオリンの楽器の分離感、楽器の前後関係、距離を持って定位する、といったところを重要視して聴いています。では次にいきましょう。
●では引き続き2500NEシリーズで次をお願いします。
山内:フランスのボーカリストでカミーユ・ベルトという方です。今年セカンドアルバムが出たばかりの方ですが、特長は管楽器のように声が出るところで、たとえばジョン・コルトレーンの難曲「ジャイアント・ステップス」なども歌いこなしています。
もう自由自在に声を操れる人で、しかもこの人はフランス語で実に歌詞を上手く載せるんです。リズムも面白くて、オンビートだけでなく、浮遊したビートになったり、また戻ったりと自在で、爽快です。そのあたりを味わってください。
アーティスト名:CAMILLE BERTAULT
アルバム・タイトル:Pas De Geant
●2500NEシリーズの素晴らしさが味わえる爽快なナンバーですね。歌の力がすごいですね。
山内:「ヴィヴィッド」さが味わえたと思います。これがどう進化したか、それはMODEL Xの時に楽しみにしてください。その前にもう1曲、2500NEで聴いてください。クイーンです。
●いま映画が話題のクイーンですね、どの曲ですか。
山内:初期の曲で「You Are My Best Friend」をハイレゾ音源で聴いてください。
●やっぱりクイーンはカッコイイですね。ロックサウンドでも、いろんな音が生々しく表現されていると思います。
山内:個人的にはクイーンの良かった時代という気がしますね。録音が特に良いという訳ではありませんが、バンドとしての勢いの良さ、サウンドの一体感がよく感じられると思います。
そしてついにMODEL Xを使って試聴!
●それではいよいよ、でしょうか。
山内:ではMODEL Xの音をお聞きいただきます。曲ですが、最初はマイルス・デイビスの「IN A SILENT WAY」を聴いてください。マイルスは60年代の後半にバンドが電気化して、音も複雑になってきますが、彼は音楽的なスペースをより広げたかったのではないかと思っています。
その音楽的な「スペース」とオーディオの「スペーシャス」には共通点があるのではないか、と思っています。この曲でのギターはジョン・マクラフリンですが、ピアノとは違う透明感のある背景の作り方、そしてその空間感を生かしたマイルスのプレイ、といったあたりをMODEL Xで聴いていただきたいと思います。
アーティスト名:マイルス・デイビス
アルバム・タイトル:IN A SILENT WAY
●(試聴後)素晴らしい音ですね。確かに音楽の空間が鮮やかに描かれていると思います。そしてその音楽的な空間を生かして登場するマイルスのトランペットの千両役者感というか、存在感がすごいですね。初めてMODEL Xの音を聴きましたが、音像がとてもクッキリしていると思います。このコンセプトモデルでめざしているのはどういうことなのでしょうか。
山内:さきほど「ヴィヴィッド」「スペーシャス」を追求したと言いましたが、それはオーディオとしての目標であって、なぜそれらが必要かというと、結局は音楽に没頭するためなんです。音楽により深くはいってく、音楽性といったレベルにまで深く入り込みたい、そういった思いがMODEL Xの開発のコンセプトの根幹にあります。
●開発レベルではどんなことをすると「ヴィヴィッド」「スペーシャス」を極めることができるのでしょうか。
山内:まずはオーディオとしての性能、たとえばアンプであればアウトプットするパフォーマンスそのもののクオリティを高めると獲得されていくのだと思っています。今回のMODEL Xでも具体的にはパーツレベルで新しい物を開発しています。
ですから非常に時間がかかってしまっていて、2年近く前から開発を始めていましたが、やっと今回のTIASをターゲットに仕上げられました。
↑プリアンプMODEL X。コンセプトモデルであるためモデル名が刻印されていない
●なるほど。では次をお願いします。
山内:今度はクラシックのピアノを聴きましょう。ユジャ・ワンのピアノです。この方はステージ衣装がとても華やかでセクシーなのですが、ピアノの演奏も実に鮮やかでヴィヴィッドです。メリハリがあって起伏があって緊張感があって素晴らしいです。そのあたりをMODEL Xでお楽しみください。
アーティスト名:ユジャ・ワン
アルバム・タイトル:FANTASIA
●(試聴後)素晴らしいテクニックですね。ピアノの音が非常に鮮やかに表現されていたと感じました。
山内:ジャズとクラシックを聴いていただいたところで、今度はハウスミュージックを聴いてください。
●ハウスですか!
