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 (昭和53年)

「完全さを求め・・・デジタルチューニング方式」
「“混変調ひずみ”の大幅な改善を果した画期的なTwin MPX回路」

FM専用オーディオチューナー
TU-1000
標準価格:158,000円

■1978年3月

FM放送随一のレギュラー生番組"デンオン・ライブコンサート”とか昨年放送のPCMダイレクト再生等でも立証されている通り、FM放送は、条件さえ整えばディスク・テープ再生を凌駕する高忠実度再生が可能であると言えます。
一方、高品質のFM電波を高品質で受信するためには、アンテナ系の条件を満たすと共に、FMチューナーを正確に希望受信局に同調させることが絶体条件です。
この点、従来のアナログチューニング方式では、例えクォーツ・ロック方式を採用しても同調点があいまいで正確に受信局に同調することが困難です。
本機TU−1000では、こうした点を解決するため受信周波数をデジタルカウンターで探すデジタルチューニング方式を採用し、同調精度を一桁高めています。(特許申請中)
更にFMチューナーとして備えなければならない基本性能、ひずみ、S/N、セパレーション特性の改善を図るため、LCブロックのリニア・フェーズフィルター、ワイド・ナロウの2系統中間周波回路、高S/N、超広帯域定インピーダンス結合レシオ検波、Twain MPX回路、帯域別セパレーション補正等(特許申請3件、実用新案申請1件)DENONの技術力を集結し、理論解析と多くの実験から帰結した現時点で考えられる最高の性能を備えたFMチューナーと言えるでしょう。


■新開発周波数直線形7連バリコン搭載の高S/Nフロントエンドとクォーツ・ロック方式

高周波2段、トリプル・ダブルチューン(3段の複同調回路)構成によりイメージ、IF、スプリアス妨害比を120dB以上にし、高選択度特性と高い妨害排除能力を実現しています。更に高S/Nとクオーツ・ロックAPCの制御感度を両立させるため、特に厳選したデュアルゲートMOS形FETを使用して、多連フロントエンドの利点を活かしきっています。
局部発振器は、100kHz間隙に置かれた放送局を捕えて行くため、発振周波数を連続的に可変して、発振周波数を受信局に合せ、同時に維持することが必要です。
このため本機は、10MHzの水晶発振器から分周して得られた100kHzの整数倍で局部発振器を制御するクォーツ・ロック方式を採用しています。

■周波数デジタル表示とデジタルチューニング方式(ジャストチューニング機構)

5桁の分解能を持つ周波数デジタルカウンターを搭載し、上3桁をLED表示しています。受信周波数はLEDで表示され更に、下2桁は本機の最大の特長であるデジタルチューニング方式に使用しています。例えば、82.5MHzの放送局を受信する場合、デジタルカウンター部が82.500MHz、つまり下2桁がゼロになった時を検出し、JUST TUNED用のLEDが点灯します。
勿論このままではチューニングポイントがクリチカルで同調が取り難くなるためLEDの点灯範囲を、受信周波数との差が±5kHz以内で(例82.505MHz or 82.495MHz)JUST TUNEDが点灯し、最良の周調点を指示します) この方式は、受信電波が常にフロントエンドの同期回路の直中を通過させることができ従来のアナログチューニングで果せなかった問題を一挙に解決する画期的なものです。
尚、本機はTOUCH SWITCHの機構を設けてありますので、選局の際、チューニングつまみに手を触れるとAPCループのロック回路が解除され、局部発振周波数を連続的に可変できるようになっています。

■微分利得、微分位相特性重視のWIDE BAND、実効選択度重視のNARROW BANDの完全2系統の中間周波増幅部

忠実な信号の伝送と妨害排除能力の両立を計るため中間周波増幅部を2系統に独立させています。ワイドバンドには、特注の4ポールLCブロックのリニアフェーズフィルターを使用し、位相特性を平坦にし低ひずみ率(0.03%)以下を実現、更に、コンポジット信号の主信号部(L+R)と副信号部(L-R)の位相ずれを改善しセパレーション特性を向上させています。
また、ナロウバンドでは新開発のリニアフェーズ形セラミックフィルター(5個構成)を採用(実効選択度90dB以上(400kHz)を実現)しています。

