SX1 LIMITED EDITIONのレビューをレビューする(前編)
デノンHi-Fiの新たなフラッグシップモデルSX1 LIMITED EDITIONが発売されて3ヶ月。オーディオ専門誌やオーディオ系のウェブサイトでも数多く採り上げられ、試聴会でも多くのお客さまに聴いていただきました。今回のデノンオフィシャルブログではサウンドマネージャー山内が、SX1 LIMITED EDITIONへの感想やレビューを紹介しながら、さらにそれにコメントを加えていくという「レビューのレビュー」を行いました。ぜひご覧ください。
●SX1 LIMITED EDITIONが発売されて3ヶ月ほどたちます。今回はサウンドマネージャー山内さん、そしてSX1 LIMITED EDITIONの試聴会で全国を回られている国内営業本部 営業企画室 田中さんに、評論家の先生のコメントやレビュー、そしてオーディオ店での試聴会などでの反響などについておうかがいしたいと思います。
最初に、今回の企画に先だって、山内さんが書いてくださった序文を掲載したいと思います。
SX1 LIMITED EDITIONは幸運にも予想を大きく超える反響、称賛を頂きました。中でも評論家の先生やwebメディアの方々からは様々な視点でその魅力を伝えていただくことができました。不思議とこの音を聴いた少なくない方々がやや興奮気味に印象を伝えてくれます。評論家冥利といわれた人もいましたが、音を作った本人はそれを聞くのが大きな報いでした。僭越ながらやはりインパクトのある出音だということでしょうか。中にはこの良さを広めるのに協力できることがあればしたい、と言ってくださる人もいました。
レビューや記事をみるとやはり書くことを専門としている人は文章による表現力がとても素晴らしい事を感じさせられました。抽象的な部分を美しい言葉へ変換し解り易く伝える、これもある種のコミュニケーション力、また評論としての作品ともいいましょうか? SX1 LIMITED EDITIONに限らず、オーディオ機器あるいは音楽や芸術はこうした多方面から触れることができるインタラクティブなものだと改めて思いました。つまり芸術を味わうこともまた芸術なのだと。実はずっと昔キースリチャーズがインタビューで話していた言葉でもあります。
サウンドマネージャー山内
●SX1 LIMITED EDITIONへのレビューをご紹介しつつ、レビューされた側がそれを味わうというのは、たいへん面白い視点ですね。どうしてこれをやってみようと山内さんは思ったのですか。
↑デノンサウンドマネージャー 山内(右)
山内:発売以来、たくさんの評論家の方々にSX1 LIMITED EDITIONを聴いていただき、さまざまなコメントやレビューをいただきました。それらは私も拝見しているのですが、評論自体が味わいの深い作品になっているように感じました。そこで、これらをご紹介しつつ共有し、SX1 LIMITED EDITIONの作り手側からの角度で解説や補足を加える、といったことをしてみたいと思いました。またLIMITEDの魅力をさらに掘り下げてみたいというのもあります。
●ちなみに今までどのくらいの方に試聴いただいたのでしょうか。
田中:7月末から約3ヶ月で、30人ぐらいのオーディオ評論家や音楽評論家の方々、そしてオーディオショップでの試聴会は20~30ほどのお店で行ってきました。評論家の方々には概ね好評で、中には大絶賛してくださった方も何人かいらっしゃいました。またお店での試聴会は、ありがたいことにどの会場もほぼ満席の大人気で、多くのオーディオファンにご興味を持っていただいています。
↑国内営業本部 営業企画室 田中(左)
↑オーディオスクエア相模原でのSX1 LIMITED EDITION試聴会の様子
オーディオスクエア相模原試聴会の様子はこちらをご覧ください
SX1 LIMITED EDITIONにおける「色彩感」というキーワード
●ではSX1 LIMITED EDITIONのレビューですが、いろんな方のレビューをみていかがだったでしょうか。
