新緑の季節はミュージカル映画で 大女優の歌声を堪能しよう!
アニメ映画史上最大といわれるヒット作「アナと雪の女王」。日本でも「アナ雪現象」「レリゴー現象」(主題歌の” Let It Go”に由来)なる言葉が生まれるほどの大ブーム! 主人公の吹き替えを担当した女優・松たか子の圧倒的な歌唱力も話題です。そこで今回は名作ミュージカルで私たちを感動させてくれた「歌う大女優」についてふり返ってみたいと思います。
アニメ映画史上最大といわれるヒットを記録し、アカデミー長編アニメ映画賞なども受賞したアニメーション・ミュージカル「アナと雪の女王」。
日本でもこの春公開され「アナ雪現象」「レリゴー現象」(主題歌の” Let It Go”に由来)なる言葉が生まれるほどの大ブームとなっています。
2人のプリンセスの個性的なキャラクター、斬新な物語展開とエモーショナルな音楽が日本でも女の子たちを熱狂させましたが、
娘さんを連れて映画を見たお母さんたちの多くは、主人公の吹き替えを担当した女優・松たか子の圧倒的な歌唱力に心から驚いていたようです。
映画俳優はかつて舞台でミュージカルに出ていたという人も多く、その実力を私たちが知らないだけなのかも知れませんが、
有名な俳優の歌声をミュージカル映画で初めて聞いて「あれ!この人って歌もこんなにうまいんだ」と、
意外な発見にうれしくなってしまうことがよくあります。
そこで今回、名作ミュージカルで私たちを感動させてくれた「大女優の歌唱力」についてふり返ってみたいと思います。
マンマ・ミーア!
ブルーレイ発売中 ¥1,886+税
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
(C) 2008 Universal Studios and Internationale Filmproduktion Richter GmbH & Co. KG. All Rights Reserved.
まずは、2008年の大ヒットミュージカル映画「マンマ・ミーア!」。
今やおしもおされぬ大女優のメリル・ストリープが、「ダンシング・クイーン」をはじめとするABBAのヒットナンバーを熱唱しました。
映画の前半は「迫力あるハスキーボイスではあるけど・・・」くらいに思って見ていると、
中盤の「スーパー・トゥルーパー」あたりでグイッと惹きつけられてしまい、
ラスト近くの「ザ・ウィナー」では思わず涙腺もゆるんでしまうような、見事な歌を披露してくれます。
この人が本当に「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」(2011)のサッチャー首相役を演じていたの?とびっくり。
もっとも古い映画ファンなら「ディア・ハンター」(1978)のラストシーンで歌われた「ゴッド・ブレス・アメリカ」をおぼえていて、
歌がうまいのは知ってた!と言うかもしれません。
レ・ミゼラブル ブルーレイ
ブルーレイ発売中 ¥1,886+税
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
(C) 2012 Universal Studios.ALL RIGHTS RESERVED
そのメリル・ストリープと「プラダを着た悪魔」(2006)で共演したアン・ハサウェイは、
「レ・ミゼラブル」(2012)でコゼットの母親フォンティーヌを演じています。
フォンティーヌの歌う「夢やぶれて」は作品前半の大きな見せ場。
セリフのほとんどを歌で表現するこのミュージカルは、映画化にあたって「歌もすべて同時録音」という大胆な手法で撮影され、
そのなかでこの若手人気女優がどう歌い切るのか公開前から大きな注目を集めました。
アン・ハサウェイは、舞台版のミュージカル俳優やスーザン・ボイルのように朗々と歌い上げるわけではないものの、
映画女優らしい繊細で大胆な演技とともに、心をゆさぶる歌を聞かせてくれます。
髪を売る場面では本当にバッサリと髪を切ったという女優魂。アカデミー助演女優賞も受賞しました。
ちなみにコゼット役は「マンマ・ミーア!」でソフィを演じたアマンダ・セイフライドで、その澄んだ歌声も作品に花を添えています。
ムーラン・ルージュ
ブルーレイ発売中 ¥1,905+税
20世紀フォックス ホームエンターテイメント ジャパン
「ムーラン・ルージュ」(2001)は、19世紀末のパリを舞台にしながら、
