「9.4chの最高峰モデル」を目指したデノンの新たなミドルクラスAVアンプAVR-X4800H登場
デノンからミドルクラスながら上級機に匹敵する高音質を実現した9.4chのAVアンプ「AVR-X4800H」が登場しました。その製品特長や開発コンセプトなどのプレゼンテーションが行われた新製品発表会の様子をリポートします。
9.4ch AVサラウンドレシーバー「AVR-X4800H」の製品発表会は、ディーアンドエムホールディングス本社ビルにて行われました。製品のプレゼンテーションは国内営業本部 営業企画室 田中が行いました。
※新製品発表会はディーアンドエムホールディングス本社にて人数を限定し複数回実施されました。
AVR-X4800Hが目指したのは「9.4chアンプの最高峰モデル」
田中:本日紹介させていただきますのは、デノンのAVアンプのミドルクラスのモデルとなるAVR-X4800Hです。AVR-X4800HはAVR-X4700Hの後継となるモデルです。
ちなみにデノンのAVアンプは、2018年から5年連続でブランド総合シェア1位を獲得しています(GFKデータ AVアンプカテゴリーにおいて)。またデノンAVアンプの使用状況ですが、調査によればフロント2ch、あるいはセンター含めたフロントだけの展開はわずか9%で、91%は4ch以上のシステムで使われています。
国内営業本部 営業企画室 田中
田中:さてAVR-X4800Hの製品コンセプトですが、それはずばり「9.4chアンプの最高峰モデル」です。先代のAVR-X4700Hも同じ9chアンプでチャンネル数は同じなのですが、今回は上位モデルであるAVC-X6700Hに迫る音質を目指しました。そのために行ったことを具体的に申し上げると、
- グレードアップしたアンプ構成
- ミニマムシグナルパス
- 国内の生産拠点である白河オーディオワークス生産
の3点となります。この3点について具体的にご説明させていただきます。
アンプ構成が「モノリスコンストラクション・パワーアンプ」にグレードアップ
田中:グレードアップしたアンプ構成とは、具体的には「モノリスコンストラクション・パワーアンプ」を指しています。AVR-X4800Hは9基のアンプを内蔵していますが、基板1枚に1基のパワーアンプを搭載したものが9枚入っています。
ちなみにこれが、1ch分のパワーアンプになります。これはAB級のアンプで、差動1段という非常にシンプルながら、設計が難しいものです。
モノリスコンストラクションパワーアンプの基板、1基分
田中:先代のAVR-X4700Hにも9chのパワーアンプが内蔵されていますが、1枚に5ch分のパワーアンプ、もう1枚には4ch分のパワーアンプと、大きな2つの基板で構成していました。それが今回は9枚の基板によるモノリスコンストラクションとなり、個々のアンプ基板がすべて独立しました。
モノリスコンストラクションには手間もコストもかかるわけですが、チャンネルごとの基板が独立していますから干渉がない。これが強みです。クロストークも防げますし、振動も伝わりません。これらが、音質的に非常に大きな効果をもたらします。
AVR-X4800H 新製品発表会資料より
AVR-X4800Hには9枚のモノリスコンストラクション・パワーアンプ基板が実装されている
田中:また接続方法も進化しました。こちらは同じくモノリスコンストラクションのAVC-X6700Hとの比較ですが、AVC-X6700Hでオーディオ基板とパワーアンプの間の接続はケーブルを使用していましたが、これを廃止し、基板による接続にしました。
ケーブルを使うと取り回しが楽になるメリットはありますが、音質にバラツキが出る可能性があり、それを防ぐためにはより丁寧な作業が必要となり生産に時間がかります。そこを回路の工夫によって直接接続することで生産時間を短縮し、生産コストを下げることができました。デノンの考え方の一つに「良いものをお求めやすい値段で提供するということは、技術の一つである」というものがありますが、まさにそれにあたります。さらに、プリアンプとフロントパネルの接続にFFCケーブル(フレキシブルフラットケーブル)を使用していますが、従来は放熱部の上を通っていたケーブルの取り回しを変更したことで、放熱効率も上がり、安定したアンプの動作にも寄与しています。
AVR-X4800H 新製品発表会資料より
基板の統合により実現したミニマルシグナルパス
田中:AVR-X4700Hには、DAC回路、プリアンプ、マルチルーム用DAC基板の3枚の基板がそれぞれ分かれて入っていて、ケーブルや基板で接続されていました。それらを介してノイズが混入する可能性があります。また3枚の基板にはそれぞれ電源が必要ですが、その電源ラインが信号ラインに交差してノイズ源になる可能性もあります。そこでAVR-X4800Hでは、DAC回路、プリアンプ、マルチルーム用DAC回路の3つの基板を1枚の基板に統合した「インテグレーテッド・オーディオサーキット」を採用しました。それによって信号の最短化、ミニマムシグナルパスを実現しています。
AVR-X4800H 新製品発表会資料より
AVR-X4800Hに搭載されているインテグレーテッド・オーディオサーキット
田中:またデジタル回路では、さらに7入力すべてが8K対応となった新型HDMI回路を搭載したデジタル回路、ジッターを減少させるリデューサーやAL32 Processing Multi Channelなどを搭載しています。またサウンドパーツで定数、耐圧、容量を最適化したカスタムパーツの投入、さらに全体のパフォーマンスを向上させるためのワイヤリングやワイヤーツイストにいたるまでの細部にわたって徹底的なリファインが行われています。