山内:私は『クラシックからブレイクビーツまで』というフレーズをつけていまして。まぁ、今初めて言ったんですけど(笑)。それでハウスもぜひ聴いていただきたいと思います。Mr.フィンガーズといってベテランですね。ハウスミュージックといってもかなりアダルトなサウンドです。
●聴きどころはどんなところでしょうか。
山内:実はクラシックと電子音楽の再生の音楽は、一見違うようで、かなり似たところがあります。クラシックの場合、オーケストラであれば楽器群の編成や並びが決まっていますが、それが聴感上くっきりするとスペーシャス、つまりサウンドスペースを感じることができます。
電子音楽の場合、作り手が自分が好きなように音を配置していくわけですね。サウンドスケープという言葉がありますが、音の風景というか。楽器の動き、音源の点在のしかたといったあたりを楽しんでいただきたいと思います。
アーティスト名:Mrフィンガーズ
アルバム・タイトル:セレブラル・ヘミスフィアーズ
●(試聴後)オーケストラとは違う、アニメというかCGというか、デザインされた音の空間ですね。いろんな音が出てくる感じがしました。非常に音が明瞭に空間に描かれていますね。初めて聴いたタイプの音楽ですが、とても面白かったです。さすが山内セレクションです。
山内:「スペーシャス」とかサウンドステージは、いろんな音楽に通じますからいろんなジャンルの音楽を楽しみながら聴いていただけるといいと思います。次は歌ものを聴いてください。
●どんな歌でしょうか。
山内:ニールセン・チャップマンという女性ボーカルです。これは90年代の中盤の録音ですが非常にいい音で録音されています。この頃の録音がCDの音質ではピークだったのではないかと思います。アナログレコーディングでは82年ぐらいのピーター・ガブリエル、ポリスなども非常に音が良いです。同じようにこの頃のCDの録音技術もすでに頂点に達していたのではないでしょうか。
その後90年代の中盤以降になるとパソコンをベースとした録音、カット&ペーストができるようなものになって、ソースによっては、とてもクリアですが再生すると少し平板になってしまうものもあります。MODEL Xは音が良く、ボリュームを上げてもうるさくないので、少し大きめに再生してみましょう。
アーティスト名:ベス・ニールセン・チャップマン
アルバム・タイトル:ユー・ホールド・ザ・キー
●(試聴後)ボーカルやギターが素晴らしい音だと思います。それと自然な低音が非常に豊かに出ていると感じました。わざとらしい低音ではなく、自然な低音ですね。
山内:フラットにすることで、低音や高音が無理なく自然に出てくるようになります。ですから音が柔らかいという印象になるのだと思います。残念ながらそろそろお時間となりました。最後に囁くようなボーカルの曲を聴いてください。リンダ・ロンシュタットの「ウィー・ウィル・ロック・ユー」です。
アーティスト名:リンダ・ロンシュタット
アルバム・タイトル:愛の贈りもの
●(試聴後)これはクイーンの曲のカバーですが、リンダ・ロンシュタットの囁くような声のコーラスが非常に面白いですね。最後に山内さんに一言うかがいます。MODEL Xは今、音作りとしては何合目ぐらいでしょうか。
山内:9割がたはできていると思います。ただ今後もっと煮詰めていきながら、製品化を目指したいと思っています。ですから製品化までには、この状態から100まで、そしてさらに120%、150%と、完成度を上げて仕上げていきたいと思います。
●今日はこのイベントの試聴時間をお借りし、初公開のMODEL Xのサウンドを公開取材というかたちで、みなさまといっしょに楽しむことができました。山内さん、そして今日いっしょにご試聴いただいたお客様のみなさま、ありがとうございました。
↑試聴後、MODEL Xについてお客様から山内さんにたくさんの質問が寄せられました
(編集部I)
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