劇中で歌われるのは主に70〜80年代のポップスという異色作です。主演女優はニコール・キッドマン。
この作品以前は「アイズ ワイド シャット」(1999)で夫婦共演した
トム・クルーズの美人な奥様ぐらいの印象しか持たれていませんでしたが、この作品で一気にブレイクしました。
この人こそ「こんなに歌がうまいとは思わなかった」女優の代表格といってもいいのではないでしょうか。
エルトン・ジョンやデヴィッド・ボウイなど名曲の数々を情感たっぷりに歌い上げる、堂々としたディーバっぷりでした。
この映画でアカデミー主演女優賞にノミネートされ、2002年の「めぐりあう時間たち」では、
ついにアカデミー主演女優賞を受賞しています。
ロッキー・ホラー・ショー
ブルーレイ発売中 ¥4,700+税
20世紀フォックス ホームエンターテイメント ジャパン
「デッドマン・ウォーキング」(1995)でアカデミー主演女優賞も受賞し、今ではベテラン社会派女優の第一人者的存在のスーザン・サランドン。
その出発点ともいえる出世作がカルト・ミュージカル映画「ロッキー・ホラー・ショー」(1975)だったのは有名な話です。
コミカルでシュールな物語の中、退廃的に歌い踊る姿は、いまの出演作品の傾向からはなかなか想像がつきません。
その歌が「うまいかヘタか」は見る人の判断にお任せするとして、彼女の歌には記憶に残る独特の魅力があり、
それがこの映画を今なお熱狂的ファンを生むカルト・ムービーたらしめている大きなファクターになっています。
主演のティム・カリー(ブルーレイ版ジャケット写真の俳優。歌手でもあります)や、
ミートローフ(この映画の出演後に世界的なロックスターとなりました)など達者すぎる歌い手だけでは、
あの愛すべきB級感は出なかったに違いありません。
シェルブールの雨傘
ブルーレイ発売中 ¥4,700+税
発売元:ハピネット
(C) Ciné-Tamaris photo by Agnès Varda (C)Agnès Varda
今でこそほとんど女優本人が歌うミュージカル映画ですが、かつては専門の歌手による吹き替えがあたりまえでした。
セリフの「すべて」にメロディがついている「完全ミュージカル」として
世の中をアッと言わせた「シェルブールの雨傘」(1964)の歌も、主役・脇役ともに吹き替えです。
この映画には歌以外のセリフがないので、観客はカトリーヌ・ドヌーヴの声を聞くことはありません。
ただし本人が歌っていないからこの映画の価値が下がるわけでは全くなく、
むしろ完成度の高い吹き替えだったからこそあの有名な主題歌やラストシーンが観客の胸を打ち、
「シェルブールの雨傘」はミュージカル映画史上に燦然と輝く金字塔となっているのです。
主演のカトリーヌ・ドヌーヴの吹き替えを担当したフランスの歌手ダニエル・リカーリは、
この映画がきっかけで有名歌手への道を歩みはじめます。
ウエスト・サイド物語
ブルーレイ発売中 ¥4,700+税
20世紀フォックス ホームエンターテイメント ジャパン
「王様と私」(1956)、「ウエスト・サイド物語」(1961)、「マイ・フェア・レディ」(1964)。
ヒットミュージカルを映画化したこれらミュージカル映画の歴史的名作でも、
デボラ・カー、ナタリー・ウッド、オードリー・ヘップバーンという大女優の歌が歌手の声に吹き替えられています。
ナタリー・ウッドの歌唱力はかなりのもので、オードリー・ヘップバーンも撮影中はしっかり歌っていたそうですが、
それでもさらに高い仕上がりを求めて吹き替えが採用されました。
実はこの吹き替え3作とも、歌ったのはマーニ・ニクソンという米国の女性歌手。
その名前さえクレジットに載らなかったそうですが、マーニ・ニクソンは当時「ハリウッドの声」と呼ばれていたぐらい、
ミュージカル映画になくてはならない存在でした。
ファンの後押しもあり「サウンド・オブ・ミュージック」(1965)では修道院のシスター役として映画出演がかなっています。
◆ ◆ ◆
いかがでしょうか。
有名女優の意外な歌唱力に出会ったり、吹き替えで完璧に作品を下支えした歌い手に思いをはせたり。
ミュージカル映画は、新緑爽やかな季節の気分にピッタリです。
多くの名作がブルーレイディスクやDVDでリマスター版としてよみがえっています。
その美しく迫力ある音と映像に、ホームシアターであらためて浸ってみてください。
(Denon Official Blog 編集部Y)