山内:レビューはいずれも素晴らしい文体であったり、圧倒的な伝達力だったり、ディテールまで克明に描写するような方もいらっしゃって、いずれも作品として鑑賞させてもらっています。SX1 LIMITED EDITIONの音を聴いて、それに触発されて語っていただいているので、作り手の私としても、読んでいて楽しいです。
●SX1 LIMITED EDITIONのレビューで特徴的なこと、印象に残ったことはありますか。
山内:色々なレビューを拝見する中で、よく使われているなと思った言葉が「色彩感」でした。たとえばこんなレビューがありました。
オーディオ的にはワイドレンジで音場が広く、音像の質感にはクセのようなものが微塵もない。オリジナルでは花の香りのように感じられたサムシングは、色彩感に変貌しており、清潔な音場に極彩色の音像が展開する。誤解してほしくないのだが、これはカラーレーションではなく、和声の変化に対して本ペアが鋭敏に反応することを示唆する振る舞いだ。
非常に格調高い文体だと思いました。特に『花の香りだったのが、色彩感に変貌している、しかしカラーレーションではない』というあたりは深く感銘を受けました。実は色彩感は私にとって最も重要なテーマの一つです。映像や絵画、デザイン、インテリア等色々なところで色彩は重要ですが、音楽にも表出されるところが面白いのです。広い意味で色彩はある種の感情表現とも関わってくるように思えますし、一方で光への昇華とか連想にもつながるものも感じます。以下はLIMITEDでの色彩感を表現されている文章で、映像関連の評論家でもある方らしい感性があふれています。
音がクリアーで、かつ色彩感も備えている。テレサ・ベルガンサの声が素晴らしく、まるでジュネーブのホールで聴いているかのような濃密な音場感、響きの広がりが目に見えるように感じられました。
次に「ファンダンゴ」を聴きましたが、エネルギーと情熱、色彩の鮮やかさに溢れてきました。CDプレーヤー、アンプともSX1 LIMITEDにすることで音楽に色が付いて、しかも高彩度の色が出てきました。
私は「色彩」には非常に興味があって、文部科学省が認可している「色彩コーディネーター」という試験があるのですが、その試験を受けて資格までとったぐらいです。
●色彩の資格を取得したのはすごいですね。ところでオーディオにおける色彩とはどんなものなのか、さらに解説してもらえますか?
山内:まずは音色ですね。音「色」というぐらいですから。そして音色に深く関連しているのが倍音の多さ、高次倍音なので高域の表現ということになるかもしれません。色彩感を分解してみると音色の多彩さと倍音とに密接な関係があると思います。たとえばふだんあまり耳にしない民族楽器やワールドミュージックを聴くと、とても色彩感を感じますが、たぶん高次倍音がストレスなく聴こえるからだと思います。
●倍音はあるかないか、すぐわかるのですか。
山内:ハイレゾ音源もそうですが、高次倍音、高い周波数の音は、その音だけでは可聴範囲を超えているぐらい高い音です。でも高次倍音を含んだ音源と、倍音を意図的にカットした音源を聴いてもらえば、その楽器の音のリアリティが全く違いますから、すぐにわかります。
●色彩感は、分離やクリアネスも関係あるように思います。
山内:そうですね。複数の楽器や音源の違いを克明に表現するには分離が良いこと、そして瑞々しくしなやかに音が表現できることも大切です。しなやかさとは、時間軸上の解像度とも考えていて色彩感が時間軸上に展開している状態、ともいえるかもしれません。クリアネスはハーモニーが埋没せず浮かび上がってくるために必要で、S/Nや付帯音の少なさとも関連します。
●それは山内さんが提唱しているデノンの新しいサウンドフィロソフィーである「Vivid」に近いことでしょうか。
山内:その通りです。ただ色彩用語でいうVividは彩度が高い、躍動感があるというイメージなので、まったくの同一ではありません。私の使うVividは再生音の多様性、多彩さであってグラデーションが豊かで色の解像度が高いという方向ですね。コントラストのみならずグラデーションの細密さ、そして音量としてはイメージが伝わりやすい例えでいうと強音よりは控えめな音圧というイメージです。
