カスタムインストーラーとは何か? 「カデンツァ」訪問記
カスタムインストールという言葉をご存じでしょうか。ホームシアターやオーディオ機器を自分の好みに合わせてインストール(導入設置)するという意味です。今回はカスタムインストールを専門としているカスタムインストーラー、湘南・葉山にあるホームシアターとオーディオ・ビジュアル専門店「カデンツァ」をご紹介します。
ホームシアターといえば、家で映画館のようないい音といい映像で映画が堪能できる、映画好き、音楽好きには夢のような空間です。
しかし実際に家でホームシアターを組むとなると、スピーカーがたくさんあって、ケーブルもたくさんあって、接続や設置も面倒で、と億劫になっている方も多いのではないでしょうか。
また自分はホームシアターを作りたいし、知識もあるのだが、家族からの風当たりが強くて踏み切れないという方も、このブログの読者にはさぞかし多いのではないでしょうか。
そんなあなたにお勧めしたいのが、カスタムインストールです。
カスタムインストールという言葉自体は、オーディオに限らず、自分の好みにインストール(導入設置)するという意味ですが、ホームシアターなどのAV機器を、建築やインテリアにあわせてスマートに設置する専門のプロショップがあります。
それがカスタムインストーラーです。
今回はカスタムインストーラーのパイアニアであり、ホームシアターづくりのバイブルでもある『ホームシアターハンドブック』の著者、峰松啓さんが主宰する湘南・葉山のホームシアターとオーディオ・ビジュアル専門店「カデンツァ」をご紹介します。
湘南・葉山のホームシアターとオーディオ・ビジュアル専門店
カデンツァ
http://www.cadenza01.co.jp/
〒240-0112神奈川県三浦郡葉山町堀内172-1
カデンツァ株式会社 代表取締役・インストーラー 峰松 啓さん
●今回はデノンオフィシャルブログの読者のみなさんに「カスタムインストール」についてご紹介したいと思い、第一人者である峰松さんにお話をうかがいに参りました。よろしくお願いします。
峰松:よろしくお願いします。
●まず「カスタムインストール」について教えていただけますでしょうか。
峰松:「カスタムインストール」は、まだまだ知名度が低い言葉です、一言でいえば建築インテリアとAV機器をうまく融合させて設置することだと思っています。
●具体的にはどういうことでしょうか。
峰松:AV機器は、建築家やインテリアを設計するデザイナーから嫌われる存在なんです。
また、奥様など女性の方もオーディオを嫌う方が多いです。
たとえば高級なスピーカーだと上にツイーターがついていたりしますが、奥様から「あれ、取り外せないの」と言われたりします(笑)そうした機器をインテリアに調和させるわけです。
●それは大変ですね。
峰松:私も長い間電機メーカーでのホームシアター・ビジネスをしてきたのでわかりますが、メーカーというのはどうしても技術志向で、単品志向なんですね。
デザインされた空間に置くものとしては、どうしても違和感があるんです。
最近は少しインテリア志向のデザイン性を持った製品が出てきましたが、まだ大部分がインテリアにはマッチしません。
●そこで、インテリアとAV機器とを調和させるのがカスタムインストーラーの仕事なのですね。
峰松:はい。私はカデンツァを2001年に始めましたが、「家の中の様々な空間それぞれに最適な映像と音のしつらえを施す」ということをコンセプトにしています。
↑カデンツァ施工事例 この完璧にデザインされた空間にAV機器が絶妙にインストールされている
●カデンツァは最初からカスタムインストールのショップとして作られたのでしょうか。
峰松:はい。ピュアオーディオはすでに趣味層の男性で飽和していると私は考えていましたので、オーディオのユーザーをさらに拡大するのなら女性層を取り込むしかない。
そのためにはインテリアと融合しなくてはならないと考え、インストーラーをやろうと考えたのです。
●お客様からの反応はいかがでしたか。
峰松:当時オーディオ機器を普通にセットする店はたくさんありましたが、住宅のインテリアにマッチさせてインストールするショップはまったくありませんでした。
ですから、最初は反応が少なかったですね。ところがはじめて1年半ぐらいした頃から「ホームシアター」に火がつき始めました。
ホームシアターが世に出ることによって、建築にどのように音響機器を入れるかという「インストーラー」の仕事に光が当たるようになってきました。
●ホームシアターが出てきたことで「カスタムインストール」という概念が伝わるようになったのでしょうか。
峰松:そう思います。ちょうどその頃、ある雑誌のインテリア・コーディネーター養成講座に「ホームシアターについて書いてほしい」と言われて記事を連載しました。
それを一冊の本にしたものが「ホームシアターハンドブック」という本になりました。
↑ホームシアターづくりのバイブルと賞されている峰松さんのご著書「ホームシアターハンドブック」
最新版ホームシアターハンドブック for Professional (別冊ステレオサウンド)
●カデンツァにはどんなお客様がいらっしゃるのでしょうか。
峰松:オーディオが好きなご主人と奥様とがいっしょに相談に来られることが多いですね。
普通のオーディオショップであれば奥様はただついてまわるだけになりがちですが、こちらへいらっしゃった時はできるだけ奥様の意向を聞くことにしています。
↑カデンツァ施工事例 “風の通る家”をコンセプトとしたK邸。存在を主張せずとも、十全なクオリティーをもったシアターを構築したインストール
●女性の意見を積極的に採り入れるということでしょうか。
峰松:そうですね。オーディオは男性の趣味です。クルマなら車庫に入れておけばいいですが、オーディオは家の中のものなので、そうはいきません。
私たちが施工した例でこんなエピソードがあります。
