デノン初の完全ワイヤレス・インイヤーヘッドホンAH-C830NCW、AH-C630Wが登場!
デノンから初めて発売される完全ワイヤレス・インイヤーヘッドホン「AH-C830NCW」「AH-C630W」の新製品発表会が、去る2021年9月下旬、ディーアンドエムホールディングス 川崎本社で開催されました。今回の発表会は、主にオーディオ専門誌やオンラインメディアの記者の方々を招いてのプレス発表として開催されたものです。プレゼンテーションはデノンオフィシャルブログでおなじみの国内営業本部 営業企画室の田中が担当しました。
新型コロナウィルス感染拡大予防のため、1回のセッションは2、3名で実施。数回に分けて開催されました
コンセプトは「完全ワイヤレスでデノンのHi-Fiサウンドを実現する」
まずは「AH-C830NCW」「AH-C630W」はどんなコンセプトで開発されたのか、発表会はそこからはじまりました。
田中:Bluetooth接続のスマホが増える中、満を持して登場したデノンの完全ワイヤレス・インイヤーヘッドホンですが、そのコンセプトは「Hi-Fiオーディオの老舗、デノンならではのサウンドクオリティーを完全ワイヤレスの世界へ」ということ。我々が培って来たHi-Fiの音を、フルワイヤレスの世界にも反映させたい、これに尽きます。ではデノンHi-Fiの音とは何か。それは一言で言うならば「Vivid & Spacious」ということです。
国内営業本部 営業企画室 田中 清崇
田中:「Vivid & Spacious」は、デノンのサウンドマスターである山内が掲げるサウンドのフィロソフィーです。サウンドマスターは、デノンの音を最終的に決める責任者です。製品のカテゴリーやクラスを超えて統一感のあるデノンサウンドは、一人のサウンドマスターが責任を持つことで実現されています。今回AH-C830NCW、AH-C630Wで山内が実現しようとしたのは、完全ワイヤレスイヤホンで「Vivid & Spacious」を実現することです。「Vivid」とは全ての音の表情を色彩豊かに生き生きと描くこと。「Spacious」とは音の位置関係、空間の広さと高さ、奥行きをありのままに表現することを意味しています。
左が「AH-C830NCW」のブラックモデル、右が「AH-C630W」のホワイトモデル
ブラックモデルの充電ケース(上)とホワイトモデルの充電ケース(下)
田中:あとで本人からもコメントがありますが、山内はいつも音楽を聴く時にスピーカーを使っています。その山内が、世の中にある様々なイヤホンで音楽を聴いたときに、違和感を感じていると言います。それは何かと言いますと重層的な音のレイヤー、楽器の位置関係や奥行きがイヤホンではあまり見えてこない。開放感がなく、どうしても頭の中で完結してしまう、ということでした。そこをいかに解消するかが、チャレンジだったと言っています。私も完成品を聞いてみて、AH-C830NCW、AH-C630Wは情報量と空間表現に関して、今までのイヤホンとは違うサウンドになったと思います。
デノンのサウンドフィロソフィー「Vivid & Spacious」については、デノンオフィシャルブログの以下のエントリーをぜひご覧ください。
1.デノンサウンドの実現
田中:ではここからは、具体的な製品特長をご紹介していきます。先ほどお話ししたデノンサウンドのコンセプトである「Vivid & Spacious」を実現するために、ハードウェア的にはどんなことをしているのか。まずドライバーに非常に大口径のものを採用しています。AH-C830NCWは10mm×11mmの楕円、そしてAH-C630Wは10mmの真円のドライバーを使っています。同価格帯のインナーイヤーヘッドホンのドライバーのサイズを見てみますと、だいたい4mm〜6mm程度ですが、我々は10mmという大口径のドライバーを採用することで、低域から高域までのワイドレンジな再生を実現しました。ドライバーの振動板には、ポリウレタンとポリエーテルエーテルケトンの合成樹脂という、ハイグレードな素材を使用しています。
左側がAH-C830NCWのドライバー、右側がAH-C630Wのドライバー
2. 軽やかで心地よい装着感
田中:まず重量についてはAH-C630Wが4.7g、AH-C830NCWが5.3gと非常に軽いです。形状については装着感を高めるためにたくさんの耳のデータを集め、そのデータをもとに総計24種類のモックを作り、実際に多くの人に装着していただいて、もっとも着け心地がいいものを選びました。形状としてスティックタイプを選んだ理由は、まず一発でベストポジションに装着できること。さらに外で使っていて落としてしまった時、スティックタイプであればそれほど転がらない、という実用的な点も考慮しています。
3. ノイズキャンセリング&周囲音ミックス機能(AH-C830NCWのみ)
田中:AH-C830NCWのみですが、2マイク・ハイブリッド・アクティブ・ノイズキャンセリング機能を搭載しています。ノイズキャンセリングで重要なのはマイクで取り込んだ外部音の情報をソフトウェアでどう処理をするか、です。ここが難しいのですが、我々はすでにAH-GC30などのノイズキャンセリング機能がついたヘッドホンを作っていますので、そこで得られたノウハウをさらに進化させ、より自然で効果の高いノイズキャンセリングを実現することができました。また周囲音ミックス機能は、イヤホンを着けていない状態に近いような自然な効き方で働きます。
4. リモートワークにも便利な通話機能
田中:AH-C830NCW、AH-C630Wはいずれも内蔵マイクによる通話が可能です。音声マイクは口に近い方の先端に付いています。周囲の騒音が多い環境でも自分の話し声をしっかりと拾ってくれて、相手の声も明瞭に再生する快適な通話機能を実現しました。
