AH-GC20開発者インタビュー
4月下旬発売のワイヤレス・ノイズキャンセリングヘッドホンAH-GC20。前回はノイズキャンセリングに絞ってご説明しましたが、ほかにもスペシャルな特長が盛りだくさん。そのあたりを開発者の福島欣尚が語ります。
4月下旬発売のワイヤレス・ノイズキャンセリングヘッドホンAH-GC20。
前回のデノン公式ブログでは概容とノイズキャンセリングに絞ってご説明しましたが、ほかにもスペシャルな特長が盛りだくさん。
そのあたりについて、AH-GC20の開発者である福島欣尚が語ります。
ワイヤレス・ノイズキャンセリング・オーバーイヤー・ヘッドホン
AH-GC20
オープン価格 4月下旬
AH-GC20 プレスリリースはこちら
D&Mホールディングス エンジニア 福島欣尚
■AH-GC20の開発コンセプトについて聞かせてください。
福島:シンプルに言えば、ワイヤレスとノイズキャンセリングの両方の機能を持ったオーバーイヤー・ヘッドホンです。
グローブ・クルーザーというシリーズで、通勤や出張などビジネスパーソンに使っていただきたい、というのものあり、デザイン的には高級感のある落ちついたものになっています。
■デザインとしてこだわった点はどんなところでしょうか。
福島:スーツやネクタイを身につけた時でもフィットするように、色はマットな黒を基調にしています。
シックで落ちついた色調なので、質感や素材感には徹底的にこだわりました。
ヨーロッパのプロダクトデザイナーと協業しながら作りましたが、かれらはコンセプトとして「セクシー」という言葉をよく使っていましたね。
■具体的にはどんな部分が「セクシー」なのでしょうか。
福島:全体的に角張った部分がなくラウンドしたデザインになっていますので、柔らかい感じがすると思います。
ビジネスシーンにも似合うようなヘッドホンって、男性的なものが多いと思うのですが、AH-GC20は女性でも使ってもらえる柔らかさがあると思っています。
デザイナーが特にこだわったのがヘッドホン本体を把持しているハンガーです。
デザイナーが「プラスチックは絶対に嫌だ」ということでアルミのダイキャストを使いました。
■確かに有機的な感じ、生物の骨のような印象です。
福島:この複雑で有機的な形状と艶消しの金属の質感が、AH-GC20のデザインの大きな特長だと思います。
これが、デザイナーがいうところの「セクシー」なのだと思います。
でも、これは作るのがとても大変で、かなり苦労した点でもあります。
■金属製ということで、音質的にもメリットがあるのでしょうか。
福島:これはアルミアロイという金属で、強度があり、また内部損失が高い素材です。
それによってハンガーの振動が減りますので、音質的な貢献も大きいところです。
■他にも同じようにデザイナーがこだわった部分はありますか。
福島:スライダーの部分も金属になっています。
スライダーの上には数字が入っているのですが、これも「塗装はNG」と言われましたので、レーザーで刻印しています。
他にも「ネジをもっと減らしてほしい」というオーダーもありました。
ネジを減らしたいのは山々ですが、できあがってから言われたので大変でした(笑)。
このあたりも強度を保ちつつネジを減らすのは、設計としては非常に苦労した点です。
■ハウジングにも特長があるのでしょうか
福島:ハウジングには「GFRP」という素材を使っています。
これは一見普通のプラチックに見えますが、「グラスファイバーレインフォースドプラスティック」といって、ナイロンにグラスファイバーを20%入れた素材です。
プラスチックの中でも強度が高いナイロンに、さらグラスファイバーを混ぜることでより一層強度が上がり、ABSなどの普通のプラスチックと比べると「鳴き」のない高音質が実現できます。
■GFRPは他のヘッドホンでも使われているのでしょうか。
福島:AH-D600 などでも使われていて、音響面のメリットはすでに実証済みです。
ただ実は他社ではあまり使われていません。
というのも、まずGFRPは素材としてコストが高いんですね。
だから大きめの外装部品ではあまり使われません。
それと実は製造も大変なんです。
射出成形が難しかったり、バリが出やすかったり。
そのような点から工場では避けられがちなのであまりみなさん使いたがらないのですが、デノンはあえて「音の良さ」の面からこのGFRP素材を使っています。
■内部の造形がまるでモダンアートのように素敵ですね。
福島:「とにかく薄くするように」というのが絶対的なトップ命令でしたので、無駄な部分をギリギリまで削っていったらこの形になりました。
美しさを狙ったワケではなく(笑)。
この上に基板やバッテリーが載りますから、見えなくなってしまいますけどね。
この「薄くする」苦労も大変でした。
■ワイヤレスについてはいかがでしょうか。
福島:一度コードレスの世界を知ってしまうとなかなか戻れないんです。
そんなわけでワイヤレスのヘッドホンが増えてきていますが、ノイズキャンセリングとBluetoothが両方同時に使えるヘッドホンって、あまりないんじゃないでしょうか。
AH-GC20のワイヤレスはもちろんBluetoothです。
ちょっと前だと「Bluetoothは音が悪い」と言われていた時期もありました。
でもここ数年でデバイスの技術が飛躍的に向上しかなり音が良くなっていて、AH-GC20は現在最も高音質な「aptX low latency」に対応しています。
aptX low latencyはまだ対応機器が少ないぐらい最新のコーデックですが、音質的にはCDグレードの音質を実現しています。
またaptX low latencyは「低遅延」も大きな特長です。
今までのワイヤレスは動画を見る時に使うと、画像と音にズレが出てしまうことがありました。
しかしaptX low latencyは遅延が少ないので、動画などを楽しむ際もストレスなく楽しむことができます。
■バッテリーはどのくらい持つのでしょうか。
福島:バッテリーは充電式のリチウムイオンバッテリーを搭載していますが、可能な限り大きなバッテリーを積むことで、ノイズキャンセリングと両方生かした状態で20時間連続再生が可能です。
ノイズキャンセリングとBluetoothはそれぞれ個別のON/OFFができますし、外出先でバッテリーが切れたときでも付属のオーディオケーブル(1.3m)を接続して、通常のパッシブヘッドホンとして使用することができます。
ちなみに付属のケーブルは伝送特性に優れた高純度な無酸素銅(OFC: Oxygen-Free Copper)を採用しています。
■かなり長時間バッテリーが持つのですね。
福島:大型のバッテリーを積んだことと、消費電力をギリギリまで抑えた省電力設計で実現しました。
■持ち運びを考えるとコンパクトさも重要ですよね。
福島:我々は「2軸構造」とは呼んでいますが、できるだけコンパクトになるような折り畳みの構造を採用しました。
またAH-GC20には専用のセミハードキャリングケースが付属していますので、アクセサリーも合わせてコンパクトに収納でき、持ち運びにも便利になっています。
ヘッドホンのノイズキャンセリング機能は今回かなり効きがいい、と自負しています。
ただこればかりは実際に体験していただかないとおわかりいただけないことなので、
AH-GC20が店頭に並んだら、ぜひお試しいただきたいと思っています。
(Denon Official Blog 編集部I)