お客様のうち、ご主人はたいていオーディオマニアで、自分が気に入ったオーディオを入れるわけですが、「ここを押すと音が出るから、好きな音楽を聴いていいよ」ってたいてい奥様に言うんです。
でもまったく奥様は触れませんね。男の世界ですから。そこで私は、キッチンに奥様専用のオーディオを入れる提案をしました。
完成後の引き渡しの時、キッチンのオーディオシステムに奥様が好きな曲を流しておきました。
そうしたら奥様が涙を流さんばかりに喜んでくださいました。私のオーディオがやっとできたと。
その時、やってよかったなと思いました。
●それは素敵な話ですね。カスタムインストールですが、なんとなく新築の際に導入するイメージがありますが、カデンツァでは新築での比率はどのくらいですか。
峰松:立ち上げた当初は9割近くが新築でした。今は7割ぐらいでしょうか。
カスタムインストールの基本は「隠蔽配線」といって、ケーブルを外に見せないのです。
床にケーブルが這っているというのはアウトです。
たとえばテレビをつける時には壁に穴を開けてケーブルを壁の内側で下へ出します。
ですから新築はいいのですが、改装だと壁などの工事がはいるので費用がかさんでしまいます。
↑カデンツァ施工事例 77インチの有機ELテレビモニターはスライドドアでしまうことができる
●ところでカデンツァは葉山の素晴らしいロケーションにありますが、お客様は近隣の方が多いのでしょうか。
峰松:神奈川、東京を中心に、関東一円ですね。近隣の方もいらっしゃいますが、いちど気に入っていただくと一生の付き合いになるので、遠いか近いかはあまり関係ないですね。
軽井沢の別荘にインストールしたいというご依頼もよくいただきます。
●それではカデンツァのショールームをご紹介いただけますでしょうか。
峰松:はい。このショールームの1階はカフェでもあるんですが、「アンティーククラシック」をテーマにしていて、古きよき時代のしつらえの中に響く贅沢な音の世界をご紹介しています。
オーディオの歴史に名を残す銘機が揃っており、その音の響きを実際に聴いていただけます。
↑既存のクラシカルな家具の内部に現代の機器をインストールした例
峰松:扉を開けるとわかりますが、重厚なしつらえの家具に現代のオーディオを入れ込んであります。
●2階はまた印象が全然違いますね。
峰松:はい。2階は「スタンダードモダン」と呼んでいます。シンプルなデザインの洋室にオーディオ機器をインストールしています。
こちらもカデンツァのオリジナルのオーディオコンソールで、ピアノの工場で白の鏡面仕上げにしたコンソールです。
レシーバーはデノンのRCD-N9を入れています。デザイン性も高いし、コンパクトでいい音が出せています。
ネットワークCDレシーバー
RCD-N9
製品情報はこちらをご覧ください。
●薄型テレビと組み合わせたシステムも展示されていますね。
峰松:こちらは家族そろって楽しめるリビングシアター、そして寝室などの限られたスペースを有効活用して作るスモールシアターのイメージづくりができるような展示を行っています。
●奥のスペースはシアタールームでしょうか。
峰松:こちらはハイエンドなシアタールームです。
140インチのスクリーンが床まで下りていて、ここに映る映像はほぼ等身大なので画面の中の世界と一体化したかのような、リアルな感動が味わえます。
峰松:サラウンド用のリアスピーカーやオーディオ機器、そして映像ソフトなどは全て背面のパネルにすっきりと収められています。
●これだけ機材があると操作が大変だと思いましたが、1つのリモコンで全て操作できるんですね。
峰松:はい。スクリーン、プロジェクター、アンプ、エアコンから照明まで全ての操作はこのコンパクトなリモコンに集約されています。
●それでは3階をご紹介ください。
峰松:3階は家族が最も長い時間を共有するファミリーリビングと和室でのインストールです。まず和室からご覧ください。
●落ちついた空間ですね。オーディオ機器の存在感がまったくありません。
峰松:和室へのオーディオ機器のインストールは非常に難しいのです。
●ここは茶室なのでしょうか。
峰松:はい。妻が茶をやりますので、炉が切ってあります。時折茶会も催しております。
●で、オーディオですが?
峰松:この孟宗竹が、実はスピーカーなんです。
峰松:和室にはオーディオ機器はどうしても調和しません。
アンプなどは隠せますが、スピーカーはどうしようと思った時に、孟宗竹にスピーカーを仕込むことを思いつきました。
これもカデンツァオリジナルです。実際に京都の孟宗竹にフルレンジスピーカーを入れましたが、これがなかなかいい音がするんですよ。
●竹にスピーカーユニットを入れ込んであるとは驚きました。
峰松:そしてこちらが、リビングです。
●海が一望できる素晴らしいリビングですね。
峰松:ありがとうございます。ここは住まいの中で、家族が最も長い時間を共有するファミリーリビングをモチーフにした空間です。
今日は残念ながら機材の関係でお見せできませんが隣室とを隔てる引き戸には、後ろから映像を投射する透過型スクリーンが仕込まれていて、隣室のプロジェクターから映像を投影できます。
機器は隣室にあるため圧迫感がありません。
峰松:そしてリビングのキッチンの天井には、ダウンライトと同じ口径のシーリングスピーカーが埋め込まれています。
先ほど話した奥様用のキッチンのオーディオシステムもこうしたシーリングスピーカーを使いました。
↑天井に埋め込まれているダウンライトと同じ80mm口径のシーリングスピーカー
峰松:さらにベランダにも実はスピーカーが仕込まれているんです。防水の石型のスピーカーです。
●驚きました! いろんなところにスピーカーがあるんですね。
峰松:ショールーム、お楽しみいただけましたでしょうか。1階ではカフェもやっていますので、ぜひお気軽にお立ち寄りください。
●デノンブログの読者のみなさんにもぜひお薦めしたいと思います。今日はありがとうございました。
(編集部I)