で、実際どのくらい使えるのか、といういうことで、私が試してました。秋葉原駅から川崎のD&Mの本社まで、パソコンに接続して会議に出たんです。結果として安定して接続されており、通話が切れたことは一度もありませんでした。途中で発言もしましたが、私の発言内容も相手方にはきっちりとクリアに聞こえていましたし、参加者の発言も非常にクリアに届きました。外ですから騒音もありましたが、ノイズキャンセリングでノイズが気になることもありませんでした。
AH-C830NCWのマイクの構造
5. 簡単接続(AH-C830NCWのみ)
田中:AH-C830NCWのみですが、Google Fast Pairという機能があります。Androidの端末の場合は、充電ケースの蓋を開けると、すぐにポップアップで接続画面が出てきて、それをタップするだけで初めての時から簡単に接続できます。
6. 防滴仕様(本体のみ)
田中:AH-C830NCW、AH-C630WいずれもIPX4の防滴性能を実現しています。IPX4とは製品に対する水の飛まつに対しての保護等級で「あらゆる方向からの水の飛まつを受けても有害な影響を受けない」ということです。防水ではありませんがスポーツなどで汗をかいたり、ちょっとした雨に濡れてしまっても大丈夫、ということです。ただし充電ケースは対応していませんのでお気をつけください。
さきほどリモート会議で試した話をしましたが、別の社員がランニングで使ったところ、汗の心配もないし、非常に軽いので5分もしたら着けているのを忘れるとのことでした。彼はAH-C830NCWでノイズキャンセリングをオンにして使ったのですが、ランニングでの足の振動からくる響きがうまくキャンセルされて、とても快適だったということでした。
以上がAH-C830NCW、AH-C630Wの主なポイントです。そのほかに、両モデルとも非常に長いアンテナを採用しているため、通信が安定している点が挙げられます。
また、充電に関してもひとこと言わせてください。AH-C830NCW、AH-C630Wは本体を10分充電することで50分の再生ができます。これって中途半端で「スペックとして掲載する必要があるの?」と言われそうな機能ですが、今回の2製品ではあえて急速充電を行っていないんです。急速充電機能を搭載すれば10分の充電で1時間半とか2時間使えるスペックにはなります。しかし、急速充電はバッテリー寿命を短くしますし、熱も持ちます。またコストも上昇します。イヤホンは直接身に着けるものですから、熱暴走などのリスクを考慮して設計しています。
Hi-Fiの「Vivid & Spacious」を完全ワイヤレス・インイヤーヘッドホン実現する
後半はデノンサウンドマスターの山内からの説明となりました。
山内:デノンのサウンドマスターの山内です。それではAH-C830NCW、AH-C630Wの音質面のポイントについてコメントさせていただきます。
AH-C830NCW、AH-C630Wはデノンの初めての完全ワイヤレス・インイヤーヘッドホンとなるわけですが、今はマーケットではさまざまな完全ワイヤレスイヤホンが数多く発売されていますので、まずはどんな製品が出ているのかを確認するために、めぼしい製品をざっと聴いてみました。それがけっこういろんなものがあって面白かったんです。ここで存在感を示せるような音質に仕上げるのが私の目標ということになりましたが、やれば多分できるだろうという確信が持てました。
デノンサウンドマスター 山内 慎一
山内:まず完全ワイヤレスイヤホンをいろいろ聴いて思ったこと。これは私の主観に基づいているので、人によっても捉え方が違うと思いますし、評価軸も音に関してはいろいろな要素が絡んでくるので、あくまで私見としてご紹介しますが、いろいろなモデルを聴くと、どうも3つぐらいのパターンがあるように思いました。
まず一つは低域型。これは低域をより強く出し、全体的なプレゼンスや実体感を出すタイプで、おそらく作り手としては少しリラックスした感じを目指していると思います。特に海外製品にこのカテゴリに属するものが多いと思いました。
一方で高域を強調するグループもありました。こちらは波形のレスポンスを高めることで、解像度の高さや分離の良さを目指していて、いわゆるHi-Fi感の強いモデル。細やかなディテール表現などを得意とするものです。
そして最後に、その両方の要素を持つ中庸のグループ、バランスの良さ、あらゆる音楽の要素への対応に長けた、中庸のグループです。
AH-C830NCW、AH-C630Wで狙ったのは、この中庸と高域型の中間のあたりです。狙ったというよりも「Vivid & Spacious」というサウンドを追求すると、必然的にこのあたりになる、とも言えるでしょう。この「Vivid & Spacious」とは具体的には鮮明でのびやかで開放感のあるサウンドステージ、その中にシャープな音像が浮かび上がってくるようなところを狙っています。
AH-C830NCW、AH-C630Wは山内によって細部にわたってサウンドチューニングが行われた
山内:そんなこんなで、やっているうちにHi-Fi製品と同じような熱量で、かなり熱中したというか、はまり込んでしまいました。最終的に仕上がった音としては、AH-C630Wは基本設計の良さが感じられるような音というか、シンプルで、車で言うと、俊敏でよく走る、純粋に走りを楽しめるハッチバックサルーンのような感じでしょうか。AH-C830NCWは上位モデルですので低域の輪郭の出方や分解能、質感の高さといったところではやはり上を行くところがあります。先ほどの車の例で言えばプラットフォームは共通ですが、エンジンや足回りを強化して居住性も高めたGT仕様、いわゆるグランドツーリングに例えられるかと思います。
このようにAH-C630W、AH-C830NCWはそれぞれ音の特長を持っていますので、ぜひ試聴していただきたいと思います。
AH-C830NCW、AH-C630Wはいずれも10月中旬の発売予定! そのうちデノンブログ編集部でもレビューをする予定です。ぜひお楽しみに。
編集部I