超初心者のための「ハイレゾって何?」そもそも編
オーディオが好きな方なら「ハイレゾ」という言葉をよく耳にされていると思います。「でもハイレゾってなに?とあらためて質問されたら、スラスラと答えるのはちょっと難しいかもしれません。そこで人気の『超初心者シリーズ』では、いまさら聞けない「ハイレゾ」についてとりあげます。まずは「そもそも編」から。
「ハイレゾ音源」とはCDを超えたレゾリューション(解像度)の音源。
そもそもハイレゾとはなんでしょうか。
ハイレゾとは、ハイレゾリューションオーディオ (High-Resolution Audio) のこと。Resolutionとは解像度ですから、つまり高解像度な音源という意味になります。では、何と比較して高解像度なのでしょうか?
それはずばり「CD」に比べて高解像度な音源ということです。
では、CDより音が良いとはどういうことでしょうか。それにはまずデジタル音源であるCDの音質を決定するフォーマット(規格)を知る必要があります。ではCDのフォーマットとは?
CDのフォーマットは44.1kHz / 16bitです。ではこの数字と単位は何を意味するのでしょうか。
16bitとは、記録できる音の大きさの段階の数を表しています。16bitという数字は、2の16乗(65535)段階で音量が表現できることを意味しています。これをダイナミックレンジに換算するとおよそ96dBになります。Jポップのように一曲がずっと同じような音量であればダイナミックレンジはそれほど必要ないかもしれませんが、たとえばオーケストラの交響曲のようにある部分は非常に静でピアニシモのメロディが奏でられる一方、別の部分ではオーケストラ全員がフォルティシモで演奏するような音楽では、ダイナミックレンジの広さが大きく影響します。
次に44.1kHzとはなんでしょうか。これはサンプリング周波数と言って、再生できる音の高低に関係してきます。人間の耳が聴き取れる音の範囲は、一般的に低い音が20Hzまで、高い音が20kHzまでと言われています。サンプリング周波数が高いほど高い音を記録でき、CDの44.1kHzでは、人間の可聴範囲を超える22.05kHzまでの音を再現できる能力を持っています。
ハイレゾはなぜCDより音が良いの?
CDが発表された当時は、44.1kHz / 16bit以上のスペックは必要ないくらいの高音質だと多くの人は感じたのではないでしょうか(私もそう感じました)。ではCDを超えた高音質とされる「ハイレゾ」はなぜ必要とされたのでしょうか。実はCDに収録するためにアナログ波形のオーディオ信号をデジタル化する過程で、元の波形から失われたものがあったのです。
上の図の原音の波形は、デジタル録音される前のアナログ波形を示しています。この波形をどこまで忠実に再現できるか、がデジタル録音における「原音再生」のカギとなります。
この波形をCDのフォーマットである44.1kHz / 16bitでデジタル化したのが、下図のイメージです。
黄色の線が元のアナログ波形、そしてブルーの線が44.1kHz / 16bitでデジタル化された波形です。マス目がやや粗いので、もともとは丸みのあった曲線でしたが、デジタル化したことにより、やや尖ったり、直線的になったりしている部分があります。イメージとしては画素数が粗いデジタルカメラで撮影した画像に似ています。
では同じ波形を、たとえば96kHz / 24bitなどの、より解像度が高いハイレゾフォーマットで録音したら、どうなるでしょうか。下図がそのイメージです。
こちらも黄色の線が元のアナログ波形、そしてブルーの線が96kHz / 24bitでデジタル化された波形です。ハイレゾはCDよりもマス目が細かくなります(デジカメで言えば画素数にあたります)。そのためブルーの黄色の元の波形にかなり近いカーブが再現できました。これは、CDよりもハイレゾ音源のほうが原音に近い波形が再現できていることを意味します。これが「ハイレゾはCDより音が良い」という理由なのです。
ハイレゾの種類と解像度について
ではハイレゾにはどんな種類があって、それぞれどれくらいの解像度を持っているのでしょうか。
ハイレゾのフォーマットには大きく分けてPCM系とDSD系の2タイプがあります。まずPCM系から説明しましょう。
PCM(Pulse Code Modulation)方式は、CDでも採用されている最も一般的なデジタル録音方式です。CDは先ほど説明したように44.1kHz / 16bitで録音されています。
PCM系のハイレゾ音源にはサンプリング周波数の種類として96kHz、192kHz、384kHz、768kHzなどがあり、bit数の種類は24bit、32bitがあります。サンプリング周波数とは一秒間に何回デジタル化を行うかの頻度ですが、同時にどこまでの高音域が記録できるかにも直接関係しています。CDのフォーマットである44.1kHzは22.05kHzまで録音できますが、96kHzであれば、その倍近い48kHzまでの高域が録音できます。またbitは音の強弱の幅、ダイナミックレンジの広さを規定しますが、CDのフォーマットである16bitのダイナミンクレンジが96dBであるのに対し、24bitでは144dBものダイナミックレンジが実現できます。人間のダイナミックレンジの可聴範囲は120dBと言われていますので、24bitの解像度は人間の可聴範囲のダイナミックレンジをカバーしていると言えるでしょう。
一方もうひとつの方式であるDSDとはDirect Stream Digitalの略称で、元々スーパーオーディオCDの録音フォーマットとして採用されているフォーマットであり、PCMとは異なり、音を1bitの疎密波として記録する方式です。
DSDの規格には2.8MHz、5.6MHz、11.2MHzなどがありますが、これらはPCMに変換すると概算では
2.8MHz=176.4kHz
5.6MHz=352.8kHz
11.2MHz=705.6kHz
となります。ただし記録方式が異なりますからPCM方式との単純な音質比較はできませんが、CDと比べると非常に高い解像度を実現していると言えるでしょう。
※ハイレゾ音源として実際に販売されているデータの多くは、PCMでは96kHzまたは192kHz、DSDでは5.6MHz以下であり、PCMでは192kHz / 24bit、DSDでは5.6MHzに対応した製品であれば、ほとんどのハイレゾ音源が再生できます。
(フォーマット編に続きます)
(編集部I)