DA-10 開発者インタビュー(フルサイズ版) Part.1
話題を集めているポータブルUSB-DAC/ヘッドホンアンプ DA-10ですが、10月10日の発売を控えてスペシャルサイトもオープン。スペシャルサイトにもDA-10開発者インタビューは掲載されていますが、公式ブログではフルサイズ版でお送りします。
デノンで初のポタアン、ポータブルUSB-DAC / ヘッドホンアンプ DA-10がいよいよ10月10日から発売となります。
製品の概要はDA-10のスペシャルサイトをご覧いただくとして、
ブログではDA-10の開発の経緯や開発時のエピソードなどを、開発チームの菊池敦が語ります。
ディーアンドエムブランドグループジャパン
P1開発本部 マネージャー 菊池敦
ポータブルUSB-DAC / ヘッドホンアンプ *スペシャルサイトはこちら
DA-10
希望小売価格:オープン価格
発売時期:2014年10月10日
●いい音で音楽を聴けば、もっと奥がある、もっと感動できる、ということがわかる。
■まず最初にDA-10の開発コンセプトについてお聞かせください。
菊池:近年音楽のリスニングスタイルがヘッドホン中心になってきました。
iPhoneなどを持ち歩くことで音楽を聴くきっかけが増えていることはいいことだと思います。
しかし、スマホやiPhoneなどの簡便な機器で気軽に聴くだけで、音楽体験を終わりにしてほしくないのです。
Hi-Fiグレードのいい音で音楽を聴けば音楽はもっと楽しいし、もっと感動できる。音楽にまだまだ奥があることがわかります。
そんなことを伝える切り口にしたかったのが、すでに発売されているUSB-DAC / ヘッドホンアンプ DA-300USBや、
今回発表したDA-10の開発コンセプトです。
■DA-300USBとDA-10の違いはどんな点でしょうか。
菊池:ご覧いただければ分かるようにサイズが違います(笑)。
DA-300USBはコンセントにつないで家で使うものでしたが、DA-10はバッテリーを内蔵したポータブルなUSB-DAC / ヘッドホンアンプです。
持ち運べるタイプのもので、今までデノンが培ってきた音に対する考え方をしっかり実現したのがDA-10だと言えるでしょう。
最近の市場ではポタアンと言われ、数年前から盛りあがっていますが、
このタイミングで製品を出したのは、このカテゴリーでもデノンは自分たちが考える音を実現できる製品を提供したいと考えたからです。
■DA-10は外でiPhone、iPod、iPadをいい音で聴くためのもの、という理解でいいでしょうか。
菊池:ポタアンとして考えれば、それでいいと思います。
ただ注意が必要なのはAndroid系のスマホの場合はDACとしては使えませんのでアナログ接続になります。
またDA-10を持ち歩き専用ではなく、DA-300USBと同じように
自宅でパソコンにつないでPCオーディオを楽しむというケースでも十分にお使いいただけます。
実際のところ、開発陣としてはDA-10は「カジュアルに使える最新形のDAC」というイメージで捉えています。
ですからパソコンとつないでデジタルファイルを再生する、またテレビの音声をステレオにつないでいい音で再生する、など。
世の中に存在しているデジタル音源をとにかく繋いでみて、再生して楽しんでほしいと思います。
●DA-300USBをこのサイズにするには圧倒的な集積度が必要だった。
■実際の開発で大変だったのはどんな点でしょうか。
菊池:DA-10は、2月に発売したDA-300USBの基本的な回路構成や音に関わる心臓部に関しては同じ部品を入れ込んでいます。
なんといってもそれらをこのサイズに収めることが一番大変でした。
8倍以上の体積があるDA-300USBの部品を、iPhoneといっしょに持ち歩いて違和感のないサイズ(厚みはiPhoneとは異なります)に
詰め込むわけですから、それはそれは大変でした。
■DA-300USBを1/8の体積のDA-10のサイズに凝縮するためには、どんなことをしたのでしょうか。
