AVR-X2600HとAVR-X2700Hを聴き比べてみた
デノンから発売された世界初8K対応のAVアンプAVR-X2700Hは、4K/8K放送で使われるサラウンド音声フォーマットMPEG-4 AAC(5.1chまで)にも対応。次世代AVアンプとして音質にもこだわり、進化をとげています。今回はあのフランシス・F・コッポラの名作「地獄の黙示録」を視聴して、先代モデルAVR-X2600Hと聴き比べをしてみました。
5.1chサラウンドの元祖「地獄の黙示録」
視聴レポートの前に、戦争映画の金字塔とも言われる映画「地獄の黙示録」(フランシス・F・コッポラ/米国)について簡単に解説しておきましょう。1979年(日本では1980年)に公開された同作品は、ベトナム戦争の狂気や凄惨さを描き、その年のカンヌ国際映画祭で最高賞であるパルム・ドールを受賞しました。アカデミー賞では、撮影賞と音響賞を受賞しています。
映画音響という技術的な面でも大きなチャレンジをしており、世界初の5.1chサラウンドを導入した作品としても有名です。映画館の中で音を移動させるという初の試みで、観客を戦場へ引き込むことに成功。さらに、ヘリコプター、船の音、群衆のガヤ、銃の音など、映画に使用される「音」のそれぞれを1人ずつの担当制にしたことは、今の映画音響づくりの基本となっています(それまでは1人で全部行っていた)。今では当たり前の5.1chサラウンドはこの映画から始まったのです。そして今回視聴したのは、公開40周年を受け、2019年(日本では2020年)にファイナルカット版として再編集&デジタル修復を施されたものです。
地獄の黙示録 ファイナル・カット 4K Ultra HD Blu-ray
先に昨年のモデルAVR-X2600Hで視聴してみました。ウィラード大尉(マーティン・シーン)が密命を受け、数名の乗組員を連れて船に乗り、大河を遡行するシーンです。船のエンジン音やジャングルの鬱蒼とした雰囲気が伝わる環境音、低音もバランス良く響いて、映画に引き込まれます。AVR-X2600Hでも全く問題なく楽しめたので、正直そんなに違うものなのかな…と半信半疑のまま、次はAVR-X2700Hで視聴スタート。
↑視聴は4.0.2chのサラウンド構成で実施
ここからは、ディーアンドエムホールディングス 国内営業本部 営業企画室の田中のコメントも交えながらお届けします。
国内営業本部 営業企画室の田中 清崇
音の粒立ちに違い。気づくとジャングルの中にいるような臨場感がスゴい!
同じシーンからスタートしましたが、初っ端から音の透明感が全然違います。船のエンジン音や鳥の鳴き声、木々のこすれる音、風の音、水がチャプチャプと揺れる音など、画は同じなのに、全く違う空気感でもって目の前に立ち現れるような感覚。音の一つひとつがクリアに聴こえ、全体の透明感に繋がっているような印象です。
「AVR-X2600Hも良いのですが、ちょっと凝縮されている、音がまとまって聴こえる感じだと思います。AVR-X2700Hは一つひとつの音の粒立ちが良くなって、音がほぐれて聴き取りやすさが全然違います。やっぱりS/N(Signal-Noise Ratio)が良くなると空間が広がる、開放感みたいなものが出てきます。S/Nの良さを追求し、記録されている音を、ノイズの中に埋もれさせずに引き出すのがAV アンプの力ですね」(田中)
音楽のS/N は音自体のクリアさをいうことが多いですが、映画のS/Nを追求すると、現実にそこにいるような違和感のなさに繋がるのかもしれません。今回のようなジャングル、森の中のシーンは特に、自分が知っている世界だからか、余計にリアリティがあります。まるで自分も森の中にいるような臨場感です。臨場感というと圧倒されるような感覚と思われるかもしれませんが、なんというかもっと自然に近い感じがします。
もちろん映画ならではの、派手なアクションや戦闘シーンなど、音響面で迫力のある表現はありますが、こういった静かなジャングルや自然の音に囲まれるシーンの方が、AVR-X2700Hの良さがわかりやすいと感じました。デジタル修復を施されたとはいえ、作られたのが40年以上前という古さをまったく感じさせない映画だと思ったのも、音響の緻密さや豊かさによるものが大きいものではないでしょうか。そしてそれをしっかり表現しているがAVR-X2700Hです。
前進し続けたい。デノンのエンジニアのこだわりが生んだ音の進化
世界初の8K放送への対応や4K/8K放送の音声フォーマットMPEG-4 AAC 5.1chへの対応など、AVR-X2700Hではその最新機能のほうがピックアップされがちですが、音の面でも明らかにわかるほど進化していて驚きました。その裏には、音質向上のための地道な改善の積み重ねがあったことが、同時期発売のAVC-X6700H、AVR-X4700Hの開発者インタビューで知ることができます。
AVC-X6700H、AVR-X4700H開発者インタビューはこちら
「今年発売のAVアンプで、開発コストの比重が大きかったのは8Kに対応したところ。そういった意味で、音の部分は前のままで、映像だけ8Kに移行するというかたちでも良かったのですが、エンジニアとしてはやっぱり音の面でも前作を超えていきたい、常に前進し続けたいという思いから開発されました。僕はAVR-X2600HとAVR-X2700Hだけではなく、AVR-X4500HとAVR-X4700H、AVC-X6500HとAVC-X6700Hをそれぞれ聴き比べましたが、それぞれ全然違いました。ノイズフロアが圧倒的に低く、S/N が良くなっているからどのクラスを通して聴いても音の進化を感じます。視聴室の隅っこに立って聴いていても分かるぐらいですよ」(田中)
MPEG-4 AACというのは、新4K8K衛星放送で使用されている新しいサラウンド音声フォーマットです。2020年発売のデノンのAVアンプは全てこのMPEG-4 AACのデコードに対応しています。AVアンプとしてはこちらも世界初の機能です。MPEG-4 AACは主にNHK-BS4Kなどで採用され、放送そのものはもちろん、録画したものでもMPEG-4 AACのデータそのままで楽しめます(※レコーダーによっては他のフォーマットに変換して記録されるものもあります。)(2020/11/24 改定)
今年は年末に4K/8K対応のゲーム機が発売され、来年はオリンピックの放送と、テレビを中心にAV機器周りに次世代の波が一気に押し寄せてきそうです。AVアンプの買い替えをお考えの方にも、初めての方にも存分に楽しめるAVR-X2700Hで、お家時間をエンジョイしてみてはいかがでしょうか。
(編集部S)