世界初のデジタル録音はデノン
CDの規格が決まるよりも前にデジタル録音が行われていたという話、ご存知でしょうか? 実は世界初のデジタル録音を成し遂げたのは、デノンだったのです。
音楽CDが世の中に出たのが1982年。今から約30年前のこと。
それ以降、みなさんご存知のとおり、「レコードからCDへ」という流れが生まれました。
CDは音をデジタル信号として記録しています。つまり、CDへの移行は音のアナログからデジタルへの移行を意味しました。
ところでCDより前にデジタル録音が行われていたという話、ご存知でしょうか?
実は世界初のデジタル録音を成し遂げたのは、デノンだったのです。
今回は、デノンがこのデジタル録音を成功させたエピソードをご紹介します。
それは、CD誕生の10年前となる1972年*の話です(*PCMデータが残っている録音の場合)。
デノンは世界初の業務用PCMレコーダーの「DN-023R」の開発に成功しました。
これは後年登場するCDプレーヤーの先祖ということになるのですが、写真でもわかるように、かなり大がかりな機器でした。
DN-023Rの記録メディアはVTRでした。なんと映像記録用のテープに音の信号を記録したわけです。
デジタル化の解像度は13ビット/47.25kHz。CDは16ビット/44.1kHzですから、微妙に違います。
この当時はまだ「デジタルに最適なサンプリング周波数はいくつか」というようなことから、手さぐり状態での開発を進めていたのです。
DN-023Rを完成させたデノンは、スメタナ四重奏団を招き、DN-023Rを使って、世界初のデジタル録音を実際に行ったのでした。
曲目はモーツァルトの「弦楽四重奏曲第15番 ニ短調 K.421」と「弦楽四重奏曲第17番 変ロ長調 K.458《狩》」でした。
このときの記念すべき演奏は、レコードとして発売されました。
後年になってCD化され、今でも聞くことができます 。
アルバムの詳細は以下のウェブサイトでご覧いただけます。
http://columbia.jp/prod-info/COCO-73164/
スメタナ四重奏団と日本コロムビア録音部によるデジタル録音に関するエピソードが以下のホームページでごらんいただけます。
そちらもぜひご一読ください。
[この一枚 No.54] 〜スメタナ四重奏団/ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集〜
http://columbia.jp/kono1mai/054.html
今振り返れば、この録音からCD誕生に至るまでの10年は、苦難の道でした。
音をデジタル化した時に失われた情報をどう補完するか。
そしてデジタル化されたデータを、耳に聞こえる音として再生する際のアナログ変換をいかに正確に行うか。
すでに完成の域にあったアナログ音源のクオリティに迫り、そして追い越すためにデノンはCDが発売されるまでの10年間、
さまざまな試行錯誤を繰り返し、さまざまな技術とノウハウを蓄積していきました。
そして1982年、CDは鮮烈なデビューを飾り、デノンからもCDプレーヤー「DCD-2000」が発売されました。
そこにはCDが生まれる10年前から蓄積されたデジタル録音/再生のあらゆるノウハウが投入されていました。
そしてその流れは先日発表したスーパーオーディオCDプレーヤーDCD-SX1にも受け継がれているのです。
■DENON Museum CD Player
http://www.denon.jp/JP/MUSEUM/cdplayer.html
■DCD-SX1 スペシャルサイト
http://www.denon.jp/jp/dcdsx1/index.html