セプテンバーという至福
いつのまにか9月も下旬。この爽やかな季節にピッタリな曲といえば、なんといってもダントツで、アース・ウィンド・アンド・ファイアの「セプテンバー」ではないでしょうか。今回はオリジナルと、それをカバーした土岐麻子のバージョンをご紹介します。
9月といえば、セプテンバー。
そしてセプテンバーといえば、音楽好きなら、なんといっても
アース・ウィンド・アンド・ファイアの「セプテンバー」を思い出すのではないでしょうか。
この曲は1978年にシングルとしてリリースされ、全米チャートのビルボードで1979年に最高8位を記録しています。
ラジオ大好き少年だった私(編集部I)の場合、初めて聞いたのは中学生でした。
その時からこの曲の持つ幸福感、天国感は圧倒的でした。
カウベルとエレキギターの特徴的なフレーズのイントロを聴くだけでウキウキし、
それまで聞いたことがないほど切れ味が鋭いホーンセクションが入ると浮き足立ってしまい、歌が始まると、もう曲が終わってほしくない一心。
ずっとこのサウンドが鳴り続ければいいと真剣に思ったものです。
そして、あれから35年もの年月を経て、一体何百回、何千回聴いたか分からない今「セプテンバー」を聴くと、
その至福感は色褪せるどころか、ますます色濃くなっています。
永遠に古びないところがアース・ウィンド・アンド・ファイアの楽曲の凄さですが、
今回改めてこの曲をよくよく聞いてみたところ、演奏の凄さにも気づかされました。
実は、何度も聴いているうちにイントロのテンポとエンディングのリフレインのテンポが違うような気がしてきたのです。
そこでテンポが分かるメトロノームでざっくりですがテンポを推定してみると、
イントロがBPM=122ぐらい、そしてエンディングのリフレインではBPM=128ぐらいでした。
イントロからエンディングまで全体を流れで聴いているとあまりに自然なので気づきませんが、
イントロとエンディングだけを交互に聴いてみると、明らかにテンポが上がっています。
なるほど、だから高揚感があるのか、と納得しつつ、しかし、これは相当な演奏の技量だな、ということも痛感しました。
テンポが上がっているということは、つまりレコーディングの時にクリック(メトロノーム)を聞かずに演奏しているということです。
これは相当スゴいことで、クリックがあれば曲のテンポは同じなので、クリックを聴きながらの個別のパートの部分修正が可能ですが、
クリックがない場合、歌やホーンセクションなどの上モノは別ですが、
ドラムやベース、エレキギターなどのリズムセクションは基本的に修正できません。
ですからセプテンバーのリズムセクションは、おそらく修正なしの一発録音。
それであの、何千回の再生でも鮮度が落ちないグルーヴなのですから本当に凄い。
ベースのグングン押してくるグルーヴ感、そしてエレキギターのグルーヴのツボをついたようなノリのいいカッティング、
ドラム&パーカッションのキレのいい安定したサウンド。全てがポジティブで、音楽への歓喜に満ちています。
時おり、これは本当に人間が作った曲なのだろうか、音楽の神様が与えてくれた宝物なのではないのだろうかと
思うことがあるほど完成度の高い曲だと思います。
アーティスト名:アース・ウィンド・アンド・ファイア
アルバム・タイトル:ベスト・オブ・EW&F Vol.1【完全生産限定盤/Blu-spec CD】
ソニーミュージックジャパン
ところで、この「セプテンバー」にはいくつかのバージョンのカバーがあります。
今回ご紹介するのは、その中でも涼しげで爽やかな、ボサノバ風のアレンジのカバー。
歌っているのは、軽やかな声でCMなどでも引っ張りだこの土岐麻子。
ガットギターとエレクトリックピアノの音色と、土岐麻子のさりげない歌い方が、
オリジナルのセプテンバーにはない、もう一つの魅力を引き出しています。
ちなみに土岐麻子は、お父様が土岐英史という日本屈指のサックスプレイヤー。
彼はジャズシーンのみならず、長年にわたって山下達郎のバンドに在籍するなど、日本の音楽界を支えて来た大御所です。
「セプテンバー」のカバーが収録された「Standard」というアルバムは本人と土岐英史との共同プロデュースとなっているせいか、
日本のジャズとしても、相当シリアスでレベルが高い演奏となっています。
ですから、よくあるJ-popの歌手が、ちょっとジャズを歌ってみたというレベルをはるかに超えたもの。
ジャズマニアにも御一聴いただきたいレベルです。
またこのアルバムで取り上げている曲もまた渋い!
ジャズのスタンダードではコルトレーンの名演で有名な「My Favorite Things」、ジーン・ケリーが映画で歌った「Singin’ In The Rain」、
フランク・シナトラの十八番、「I’ve Got You Under My Skin」、チェット・ベイカーで有名な「My Funny Valentine」、
さらに「Tea For Two」「When You Wish Upon A Star」「Just One Of Those Things」などをガッチリ演奏してます。
また一方でポップスの名曲も取り上げており、ビートルズの「Norwegian Woods(ノルウェイの森)」、
ティアーズ・フォー・フィアーズの名曲「Everybody Wants To Rule The World」、
スティーヴィー・ワンダーの「Another Star」などが取り上げており、
アース・ウィンド・アンド・ファイアの「セプテンバー」もそれらの曲に並んで収録されています。
こちらも秋にピッタリの名盤、ぜひお楽しみください。
アーティスト名:土岐麻子
アルバム・タイトル:Couleur Caf Meets TOKI ASAKO STANDARDS Mixed by DJ KGO
(Denon Official Blog 編集部I)