映画「ジェームス・ブラウン〜最高の魂(ソウル)を持つ男〜」
「ソウルのゴットファーザー」と称されるJBことジェームス・ブラウン。ステージからはうかがい知ることのできなかった面までも描いた、音楽ファン必見の伝記映画「ジェームス・ブラウン〜最高の魂(ソウル)を持つ男〜」をご紹介します。
「ゲロッパ!」のかけ声で有名なファンクのゴットファーザーこと、ジェームス・ブラウン。
その圧倒的なステージパフォーマンスは、マイケル・ジャクソンにも、プリンスにも、そしてミック・ジャガーにも強い影響を与えたと言われています。
今回は、そんなステージからはうかがい知ることのできなかった面までも克明に描いたファン必見の伝記映画「ジェームス・ブラウン~最高の魂(ソウル)を持つ男~」をご紹介します。
「ジェームス・ブラウン〜最高の魂(ソウル)を持つ男」
2015年5月30日シネクイントほか全国公開
配給:シンカ/パルコ
(C)Universal Pictures(C)D Stevens
この映画で描かれるのは、アメリカのソウル・チャート史上もっとも多くのヒット・シングル(118曲)の記録を持つJBことジェームス・ブラウンの人生。
華やかでファンキーなステージの姿だけからはうかがい知ることのできない、彼の人生そのものです。
まず驚かされたのは幼少期の苛烈さでした。
今までも漠然と「貧しい家庭環境で刑務所にも入ったことがある」という程度のことは知っていましたが、この映画では生い立ちや、刑務所に入った経緯などが克明に描写されており、その厳しさは想像を超えるものでした。
また生涯無二の親友となるボビー・バードとの出会いや、音楽をはじめたばかりの頃のエピソードもていねいに描かれます。
またヒットを飛ばしてスターになってからのことでも、いろいろ知らないエピソードがありました。
たとえばビジネスのこと。
彼は何かと不利な黒人アーティストという立場でありながら、ライブのブッキングをプロモーターを介さずに自分たちで行うなど、保守的なショービズの世界に革新的な道を切り開いて成功を収めていきました。
1962年にニューヨークのブラック・ミュージックの殿堂アポロ・シアターで録音されたライブアルバムも、実はレコード会社からの反対を押し切り自費で録音したものだったそうです。
結局このアルバムは未曾有の大ヒットになりました。
この映画のもう一つの見どころは、ライブシーンの迫力でしょう。
1971年にパリのオランピア劇場で開かれたコンサートの様子が描かれますが、その素晴らしい演奏は、レコード会社にアーカイブされていたオリジナルマルチトラックの音源を使用した実際のJBの歌とそのバックバンドの演奏そのもの。
JBバンドの大番頭であるメイシオ・パーカー(Sax)やブーツィー・コリンズ(Bass)といった名手たちの脂の乗り切ったライブ演奏が大音量で味わえます。
バックシンガーやバンドの振り付けや演奏のタイミングもピッタリで、まさに迫真の演技。
特にJB役のチャドウィック・ホーズマンのアクションは、まるで本物のJBのようにファンキーで鋭いキレ。
今は亡きJBのライブが大迫力で追体験できる、という意味でもこの映画は十分見る価値があると言えるでしょう。
面白いのは、この映画にちょっとだけですが若い頃のローリング・ストーンズが出てくるところです。
「ストーンズ、ついにアメリカ初上陸!」という時で、アメリカのテレビショーで共演したのですがJBは「手荒な歓迎だ」とばかりにもの凄い演奏をして袖のストーンズを圧倒します。
実はこの映画、プロデューサーはストーンズのミック・ジャガーが務めているのですが、彼はこう語っています。
「ジェームス・ブラウンは、俺にすごくインスピレーションを与えてくれた。
たくさんのことを彼から学んだ。
彼の動きをまねるということではなく、彼の態度、仕事ぶり、そうしたものを学んだ。
彼が成し遂げたことを尊敬している。
ジェームス・ブラウンの人生は、尽きることのない魅力に満ちて、きわめて感動的だ。
彼の伝記映画の作り手となれて光栄だ」
このコメントから見るに、恐らく、この映画で描かれているシーンは本当のことで、初めて間近でJBを見たとき、相当ショックを受けたんだろうな、と思いました。
またキャストではジェームス・ブラウンの敏腕白人マネージャー役としてあのダン・エイクロイドが演じているのも見逃せません。
ダン・エイクロイドと言えば「ブルース・ブラザース」。
そして「ブルース・ブラザース」での最大の見どころといえば、ジェームス・ブラウン扮するゴスペルの熱狂的な牧師のパフォーマンスです。
この映画の中でダン・エイクロイドは決して派手なことはしていませんが、誠実なマネージャーとして、親身になってジェームス・ブラウンを支え続けます。
その控えめでていねいな演技の中に、亡きジェームス・ブラウンへの本物の友情が込められていように感じました。
実にいい映画です。
ソウル、ブラックミュージックファンのみならず、あらゆる音楽ファンにオススメしたいと思います。
(Denon Official Blog 編集部 I)