SANOVAインタビュー&リアルウッドシリーズ聴き比べ
昨年11月に発売された3rdアルバム『BLISS』が高い評価を得ている、女性ピアニスト堀江沙知のピアノ・インスト・プロジェクト『SANOVA』。今回はSANOVAの堀江沙知さんに独占インタビュー。ニューアルバムのお話や、ヘッドホンの試聴をしていただきました。
SANOVA(サノバ)プロフィール
SANOVAは堀江沙知によるプロジェクト。ピアノ、ベース、ドラムの3ピースを主体とし、JAZZ、LATIN、FUNK、FUSION、ROCK、プログレ、ポップスなどあらゆるジャンルを融合した音楽をライブで演奏。
2017年ビクターエンタテインメントよりメジャーデビューし、1stアルバム「Cloud9」をリリースした同年、2ndアルバム「Elevation」をリリース。2018年リリースの3rdアルバム「BLISS」は、iTunesジャズチャートアルバム1位を獲得し、1カ月以上継続する。老若男女にお茶の間で愛されるような、心に響くインストゥルメンタルを追求している。
SANOVA 公式ウェブサイト
https://sachihorie.jimdo.com/
ミシェル・カミロと林正樹さんがSANOVAの原点
●堀江沙知さんがSANOVAとして活動するまでの経緯を教えてください。ピアノはいつから弾き始めたのですか。
堀江:ピアノは生まれたときから家にあって遊ぶ感じで、いつもピアノに触れていました。きちんとピアノを習い始めたのは3歳ごろ。ただ、楽譜を見て弾くのが大嫌いで、好き勝手に弾くことが好きだったので、あまり先生のいうことはきかなかったんです(笑)。
それでいろんな先生に習ったのですが、結局「好きな曲を弾いていいよ」と言ってくださる先生のところに通って、好きな映画音楽やJ-POPを自由に弾いていました。
●ピアノを本格的に弾き始めるきっかけはあったのですか。
堀江:高校の終わり頃、ミシェル・カミロというピアニストのライブを見て衝撃を受けたのがきっかけです。でも、実は友達からたまたま公演のチケットを譲り受けたから行っただけで、特にミシェル・カミロのファンだったわけではありませんでした。けっこう軽い気持ちだったんですよ(笑)。
でも、カミロの演奏は私にはものすごく衝撃的でした。まるでピアノがおもちゃのように、楽しそうに遊びながら弾いている様子を見て「めちゃくちゃかっこいい! すごい!」と感激しました。今でもそのときのライブの残像が浮かぶくらいです。あのときミシェル・カミロに出会わなかったら、今、ピアノは弾いていないと思います。
●ミシェル・カミロを見てからは、ジャズピアノを弾こうと思ったんですね。
堀江:はい。それで最初は音楽教室でジャズを習いましたが、コピー譜を弾かされるだけで、私が思っていたものとは違うと感じました。少しずつジャズを勉強していくうちに、私がやりたい自由で楽しいジャズは、アドリブなんだということが分かって、大学ではジャズ研に入りました。
でも当時はFのコードも知らなくて、ピアノの前で固まってました(笑)。そこからはじまりつつ、大学時代はジャズに没頭しました。でもどこかで「思っていた音楽とは違う」というギャップを埋められないままだったんです。
●SANOVAとしてご自身の音楽をはじめたのは、いつ頃のことですか。
堀江:大学を卒業して、ピアノバーや結婚式場などでピアノを弾く仕事をしていましたが、当時はピアニストとしてこれから進む道が全然見えない状態でした。
でもあるときにピアニストの林正樹さんがリーダーをしている「宴」というピアノトリオに出会いました。林さんのピアノはとても鮮やかで、ものすごく感性があって、これは私の理想としている音楽だと直感し「弟子にしてください」と頼み込みました。そしてローディーをしながら林さんからいろいろ学びました。
あるとき「どうしたら林さんのようなピアノが弾けるのですか」と聞いたところ、作曲を勧められたんです。それでようやく作った曲を林さんに持って行ったら、林さんがその場で「いい曲じゃん」といいながら弾いてくださったんです。その演奏がまたすごくて、私はボロボロ泣いてしまいました。
そして、自分の曲でこんなふうに人を感動させる演奏がしたいと、強く思いました。それが「自分自身の音楽をやろう」と思ったきっかけとなりました。
●それがSANOVAになるんですね。ちなみに「SANOVA」とは、どういう意味ですか。また、言葉で説明するとしたら、どんな音楽なのでしょうか。
堀江:ボサノバのノバ(NOVA)、つまり新しいという意味もありますが、堀江沙知が音楽をやっていく場所、「沙の場」という意味も込めています。プロフィール的にはピアノインストや和製ジャズを謳っていますが、私自身は特に「インスト」や「ジャズ」をやっている、という意識は持っていません。
日本人として生まれましたから、日本の音楽やメロディは大好きですし大切にしていますが、私が目指している音楽とは、ジャズファン、音楽ファンだけでなく、あまり日頃は音楽を聴かない方、子どもからおばあちゃんまでいろんな方に聴いていただけるような音楽なんです。美しいメロディで、かつ誰もが聴いてハッピーになる曲、これを聴くと「よし! 明日も頑張るぞ」と、前向きになれる音楽を届けることができたらいいな、という気持ちで曲を作っています。
「Liberty」は輝くような音色にこだわりました
●話題を集めているアルバム『BLISS』は、どんなコンセプトで作られたアルバムですか。
