PMA-50開発者インタビュー Part.1
DSD 5.6MHzに対応したUSB-DAC搭載のコンパクトな新世代プリメインアンプPMA-50が発表されました。今回は設計者であるCSBUデザインセンターの山内慎一にインタビューしました。
DSD 5.6MHzに対応したUSB-DACを搭載したコンパクトな新世代プリメインアンプPMA-50が発表されました。
今回は設計者であるCSBUデザインセンターの山内慎一に開発時のポイントやエピソードなどをインタビューしました。
USB-DAC / プリメインアンプ
PMA-50
希望小売価格:68,000円(税抜価格)
発売時期:2015年1月中旬
製品の詳細はこちらをご覧ください。
D&M CSBUデザインセンター 技師 山内慎一
■まずPMA-50の開発の経緯について教えてください
山内:2014年は、デスクトップのDA-300USB、ポターブルのDA-10といった、いわゆるPCと親和性の高いコンパクトなDACをリリースしてきました。
これらはおかげさまでご好評いただいているのですが、いずれもヘッドホンでの再生をメインとした製品です。
そこで、同じシリーズでスピーカーをちゃんと鳴らせるものがほしいよね、という意見が自然の流れで出てきました。
■ということは、PCオーディオでのユースがメインと考えていいですか。
山内:そう考えています。
仕様としては50W+50W(4Ω)の出力を持ったプリメインアンプで、入力はパソコンからのデジタル入力(USB type B)、CDプレーヤーなどの光デジタル入力×2、同軸デジタル入力×1、そしてアナログ音声入力を持っています。
また出力としては、スピーカーLRに加えて、サブウーハープリアウト、そしてヘッドホン出力も装備しています。
PMA-50リアパネル
ヘッドホン端子はフロントパネルに装備
■サブウーハープリアウトが搭載さているのはなぜでしょうか。
山内:PCオーディオ、デスクトップオーディオではL/Rで非常にコンパクトなスピーカーを使い、低音はサブウーハーで補強するという、いわゆる2.1chのシステムを組む方もいらっしゃるので、それでサブウーハープリアウトを装備しました。
実際にはサブウーハーを使わなくても大型のスピーカーを十分駆動できる力は持っています。
■今回のアンプは「新世代クラスDアンプ搭載」を謳っています。デジタルアンプを採用したのはどうしてでしょうか。
山内:このコンパクトな筐体サイズで通常の方式のアンプを作ると、まず発熱の問題が生じます。
今回はデザインのコンセプトとして、DA-300USB、DA-10のデザインテイストの流れから、穴を開けたくない、ということがありました。
そうすると通常のアンプのように空気を循環させて熱を逃がすことができません。
そのようなデザイン上の要請を考えると、今回クラスDの選択は必然的でした。
■一般的にクラスD、あるいはデジタルアンプは「効率や省スペース性は高いが、音質的には不利」というイメージがありますが、どのようにHi-Fiグレードの音を実現したのでしょうか。
山内:私たちも、開発当初は同じようなイメージを持っていました。
しかし、実際はデジタルアンプの世界でも次々とイノベーションが起きており、非常に優れた音質のテクノロジーも出てきています。
今回はそれらの技術とデノンが培ってきた技術を掛け合わせることで、コンパクトでありながら、Hi-Fiグレードの高音質が実現できました。
■DDFAという技術を使ったそうですが、それにはどんなメリットがあるのでしょうか。
山内:デジタルアンプのソリューションとしては、実際に4つほどの候補を出し、これらで実際に音を出して決定しました。うち3つは、従来のデジタルアンプのイメージどおりのものでした。
具体的に言えばサウンドステージがコンパクトだったのです。
それはミニコンなどの用途にはむしろ適した特性である一方、Hi-Fiとしては使いづらいという印象でした。
そして残った1つが今回採用に至ったCSR社製のDDFA(Direct Digital Feedback Amplifier)というテクノロジーでした。
DDFAのサウンドはサウンドステージが非常に広く、音場が明瞭で定位がはっきりしており、Hi-Fiとして使える可能性を強く感じました。
またDDFAは出力段や電源回路にデノンのノウハウを活かせる余地が存分にありましたので、この方式を採用して開発を開始しました。
■DDFAは音質面で新世代といっていいものなのでしょうか。
山内:そうですね。ここ数年で出てきた新しいソリューションですが、正直言って「デジタルもここまで来たのか」と感じました。
また我々にとってDDFAが好都合だったのは、先ほどもお伝えしましたが、DDFAは単に増幅をするだけのソリューションであり、出力段や電源は我々がこだわりを込めてディスクリートで設計できるという点です。
デジタルアンプは入力から出力段までオールデジタルで行われますので、非常にS/Nが高い処理が行えます。
そして最終段、スピーカーを駆動するために「PWM変調」を行いますが、ここが音質上非常に重要なファクターとなります。
これらの部分に今までデノンが培ってきた技術が投入できるため、結果として「デノンのHi-Fiアンプ」のサウンドがしっかりと実現できました。
■デジタルアンプ部分の開発で苦労した点はありましたか。
山内:先ほど申し上げた、音質を決定する最終段の「PWM変調」の部分では苦労しました。
PWM変調された信号を元のアナログ信号に戻す役割のローパスフィルターは、コンデンサーとインダクターで構成されます。
インダクターというのはひらたく言えばコイルです。
このコイルなんですが、最初試していたものは今より銅線の径が細いものでした。ところがどうもサウンドにドライブ感が足りない。
やや平凡な音に感じられました。
そこでコイルの銅線の径を太くしてみたんです。すると明らかに音の押しの強さや低域の張りが変わっていったのです。
回路としてのローパスフィルターとしての性能は変わらないのですが、出音は線の径で敏感に変わってくる。
このあたりはアナログアンプのノウハウとは全く違うところなので、音作りをするのに結構苦労しました。
その他にも、電源部についてはデノンサウンドらしい色や艶を出すために色々試行錯誤しました。
実は整流用ダイオードにはPMA-SX1と同じグレードの物を使ってるんですよ。
ただ電源に関してはいけば、振り返ってみると結局は従来とやっていることは変わりませんでしたね。
アナログでもデジタルでも「アンプは電源が命」ということは変わらないということですね。
■ヘッドホンアウトには専用アンプが搭載されているそうですね。
山内:デスクトップ周りなので、恐らくヘッドホンでの聴取も多いと想定して、ヘッドホンアウトでの音質にもこだわりました。
回路としてはDA-10の回路を踏襲しており、ヘッドホンで聴いていただいてもかなりの高音質でお楽しみいただけると思います。
ハイインピーダンスのヘッドホンでも十分な音量が得られるように、3段階のゲイン切り換えも用意しています。
(Denon Official Blog 編集部I)