サウンドマネージャー山内のプライベートワークから生まれた、というストーリー
●いったん話が戻りますが、試聴会やインタビューで「SX1 LIMITED EDITIONは山内さんのプライベートな試作から始まった」という部分が多くの方の興味を惹いたようです。その反響はいかがでしょうか。
田中:このストーリーは、私たちは非常に重要だと思っています。SX1 LIMITED EDITIONはサウンドマネージャーである山内が、自分の理想のサウンドを求めてコツコツとプライベートワークではじめた、という経緯があり、開発期間もあらかじめ設定することなく、山内が満足いくまで時間を費やしました。こういったことは我々のような規模のメーカーとしてはあまり例のないことであり、積極的に伝えていくべきだと思ったんです。
●山内さんとしては、自身の全霊をこめてフラッグシップモデルを出すわけですからプレッシャーもありますよね。
山内:開発初期は製品化など考えていなかったので全くありませんでしたが、開発の最終盤は時間も迫ってきてかなりプレッシャーを感じていました(笑)。SX1 LIMITED EDITIONの製品化の可能性の話が出てきた2年ぐらい前からは意識的に集中してやる時間を作っていました。製品と製品の合間の2週間、3週間ぐらいを見つけてはカンヅメになって音作りをしました。機材の入れ替えなどがありますから、やはりある程度集中して作業する期間が必要なんです。そういえば去年のクリスマスはずっと試聴室に籠もっていましたね。
田中:特に最後の3ヶ月は凄かったですよ。はたで見ていても鬼気迫るものがありましたね。そういうところをそばでみているとプロモーションで「何を伝えれば良いんだろう」というのが思い浮かんでくるわけです。
山内:まぁ、音質評価は集中しすぎると疲弊するので、それも難しいところでしたが、最後の最後、何をやってもうまくいかない時期がありましたが、ここでやめたら後悔すると思って。
●マラソンでいえば最後のトラックに入ってからのラストスパートですね。
田中:ほんと、それです。
山内:まぁ、生産時期が近づくと生産現場も含めて全部がどっと動くので、小さな変更でも影響する範囲が大きいわけですが、妥協せず納得できるものに仕上げることができたと思います。
後編をお楽しみに!
(編集部I)
2019 東京インターナショナルオーディオショウ(11/22~24)
東京国際オーディオショーのデモンストレーションでSX1 LIMITED EDITIONをご試聴いただけます。ぜひ当日、会場に足をお運びください。
https://www.denon.jp/jp/wheretobuy/eventdetails?eid=1153
■ 開催日時: 2019年11月22日(金)~11月24日(日)10:00~19:00(最終日は17:00終了)
■ 開催場所: 東京国際フォーラム G701(ガラス棟7階)
■ 住所: 〒100-0005 東京都千代田区丸の内3丁目5番1号
■ 進行役: D&Mスタッフ
■ 使用予定モデル: プリメインアンプ:PMA-SX1LTD/ PMA-600NE/ PMA-150H、SACD/CDプレーヤー:DCD-SX1LTD、CDプレーヤー:DCD-600NE、スピーカー:B&W 800D3シリーズ、DALI EPICONシリーズ
イベントの詳細をご覧ください
http://iasj.info/tokyo-international-audio-show/2019/
SX1 LIMITED EDITIONの主要レビュー一覧
AV WATCH (山崎健太郎氏) | ⇒詳細はこちら |
PHILE WEB (小澤貴信氏) | ⇒詳細はこちら |
価格COMマガジン(土方久明氏) | ⇒詳細はこちら |
ステレオサウンドオンライン (麻倉怜士氏) | ⇒詳細はこちら |
PHILE WEB (石原俊氏) | ⇒詳細はこちら |
(編集部I)