AVR-X4800Hのために開発されたブロックコンデンサーなど、定数や耐圧、容量を最適化したカスタム品を投入
プレミアムモデルの製造を担う白河オーディオワークスで生産
田中:AVR-X4800Hは福島県にある白河オーディオワークスで生産されます。実はAVR-X4700Hなど、4000番台のモデルはベトナム生産でした。もともとこのクラスのAVアンプは日本製だったんですが、白河オーディオワークスが東日本大震災で被災し、甚大な被害を受けました。そのために4000番台のモデルは生産を海外に移転するという選択をせざるを得ませんでした。
田中:そして震災から時が経ち、白河オーディオワークスも完全に復旧しましたので、もう一度4000番台を日本に取り戻すんだと言う機運が高まり、AVR-X4800Hはまた日本生産に戻すことになったのです。そして、せっかく日本で作るのなら日本でしか作れない、最高のものを作りたいということで、かつての白河工場でAVアンプを立ち上げた伝説のエンジニアたちが再結集し、最高の9ch AVアンプを白河オーディオワークスで作るプロジェクトを立ち上げました。そしてできあがったAVR-X4800Hは、非常に高い生産技術が要求されるモノリスコンストラクション・パワーアンプ基板を搭載しており、やはりこれは白河オーディオワークスでなければ、作れなかったのではないか、と思っています。
AVR-X4800Hの多彩な機能と卓越したユーザビリティ
田中:ここからはAVR-X4800Hの機能やユーザビリティについてご説明します。AVR-X4800Hは7系統HDMI入力を装備しており、全ての入力が8K/60Hzに対応しています。
AVR-X4800H 新製品発表会資料より
対応オーディオフォーマットはAVR-X4700Hと基本的に同じですが、新しく360° reality Audioが加わっています。
また2023年3月のファームウェア・アップデートで、Dolby AtmosとAuro-3Dの共存ということもできるようになりました。入力された信号フォーマットに応じて、Dolby Atmosのトップスピーカー配置であってもAuro-3Dのコンテンツやアップミキシングを楽しむことができます。
また11.4chプロセッシングにも対応しています。アンプは9chしか入っていないんですけれども、パワーアンプやパワーアンプダイレクト入力があるプリメインアンプでフロントスピーカーを駆動する、といった使い方をすることで11.4chまでの再生が可能になりました。
AVR-X4800H 新製品発表会資料より
田中:またサブウーファーは最大4基まで設定できます。通常のモードでは全てのサブウーファーから同じ音が再生されますが、「指向性モード」では空間を2~4つのエリアに分割し、サブウーファーはそのエリアにあるスピーカーの低域成分を再生します。そのためそれぞれ再生する音が異なります。つまり、低域においても音像の移動感を表現できるようになったということです。
サブウーファー1〜4端子をリアパネルに装備。
AVR-X4800H 新製品発表会資料より
田中:プリアンプモードでは、今まで全体のオン/オフしか設定できませんでしたが、AVR-X4800Hではチャンネルの指定を行うことができます。たとえば、フロントだけをプリアンプモードにして外部アンプに接続する、といった設定も可能になりました。
そして、デノンAVアンプが採用している接続しやすいスピーカー端子が下にずらっと並んでいます。これも実際に接続してみるととてもやりやすいです。また画面を見ながら接続や様々な設定が行えるセットアップアシスタントのGUIも美しくなりました。
AVR-X4800H 新製品発表会資料より
田中:それからネットワーク機能としてはHEOSを搭載していますので、Amazon Music、Spotify等のストリーミングサービスも楽しむことができます。またWi-Fiはもちろん、Bluetoothも搭載しています。Bluetoothは送信機能もあり、お手持ちのBluetoothのヘッドフォンやイヤフォンに対してワイヤレスで音声を飛ばすことができます。
サウンドマスターによるAVR-X4800Hの試聴
プレゼンテーション終了後は、試聴室に移り、AVR-X4800Hの試聴が行われました。デモンストレーションはデノンのサウンドマスター、山内慎一が行いました。
まず先代のAVR-X4700Hとの比較試聴からスタート。ソースは2チャンネルの音楽ソースを使用しました。銘機と謳われたAVR-X4700Hのサウンドの完成度も高いと感じましたが、AVR-X4800Hは1ランク上のAVC-X6700Hに匹敵するサウンド、という印象です。
その後、AVR-X4800Hで音楽コンテンツや映画コンテンツなどを試聴。サブウーファーをフロント2基、リアに1基の合計3基を使用し、マルチサブウーファーならではの低域の移動感も体感しました。
試聴後に山内からのコメントがありました。
デノンサウンドマスター 山内慎一
山内:AVR-X580BT、AVR-X 2800H、AVR-X 3800H、そして今回のAVR-X4800Hと、開発の順番としては下から順にやってきたので、そういう意味では上位モデルに行くに従って少しずついい面をさらに引き出すという作業をしてきました。そのサイクルがうまくいってよかったなと思っています。この後にもAVアンプの新製品は続きますので、そちらもぜひご期待いただければと思っています。
上級モデルに迫るサウンドを実現したAVR-X4800H、ぜひ店頭でそのサウンドをご体験ください。
(編集部I)