映画「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) 」
明けましておめでとうございます。新年最初のエントリーは、昨年のグラミー賞作品賞をはじめ主要4部門を独占した、バットマンのマイケル・キートン主演、サウンドトラックが全編ドラムソロという映画「バードマン」をご紹介します。
明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。
みなさま、お正月はいかがお過ごしだったでしょうか。
私は昨年映画館で見て大変感動した何本かの映画をBlu-rayで購入し、家でゆっくり堪能していました。
今回ご紹介するのは、そのうちの1本。
映画として素晴らしいだけでなく、サウンドトラックも素晴らしい。
しかもほとんどがドラムソロです。
バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
ブルーレイ発売中
¥4,752+税
20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン
※(C)2015 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
http://www.foxjapan.com/birdman
映画「バードマン」は2015年(第87回)のグラミー賞で、作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞と4冠を達成した名作。
監督はメキシコ出身の鬼才、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。
イニャリトゥの監督作品として有名なものには、菊地凛子、役所広司、ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェットなどが出演した「バベル」(2006年)があります。
「バベル」は日本でも大ヒットを記録し、菊地凛子がグラミー賞の助演女優賞にノミネート。
エンディングロールでは坂本龍一の音楽「美貌の青空」が強い印象を残しました。
「バードマン」の主役はバットマンの俳優として有名なマイケル・キートン。
映画の中でもスーパーヒーロー映画でスターになったものの、その後ヒット作に恵まれず私生活でも失敗した落ちぶれた役者の役を実にリアルに演じています。
ストーリーとしては、落ちぶれたこの役者が再起を期して、レイモンド・カーヴァーの文学作品を演出し、自ら主演してブロードウェイの舞台に立つ、というもの。
ぜひ映画をご覧いただきたいのでネタバレを避けるために、これ以上のストーリーは書きませんが、エドワード・ノートン、ナオミ・ワッツ、エマ・ストーンなどの演技のアンサンブルが素晴らしく、脚本も非常に巧みで実にドラマチック。
さらに撮影や編集にも徹底的に凝っていて、シーケンスの繋ぎかたが絶妙。
まるで映画全編がまったくカット無しのワンショットのように見えます。
特にバブル期に青春だった、という年齢の方が見ると(私がそうです)、ヒリヒリする切実さが感じられるのではないでしょうか。
しかし、冒頭に書いたように、この映画の素晴らしさは、キャスト、演技、撮影、脚本だけではありません。
音楽賞にノミネートされなかったのが不思議なぐらい、サウンドトラックに素晴らしい音楽が使われています。
映画があまりに素晴らしいので、一回見ただけでは気づきにくいのですが、実は、この映画のサウンドトラック、そのほとんどが、ドラムだけで演奏されています。
実に斬新で、しかも素晴らしい音と演奏。
サウンドトラックを聴くだけのためにもう一度映画館に行ってしまったほど。
この映画の素晴らしさに大きく貢献しています。
サウンドトラックを買ってみると、CDに収録されたこの映画のオリジナルサウンドトラックのうち22曲中16曲がドラムのソロ曲。
あとの6曲は映画中の劇のために選ばれたクラシックですから、純粋なサウンドトラックとしてはドラムソロだけです。
このドラムをぜひ聞いていただきたいのですが、いわゆるロックコンサートで聴くようなドラムソロとは全く違って、非常に繊細で深い音楽性を感じさせるものです。
打楽器ですからピアノやバイオリンのようなメロディはありませんが、プリミティブな打楽器の響きをアンサンブルさせることで、ここまで強く心に響くのか、と驚かされます。
映画におけるムード、あるいは登場人物の心象風景が、「ドラム」という楽器だけで見事に描き出されています。
アルバム・タイトル: BIRDMAN(O.S.T)
「バードマン」でドラムを叩いているのは、アントニオ・サンチェス。
彼は監督と同じくメキシコ出身で、現在最も人気のあるジャズドラマーのひとり。
主にパット・メセニーとの活動が有名です。
10代ですでにプロとして活躍し、メキシコ国立音楽院でクラシックピアノを学んだ後、1993年にバークリー音楽大学、ニューイングランド音楽院に進学するためボストンへ。
2000年以降はパット・メセニー・グループなどにドラマーとして参加しています。
また2015年には、ブラッド・メルドー、ジョン・スコフィールド、クリスチャン・マクブライド、ジョン・パティトゥッチという現代ジャズシーンの超一流プレイヤーを起用したアルバム“Three Times Three”もリリースし、話題を集めています。
この映画を見た後は、アントニオ・サンチェスが参加しているアルバムもぜひ聴いてみてください。
アーティスト名:パット・メセニー・ユニティ・グループ
アルバム・タイトル:「KIN(←→)」
(Denon Official Blog 編集部 I)