■新考案!! 高S/N、超広帯域定インピーダンス結合形レシオ検波回路採用

本機の開発テーマである高S/Nを実現するため、S/Nで有利なレシオ検波器を取り上げ微分利得、微分位相特性とひずみ量の関係を解析し、新考案の定インピーダンス結合形のレシオ検波器を開発しました。結果は、検波特性を示すS字曲線の直線領域(1.5MHz)を1.5倍以上広げることができ、高調波ひずみ、混変調ひずみを大幅に改善しています。更に、レシオ検波器から発生する雑音の低減を図るため、TU-850同様シリコン接合形ダイオードを検波に採用しS/N95dB以上を実現しています。

■混変調ひずみを大幅に改善した画期的なTwain MPX回路

本機のMPX回路は、パイロット抽出用PLL回路+スイッチング復調回路を2組み持つ画期的な方式です。
第1の特長は、2つのパイロット抽出回路のそれぞれのLPF出力端に現われるにせパイロット信号による交流成分をキャンセルして直流成分のみにします。このため復調用スイッチング信号には、全く位相変調の無い38kHzの信号が得られるため、スイッチング回路で取り出されるLRの信号には不要の成分を含まない、クリアな再生が得られます。従って、混変調ひずみ率は従来の機種に比べ(当社比)10dB〜20dB以上改善されています。
第2の特長は、2組の復調回路から得られるL,Rの信号はそれぞれ足し合わせていますので復調回路内部から発生する雑音のランダム性によりS/Nを3dB向上させています。

■3帯域分割セパレーション補正

再生音の品質は、セパレーションの周波数特性に大きく左右されるため、本機では低域、中城、高域の3つの周波数帯域に分割し、それぞれL→R、R→Lへのセパレーション特性を改善しています。

■対数圧縮指示の大形ピークメーター採用

-50dBの小レベル信号から+3dBまでL,Rの再生音のレべルを適確につかむピーク指示の大形メーターを採用しています。
メーターの0dBは100%のFM変調出力に対応してありますので、エアチェック時に活用できます。
また、これらのレベルメーターは、電界強度のチェックやマルチパスの存在を検出するマルチパスメーターとしても使用することができます。
可変形ミューティングスイッチ採用


■主要規格

  • FM部
    • 受信周波数範囲 76〜90MHz
    • アンテナ端子 75Ω:F型コネクター式、PAL式、ターミナル式
    • 実用感度 1μV、11.2dBf
    • S/N50dB感度 ステレオ:16.5μV 35.7dBf、モノ:1.5μV 14.8dBf、但しμVは75Ω時 0dBfは10-15W(新IHF規格)
    • イメージ妨害比 (83MHz) 120dB
    • IF妨害比 (83MHz) 120dB
    • スプリアスレスポンス (83MHz) 120dB
    • AM抑圧比 65dB
    • 実効選択度 WIDE:36dB(±400kHz)
    • NARROW:90dB(±400kHz)
    • キャプチャーレシオ WIDE:0.8dB、NARROW:1.5dB
    • サブキャリア抑圧比 80dB
    • 周波数特性 20Hz〜15kHz -0.8〜+0.2dB
    • SN比 モノ:87dB、ステレオ:84dB
    • 全高調波ひずみ率
        モノ(100%変調時) ステレオ(90%変調時)
      WIDE NARROW WIDE NARROW
      100Hz 0.05% 0.1% 0.1% 0.3%
      1kHz 0.03% 0.07% 0.04% 0.3%
      10kHz 0.08% 0.15% 0.15% 0.4%
      混変調ひずみ率 0.03% 0.08% 0.1% 0.5%
    • ステレオセパレーション
        WIDE NARROW
      100Hz  55dB 45dB
      1kHz 55dB 50dB
      10kHz 55dB 45dB
    • ミューティング動作レベル 30dBf〜70dBf可変
    • 一次検波出力/適合負荷 350mV(100%変調時/10kΩ以上)
    • マルチパス出力/適合負荷 垂直:150mV(AM30%変調相当時)/10kΩ以上、水平:350mV(FM100%変調相当時)/10kΩ以上
  • 出力電圧適合負荷 固定:1.0V/10kΩ以上、(100%変調時)可変:0〜1.2V/10kΩ以上
  • 同調指示 JUSTTUNED・LOCKED LED表示
  • その他
    • 電源 100V 50/60Hz 23W
    • 占有寸法 410(W)×170(H)×307(D)
    • 重量 約10kg
    • 附属品 F型接栓×1、平行ピンコード×1

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