雨の日に、聴きたい音楽。
もうすぐ梅雨の季節。湿気が多くて鬱陶しい時期ですが、になりますが、雨が降っている日だからこそ聴きたくなる音楽もありますよね。というわけでデノン公式ブログでは雨にちなんだ名曲をご紹介します。
「雨の日と月曜日は」
アーティスト名:カーペンターズ
アルバム・タイトル:シングルス 1969~1973[プラチナSHM][SHM-CD]
ユニバーサルミュージック
「雨」といえば、いろんな名曲がありますが、最初に思い浮かんだのが「雨の日と月曜日は」でした。
この「雨と月曜日はいつも私を憂鬱にさせる」というありふれたテーマが、
実に美しい極上のポップスに仕上げられているのがカーペンターズの素晴らしい点だと思います。
イントロの愁(うれ)いのあるハーモニカ、カレンの軽やかで美しい歌、
そして歌を最高のバランスで引き立てる名手ハル・ブレインのドラム、2コーラス目から入るコーラスの絶妙さ。
中でも私が特に感心するのが、間奏のごく短いサキソフォンのソロ。
この貫禄はスタン・ゲッツあたりの大御所かなと思って調べたら、
どうやらボブ・メッセンジャーというカーペンターズのバンドでフルートやベースも弾く方のようです。
決して派手ではありませんが、こういう粋(いき)で成熟した演奏をできる人がたくさんいて、ポップスを支えているんですね。
アメリカのポップスの底力と凄みを感じます。「雨の日と月曜日は」は、何度聞いても決して飽きることのない名人芸のアンサンブル。
ポップスとしては完璧といえるほどの完成度ではないでしょうか。
「ショパン 雨だれ(前奏曲 第15番 変ニ長調 作品28の15)」
アーティスト名:イングリット・フジコ・ヘミング
アルバム・タイトル:雨だれ
ユニバーサルミュージック
クラシックで思いつくのはショパンの前奏曲「雨だれ」です。
なぜ雨だれというタイトルなのかは諸説あり、どれが正解かはわかりませんが、
この曲の特長は、まるで雨だれのように、曲中でA♭の音が一定のテンポで連打されている点。
この音は、明るい和音(長調)のときも暗い和音(短調)のときも、同じ音程で同じように鳴らされているのですが、
長調と短調では音の印象ががらりと変わります。
長調では軽やかで美しく、短調では深みのある悲愴な音。
このあたりはショパンの作曲の巧みさであり、また演奏するピアニストの腕の見せどころではないでしょうか。
今回セレクトしたフジコ・ヘミングの演奏は情感が豊かで素晴らしく、
ご本人がピアノ演奏に関して「一つ一つの音に色をつけるように弾いている」と言うように、まるで印象派の絵のような色合いに私には聞こえました。
時折晴れ間も見せるような雨の日に、外を眺めながら聴いてみたいと思います。
「ばらの花」
アーティスト名:くるり
タイトル:ばらの花
ビクターエンタテインメント
「雨降りの朝で〜」から始まるくるりの「ばらの花」。
タイトルに「雨」こそありませんが、雨降りの窓べ、飲みかけのジンジャーエールの缶、という部屋の情景がありありと浮かんできます。
矢野顕子が自らのステージで愛唱するなど、この曲を愛したアーティストは多く、
レイ・ハラカミのリミックスや、奥田民生がロックっぽく歌っているバージョンも素晴らしい仕上がりでした。
また「さよならリグレット」に収録されている「京都音楽博覧会」というフェスでのライブテイクでの小田和正のボーカルが入ったものも出色の出来。
一聴の価値があるバージョンです。
オリジナルのバージョンではイントロから歌中、そしてエンディングまでまるで雨だれのようにずっとピアノの単音のリフが鳴らされています。
左右のスピーカーから異なるフレーズが流れて、それが空間に混ざっていくところが、雨が降っている場面を想起させます。
フォーキーな曲調の中で淡々と鳴らされるこの電子音楽的なリフのセンスの良さは、さすがくるり。
シンプルな曲調、若者らしい歌詞世界であるにもかかわらず、
フォーク、ロック、テクノ、ミニマルミュージックをしっかりと自分たちなりに消化した音楽的な豊潤さを感じさせます。
もう何度も聴いていますが、全く飽きる気配はありません。
日本のロックの名曲といえるでしょう。こちらは、ぜひスピーカーから音を出して聴いていただきたいと思います。
「レイン・ソング」
アーティスト名:レッド・ツェッペリン
アルバム・タイトル:聖なる館
ワーナーミュージックジャパン
そして最後にリコメンドするのが、ディープ・パープルと並ぶハードロックの巨頭レッド・ツェッペリンの「レイン・ソング」です。
「ブラック・ドッグ」や「ホール・ロッタ・ラブ」のような“これがまさにハードロック”という曲とは趣が違う、思索的な曲といえるでしょう。
5枚目のアルバム『聖なる館』の2曲目に収録されていますが、このアルバムはアコースティックギターなどを使った曲が多く、
自らが確立したハードロックの枠を超えた音楽的な充実を感じさせる一枚です。
イントロの複雑でメランコリックなギターのアンサンブル、間奏のメロトロンによるストリングスなどの凝りに凝った構成は、
凡百のハードロックバンドとは一線を画す彼らの、圧倒的な音楽性の高さと成熟度を感じさせます。
とはいえ、曲の中間部からそれまでブラシワークによる繊細なドラムを聴かせていたボンゾ(ジョン・ボーナム)が、
静かな演奏で引っ張って引っ張って、でも最後にドーンとヘビーなビートを繰り出すカタルシスは、
ある意味でハードロックの本質を純化したもの、という気がします。
雨が降った日でも、その部分を聴けばスカっとすること間違いなし。
こちらはぜひヘッドホンで、大音量で聴いていただきたいと思います。
(Denon Official Blog 編集部I)