菊池:DA-300USBで使っているデバイスの大きさはわかっていましたから、まずCAD上でシミュレーションして可能な限り詰め込んで、
動かせるギリギリの大きさまでサイズを絞り込みました。
あとは回路の集積度を上げることです。
この大きさでDA-300USBの回路を実現するには、特殊な6層のビルド基板が必要でした。
表面にはパーツが取り付けられており、その間の4つの層には回線のパターンがぎっしりと詰まっています。
■実装ではどんな点で苦労しましたか。
菊池:この集積度ですから、デジタルとアナログを分離した上で、
デジタルとアナログが干渉しないようにグランドパターンをわけるのが大変でした。
ただし小さいことによるメリットも多少はあって、デジタルラインが最短で引ける、マスタークロックのパスも最短で引ける。
このあたりは音質面で有利に働きます。
ただ基板のプリントのパターンだけでは流れにくい箇所、たとえば電源まわりなどでもっと電流をしっかり確保したいという部分もあり、
そうした部分に関してはプリントのパターンにワイヤーを繋ぐことで電流を通りやすくするなど、
見えない部分ですが、けっこう泥臭い手法で、音質改善のための努力をしています。
■基板を見ると、結構大きなパーツも使われていますね。
菊池:音に関わるパーツについてはDA-300USBと同じパーツを使っています。
ケースの高さの都合で寝かしたりはしていますが。それ以外の部分ではこのサイズに納まるパーツは限られていますので、
パーツ選びに苦労しました。特に電池探しは本当に大変でした。
●DA-10の中身は完全にHi-Fiだと言っていい。
■かなりの苦労でDA-300USBの主要な部品と基本的な回路を凝縮した、ということですが実際の音作りはどんなコンセプトでしょうか。
菊池:音に関しては、製品のカテゴリーやグレードが変わっても、
デノンが出したい音というものが明確にあり、それは変わることがありません。
ですから「DA-10だから、こういう音を目指した」というものはなく、やはり目指した音はデノンのフィロソフィーであるところの
「音像、音場がブレない」「演奏家や制作者が音楽や映画に込めた感情などを再現できるようにエネルギーロスがない」
そして「聴き疲れしない心地よい音質」ということです。
製品にデノンのロゴが刻まれている以上、この考え方にブレはありません。
ただ、実際の所DA-10の開発当初は「アドバンスドAL32プロセッシング*(以下AL32)はどうしようか?」って言っていたんです。
やはりそのデバイスを入れるということはサイズやコストに関わりますから。
でもAL32を入れることで、しっかりした音が出せるのだから、
サイズ的に不可能でなければ入れよう、ということになり、なんとか搭載しました。
ポタアンというカテゴリーは今ちょうど話題になっていることもあり、
わりとイメージやカッコ良さが優先されているように思えるかもしれません。
でもデノンとして出す以上はチャラいものは認められません(笑)。
手前味噌ですが、DA-10って見た目はカッコいいですが、中身は完全にデノンのHi-Fiなんですよ。
*アドバンスドAL32プロセッシング:デノンフラッグシップモデルCDプレーヤーDCD-SX1に搭載されているアナログ波形再現技術
■実際の音作りで苦労した点はありますか。
菊池:こういうサイズの製品なので、どうしても音像が上へ上へと行ってしまい、どんどん腰が軽くなってしまう傾向があります。
ですから音像のしっかり感、そこは重点的に狙いました。
あとはヘッドホンでの再生がメインとなる機器なので、ヘッドホン中心で音質評価を行いました。
実はヘッドホンとスピーカーでは、かなり周波数のバランスが違うので、そこも注意したポイントです。
次回はDA-10のバッテリーや様々な機能について、そしてデザインについてのお話です。
(Part2に続きます)
ポータブルUSB-DAC / ヘッドホンアンプ DA-10 スペシャルサイト
(Denon Official Blog 編集部I)