イマーシブサウンドについて
最近ホームシアターに関連した記事で「イマーシブサウンド」という言葉をよく目にします。これまでのサラウンドとはどう違うのか、どんなところが特長なのか。今回はそんな素朴な疑問に対し、営業企画室の志田鷹平がズバリとお答えいたします。
今回のナビゲーター 国内営業本部 営業企画室志田鷹平
イマーシブサウンドとは三次元(立体)音響のこと
●志田さん、最近よく「イマーシブサウンド」という言葉を聞きますが、これはズバリどういう意味なのでしょうか。
志田:イマーシブ(immersive)とは「没頭させるような」という意味です。オーディオの世界で「イマーシブサウンド」と言えば、縦・横・高さまで含めた全方向からリスナーを包み込む3次元音響、立体音響のことを示します。
●その3次元音響、立体音響とはどういうものでしょうか。
志田:ラジオのようにスピーカーが1個だけの音源、これが「モノラル」です。そしていわゆる「ステレオ」は、右チャンネルと左チャンネルの2つのスピーカーで構成される音場です。
これは図のように2点から音が鳴るため、音が左右に拡がります。これが1次元。これに加えて後方にもスピーカーを置くのが、いわゆるホームシアターの「サラウンド」です。ステレオの左右に加えて前後の表現ができるようになるので、これが2次元です。そして次に上方向にスピーカーを増やします。これで左右・前後に加えて高さが表現できるようになります。これが3次元音響、立体音響であり、いわゆる「イマーシブサウンド」です。
●なるほど、ステレオの左右に、サラウンドで奥行きが加わり、イマーシブサウンドで高さが加わるということですね。イマーシブサウンドの特長はどんな点でしょうか。
志田:イマーシブサウンドは、立体的な音響を実現するために天井や壁面の高い位置にスピーカーを設置するのが大きな特長です。
上の図はイマーシブサウンドのスピーカーセッティング位置の一例です。水平方向で聞き手を囲むように設置された5.1chサラウンドのスピーカーに加えて、上方から音を再生するスピーカーが天井に設置されます。(ただし天井にスピーカーを設置せずに、下から天井に向けて音を出して天井面の反射を利用するイネーブルドスピーカーなどもあります)
Dolby Atmos、DTS:X、Auro-3Dの3つが主なフォーマット
●イマーシブサウンドにはいくつかフォーマットがあるそうですが、代表的なものを教えてください。
志田:イマーシブサウンドのフォーマットは主に3つあります。Dolby Atmos、DTS:X、そしてAuro-3Dです。最初の2つ、Dolby Atmos、DTS:Xはともに「オブジェクトオーディオ」と言われる方式で、現在多くのAVアンプが対応しているフォーマットです。デノンのAVアンプでもエントリーモデルのAVR-X1500Hまで対応しています。
Auro-3Dはチャンネルベースの再生方式です。デノンのAVアンプではハイエンドモデルであるAVC-X8500Hと、AVC-X6500H、AVC-X6400H、そしてミドルクラスのAVR-X4500H、AVR-X4400Hが対応しています。
●Dolby Atmos、DTS:Xの「オブジェクトオーディオ」と、Auro-3Dのチャンネルベースのオーディオではどんな点が違うのでしょうか。
志田:まずチャンネルベースから説明しますと、ステレオでは2つのスピーカーがありますよね。その右側のスピーカーがRチャンネル、左側のスピーカーがLチャンネルです。サラウンドの5.1チャンネルであれば、ステレオのL、Rに加えて、正面、後の左、後の右の5チャンネル、さらに低音用にサブウーハーが1基で、5.1チャンネルとなります。
これらのチャンネルは制作時のミックスで再生する際に出す音が決められていて、各スピーカーからは各チャンネルの音がそのまま再生されます。Auro-3Dは最大で13.1チャンネルとなっています。
一方のDolby Atmos、DTS:Xが採用しているオブジェクトオーディオという方式は、従来のチャンネルベースでの再生に加え、効果音などに多い「動きのある音」に対しては位置情報を持たせ、再生するスピーカーの数や設置位置に合わせてリアルタイムにレンダリング(生成)を行って再生します。
そのため、スピーカー設置の状況が異なっても制作者の意図を正確に再生音に反映できるメリットがあります。
Auro-3Dはハイレゾの立体音源で音楽ソフトも多数
●Auro-3Dはデノンでは中級以上のモデルに搭載されているそうですが、どんな特徴があるのでしょうか。
志田:Auro-3Dの最大の特長はハイレゾ音源に対応している点が挙げられます。規格上では最大384kHz / 24bitまでサポートおり、現状は192kHz / 24bitや96kHz/24bitのソフトが入手可能です。ハイレゾでの立体音場の臨場感は他では味わえないものがあります。そのため映画のような映像コンテンツだけではなく、Auro-3Dに対応した高音質な音楽作品もリリースされています。
教会で収録されたクラシック作品や、コンサートホールで収録されたビッグバンドジャズの作品などをオーディオショーなどのAuro-3Dのデモでよく再生しますが、非常にクオリティの高い音場が体験できます。ぜひ一度体験していただきたいと思います。
●Dolby AtmosやDTS:Xと、Auro-3Dとでは、ほかにどんな違いがありますか。
志田:上方向のスピーカーの設置方法に若干の違いがあります。
これは先ほどの図ですが、Dolby Atmos、DTS:Xの場合は天井から下向きに再生されるスピーカー設置が推奨されています。
一方、Auro-3Dでは、水平方向の5.1チャンネルのサラウンドスピーカーに対して、その上方にそれぞれスピーカーを設置し、もう一組のサラウンドスピーカーを上から設置するようなイメージです。さらに聞き手の真上にトップサラウンドスピーカーを1基設置します。これがAuro-3Dの推奨セッティングです。
●最後に「イマーシブサウンド」の醍醐味はどんなところにあるのか、お聞かせください。
志田:今までのサラウンドでは味わえなかった「高さ方向の拡がり」が出ることで、映画にしても、音楽にしても、非常に音場がリアルに再現できるようになったと思います。映画作品でなどでは上から降ってくる雨の表現や、アクション映画での発射音や爆破音が飛び交うシーンなどは、今までになかった音響体験だと思います。
また音楽作品も今まで以上にリアルに体験でき、特にライブ作品では、まるで会場にいるような臨場感が味わえます。これはまさに「体験」だと言えるでしょう。まだ未体験の方には、ぜひ一度イマーシブサウンドを体験していただきたいと思います。
(編集部I)