堀江:SANOVAとしての3作目になりますが、1stアルバム『Cloud9』、2ndアルバム『Elevation』、3rdアルバム「BLISS」で一つの作品になっている三部作の最後の作品です。BLISSは気持ちが昂るという意味で、根本のメッセージでもある、音楽を聴いてステキな気持ちになってほしいという気持ちが込められています。今回のアルバムには、カバーが2曲入っていて、その1曲が「枯れ葉」です。
もともとはジャズの代表曲で、入門曲でもあるんですが、ジャズ研時代に弾いていた「枯れ葉」にしっくりこないところがあって、自分がやるならこんな「枯れ葉」にしたい、というアレンジにチャレンジしました。「ジャズは難しそうだから嫌」という人にも、ぜひ聴いていただきたいと思っています。もう1曲は、AフラットとGマイナーの2コードだけというルールで構成した「ただ2コードくりかえすだけ」という曲です。
もともとはニコニコ動画で人気のGYARI(ココアシガレットP)さんがやっていた企画だったんですが、やってもいいですか?とお願いし、2コードだけでどれだけSANOVA流の曲ができるかチャレンジしました。
●このアルバムに収録されている「Liberty」は、デノンの試聴キャンペーン「良い音で聴いてみたいレコメンドナンバー」に選ばれています。店頭などで試聴する方に、ぜひ聴きどころを教えてください。
堀江:「Liberty」は直訳すると「自由」です。誰しも生きていくうえでいろいろなしがらみがあって、ときには妥協してしまうこともあると思います。でも本当の自分の行く先、未来は自分で動かしていける、というメッセージを込めて作った曲です。録音としては、1stアルバムの時から担当していただいているサウンドプロデューサーのIkomanさんにお願いしていて、録音時は各楽器の音の美しさにこだわっています。
たとえばシンバルの響き、スネアのサウンドの重さや広がり、それにピアノのキラキラと輝いているようなリバーブ感など、それぞれの楽器の音色を、ぜひ味わって聴いていただきたいと思います。
AH-D9200は「これ! これが欲しかった!」という音
●では、リアルウッドシリーズのAH-D5200、AH-D7200、AH-D9200でご自身の曲を聴いていただき、感想をうかがいたいと思います。 では、どれから試聴しますか。
堀江:じっくり聴き比べたいので、3モデルを次々に試聴してもいいですか? それから感想を言わせてください。
●(試聴を終えて)それぞれの感想はいかがですか。
堀江:まず、 AH-D5200は、すごくクリアな感じの音がしました。嫌味がないというか。シンバルの音が一番好きなのはこれかもしれないです。
●AH-D7200はいかがでしたか。
堀江:どっしりとした音です。低音にたっぷりした重厚感があって深いというか。ベースの良さはAH-D7200が一番出ていると感じました。
●ではフラッグシップモデルのAH-D9200はいかがでしたか。
堀江:ピアノの音が一番きれいに感じたのがこれでした。高音も低音もしっかりと出ていて、全体的に迫力があって、ピアノの音に広がりを感じますし、スネアの音も気持ちいいですね。単純にいって「ものすごくいい音。これですよ!この音が欲しかったんですよ!」という音です(笑)。私はAH-D9200が一番気に入りました。
でも、リアルウッドシリーズは、どのモデルもハウジングの木の触り心地が良く、温かみがあっていいですね。見た目もかわいいです。
●では、でたばかりの新しいノイズキャンセリング&BluetoothヘッドホンのAH-GC30も試していただいていいでしょうか。
堀江:私、ノイズキャンセリング自体初めてだったんですけど、これ、すごく面白いですね!
ノイズキャンセリングをオンにすると、急に真空ぽいっていうか、フワって周りの音が急に聞こえなくなって音に吸い込まれるみたい。周囲の音のザワザワがなくなって、一瞬で空気が変わりますね。ワイヤレスもコードが邪魔にならないので、すごくいい感じです。それにサウンドもワイヤレスとは思えない、いい音ですね。バランスがいい、まとまりのある音だと思いました。
●ありがとうございます。最後に、SANOVAのファンの方や読者の方々に向けて、今後の予定や、目指したいこと等があったら教えてください。
堀江:アルバムは三部作の最後の作品が出て、一つの区切りになりますので、次の作品はまた少し違うものになります。お楽しみにしていてください。ライブとしては一番近いところとしては、6月1日に「彩の国さいたま芸術劇場」大ホールで、「800人ワンマンライブ」を予定していますが、それは全て予約完売してしまいました。
その次の予定などは今後発表していきますので、公式ホームページでチェックをしていただけたら嬉しいです。長い眼で見れば、私の一番の目標は「紅白歌合戦出場」です。演歌やポップスなどがあるなかで、インスト代表で紅白に出られた時が、本当の意味で「お茶の間で愛される音楽」ができた時なのかな、と思います。
そのためにはもちろんライブもやり続けていきたいですし、紅白出場のきっかけになるような、映画音楽やゲーム音楽などにも積極的に取り組んで行きたいと思っています。いろいろなものにトライして、いろいろな方に音楽を届けて、SANOVAの曲を聴いてもらって楽しい気持ちになっていただければ嬉しいです。
●本日はありがとうございました。
(編集部I)