AVR-X4200W開発者インタビュー Part.1
デノンのAVアンプの中堅モデルであり、市場でも高いシェアを誇るAVR-X4000番台の最新モデルであるAVR-X4200Wがいよいよ発売となりました。その設計思想やコンセプトについて、設計者にインタビューしました。
デノンのAVアンプの中堅モデルであり、市場でも高いシェアを誇るAVR-X4000番台の最新モデルであるAVR-X4200Wがいよいよ発売となりました。
その設計思想やコンセプトについて、設計者にインタビューしました。
7.2ch AVサラウンドレシーバー
AVR-X4200W
150,000円(税抜価格)
10月中旬発売
製品の詳しい紹介につきましてはこちらをご覧ください。
CSBUデザインセンター 技師 高橋佑規
CSBUデザインセンター 愛甲 英寿
■まずAVR-X4200Wについてご紹介ください。
愛甲:AVR-X4200WはデノンのAVアンプのミドルレンジ、
つまり中堅を支えているアンプです。
デノンのX4000番台のモデルの属するミドルクラスは、機能に関しても、音に関しても、
いずれもお客さまからの期待が高いクラスですから妥協はできません。
しかもX4000番台はその中でも常に市場での評価も高く、
歴代モデルは常にオーディオ誌の賞も受賞しています。
事実、デノンのAVアンプの中でも最も売れ行きのいいシリーズでもあります。
■AVR-X4200Wのセールスポイントはどんな点でしょうか。
愛甲:前モデルAVR-X4100Wで世界初のドルビーアトモスに対応しましたが、
今回はアトモスに加えて、DTS:X、4K Ultra HDビデオ・パススルー対応や、
4K映像画像コンテンツに対する著作権保護技術HDCP 2.2に対応するなど
ほぼホームシアターの最新機能が「全部入り」の状態です。
また音質にも磨きをかけています。
今年はAVRのフラッグシップモデルであるAVR-X7200Wが発売されましたが、
その開発で培われた音質向上のための技術を全面的に投入しました。
音質面はカタログなどでは具体的な向上度を訴求しにくい点ですが、
かなり向上しているので、そこは強調したいと思います。
高橋:AVR-X4200Wは機能と音、どちらも妥協できない大切なモデルですが、
実際の所、今回の開発のポイントは、これだけの機能や音質が向上したのに、
「価格は据え置き」というところだったと思います。
これもカタログには書けませんが(笑)。
普通なら機能が増えた分、なにか工夫をしない限り価格が上がってしまいます。
■価格を据え置くためには、どういった点で工夫したのですか。
愛甲:部品の共通化、デバイスメーカーさんとの交渉、それに音質に直接関わらない部分の
制御部品に関してはコストの調整を図りました。
高橋:設計/デザイン上では「金型を変えない」というのが大きいと思います。
新製品の場合、金型にかなりのコストがかかります。
AVR-X4200WとAVR-X4100Wは共通の金型を使っていますので、
中身は大きく変わっていますが、デザインはほとんど変えませんでした。
■見た目は変わらないが、中身が大きく変わっているということですが、
AVR-X4100W とX4200Wでは具体的にどんな点が進化しているのでしょうか。
愛甲:機能の向上については先ほど申し上げました。
音の面では具体的にはAVR-X4100Wで採用した制振性の高いフット、
またシャーシをより強固にするといった
「ダイレクト・メカニカル・グラウンド・コンストラクション」は維持しつつ、
さらに様々な面で改良を施しました。
特に大きいものとしてはスイッチング・モード・パワー・サプライの
スイッチング周波数を上げた点、大容量カスタムブロックコンデンサー採用、
そしてDACの回路の刷新の3点が挙げられます。
※「制振性の高いフット」などを掲載したAVR-X4100W開発者インタビューはこちら
■スイッチング・モード・パワー・サプライのスイッチング周波数を上げると、
どんな効果があるのでしょうか。
愛甲:スイッチング・モード・パワー・サプライとは、パワーアンプなどの
アナログ回路以外の回路に電源を供給するためのデジタル電源回路です。
このスイッチング周波数を従来モデルの3倍にしています。
デジタル電源回路はどうしてもスイッチングによるノイズが
発生してしまいますが、この周波数を90kHz以上に上げることでノイズを
オーディオ帯域、つまり可聴範囲から追い出したわけです。
↑AVR-X4200Wのスイッチング・モード・パワー・サプライ
■カスタムブロックコンデンサーの大容量化にはどういうメリットがありますか。
愛甲:このブロックコンデンサーはパワーアンプの電流供給源です。
その容量を大きくしました。
容量としては12,000uFから15,000uFに向上しています。
高橋:それによって瞬間的な大出力が必要な時、急激な電流供給に対応できるようになり
瞬発性が上がります。
結果として今までよりもさらに力強く低域を鳴らすことができるようになりました。
■DACの回路の刷新については?
愛甲: AVR-X4200Wは32bitの最新のD/Aコンバーターを採用しました。
これはAVR-X7200Wで採用したD/Aコンバーターと同じシリーズのもので、
非常に高いスペックが高く、歪みが少ないのが特長です。
高橋:このD/Aコンバーターを選んだのは、S/Nなどのスペックがいい、
というだけではなく、サウンドにも可能性を感じたからです。
スペックが良くても、必ずしもオーディオとしていい音が出るとは限りません。
しかも我々は単なる「いい音」ではなく、「デノンサウンド」を鳴らしたいわけです。
その観点から、このD/Aコンバーターには可能性を感じました。
↑AVR-X4200W(手前)のDAC基板。
AVR-X4100W(奥)のDAC基板と比較すると使用されている
コンデンサーの数が増えているのがわかる。
■「可能性を感じた」とはどういうことでしょうか。
高橋:今回採用したD/Aコンバーターの持ち味は、言葉にすれば「端正」な音像です。
最初の試作時では非常に解像度の高い緻密なサウンドだと感じました。
この音をどうやってデノンサウンドに仕上げていくか。
それが我々の音作りの核心になるわけです。
デノンサウンドには、余裕のあるエネルギッシュな低域は必要不可欠な要素であると考えていますがこのD/Aコンバーターがベースなら、新しいデノンサウンドが作れるな、と思いました。
そこで、このD/Aコンバーターの持ち味を活かしながらそれを実現するために、コンデンサーの追加による電源部分の強化やポストフィルタなど周辺回路の作りこみを行いました。
愛甲: こうした贅沢なことができるのは、D/Aコンバーターのために独立した
専用の基板を用意したからです。
通常であればD/Aコンバーターは
映像回路などのデジタル回路と同じ基板に載っていることが多いのですが、
AVR-X4200Wでは独立基板とすることで音質を重視したパーツを選ぶことができました。
同時にノイズや相互干渉の問題も激減します。
■AVR-X4200Wは先代からかなり大幅な進化を遂げていることがよくわかりました。
高橋: いまはAVR-X4200Wという1モデルでの進化をお話しましたが、
実はデノンのAVアンプの進化は継続的に行われています。
10年前のAVRの設計とは、設計思想がかなり違ってきているのです。
(以下、PART2に続きます)
(Denon Official Blog 編集部 I)