デノン110周年記念モデル発表会レポート
デノンは創業110周年を記念したSACDプレーヤー、プリメインアンプ、AVアンプ、専用ヘッドシェル付きMCカートリッジの「A110」シリーズを発売!既存モデルを単なる「記念モデル」に焼き直したものではなく、次の10年を見据えたコンセプトと先進的な技術を取り込んだ、いわば次世代へのメッセージとなる製品たちです。デノンオフィシャルブログでは先日開催されたA110シリーズの発表会の様子をリポートします。
デノンの創立110周年記念モデルA110シリーズをご紹介する発表会が先日ディーアンドエムホールディングス本社で開催されました。今回は新型コロナウィルス感染拡大防止の観点から、関係者が一堂に会してではなく、少人数での発表会を数日にわたって開催するという形式となりました。その様子をご紹介します。
発表会のプレゼンターは国内営業本部 営業企画室 田中が務めました。
↑新製品発表会の様子
オーディオシーンの先頭を110年間走り続けたデノン
田中:みなさま、本日はお集まりいただきましてありがとうございます。今回はデノンの創立110周年記念モデルであるA110シリーズのご紹介をさせていただきます。
製品のご紹介をする前に、まずデノンの110周年の歩みについてご紹介させてください。
↑A110シリーズ発表会資料より
デノンは1910年、当時日本で初めて国産の蓄音機を製造した日本蓄音器商会の創業をはじまりとしています。その創業の地は、現在のディーアンドエムホールディングスがある川崎市でした。1928年には日本蓄音器商会から日本コロムビアに改称し、蓄音機というハードウェアと、レコードというソフトウェアの両方を手掛けるメーカーとなりました。
↑発表会資料より
デノンにはもう一つ、日本電音機製作所(後の日本電気音響)という源流があります。日本電音機製作所は日本初の放送用機器メーカーでNHKなどの放送局向けに放送用音響機器を製作していました。1947年に日本コロムビアの傘下となり、1963年には吸収合併されますが、そのままデンオン(DENON)として音響機器部門のブランドとなりました。
↑発表会資料より
吸収合併の翌年、1964年にはMCカートリッジDL-103をFMステレオ放送用にNHKの協力の下で開発。そして1970年にはDL-103の一般販売を開始し、大ヒットとなりました。そのDL-103は今なお当時と同じ仕様で、福島県白河市にあるディーアンドエムホールディングスの工場「白河ワークス」で製造されている驚異的なロングセラーモデルでもあります。
↑発表会資料より
その後も放送局用のダイレクトドライブターンテーブルを基にしたDP-5000や、NHK技術研究所の協力で開発した業務用PCMレコーダーである DN-023R、世界初のPCM録音のレコードの制作、そして1982年にはCDプレーヤーを発売しました。またホームシアターにおいても1995年にルーカスフィルムと共同で世界に先駆けてTHX5.1規格のAVアンプを発表するなど、デノンの110年は、常にオーディオの世界の先端を走り続けてきた110年でした。
長年培った技術を惜しみなく投入した4つの110周年記念モデル「A110シリーズ」が登場
↑AVC-X6700H、AVR-X4700Hは8K対応のHDMI端子を装備
田中:そして2020年、創業110周年を記念して、デノンからA110シリーズが登場いたします。A110シリーズは、SACDプレーヤーのDCD-A110、プリメインアンプのPMA-A110、AVアンプのAVC-A110、専用ヘッドシェル付きMCカートリッジのDL-A110の4モデルで構成されています。これらのモデルはいずれも、既存モデルを単なる「記念モデル」に焼き直したものではなく、次の10年を見据えたコンセプトと先進的な技術を取り込んだ、いわば次世代へのメッセージとなる製品となっています。
ではA110シリーズを順番にご紹介していきます。
SACDプレーヤー DCD-A110
希望小売価格280,000円(税抜価格)
2020年10月中旬発売予定
田中:DCD-A110の主な特長としては以下の3点です。
- Ultra AL32 Processingを搭載
- Quad-DAC構成を採用
- アナログオーディオ回路のフルディスクリート化
田中:Ultra AL32 Processingとはデノン独自のアナログ波形再現技術の最新型です。従来は768kHzまでのアップサンプリングを行っていましたが、Ultra AL32 Processingでは1.536MHzまでアップサンプリングしています。サンプリング周波数が2倍となったことで、S/Nが理論上3dB向上します。
またD/Aコンバーターは、従来までの1つのDACではなく、ステレオDACをモノラルモードで使用し、1チャンネルあたり2つ、合計で4つのDACを使用しました。それによりS/N比を向上させるだけでなく、チャンネルセパレーションの悪化を防いでいます。さらに後段のI/V変換アンプと差動合成アンプをオペアンプからディスクリート構成に変更して、非常に高性能なD/Aコンバーター&アナログオーディオ回路を実現しました。また並列構成にすることで出力電流が4倍となり聴感上のパワー感も向上しています。電源回路についてもフルディディスクリート構成として、大幅な性能向上を実現しました。
では次にプリメインアンプをご紹介します。
プリメインアンプ PMA-A110
希望小売価格330,000円(税抜価格)
2020年10月中旬発売予定
田中:PMA-A110の主な特長としては以下3点です。
- 新型電子ボリューム
- 新型増幅回路
- Ultra AL32 Processing & DAC回路
まず新型電子ボリュームは、従来の機械式ボリュームではどうしても生じてしまう、減衰時の左右のチャンネルの音量差(ギャングエラー)を回避します。また、ボリュームノブはHi-Fiアンプらしく始点と終点のあるもので、アナログボリュームの手触りや操作感はそのままです。電子ボリューム化によって、従来プリアンプとボリューム回路を往復していた信号経路が不要となり、よりミニマムシグナルパスの理想に近づけることができました。
新型増幅回路ですが、新型電子ボリュームの採用にともなって、いままでの固定ゲインアンプ構成から、可変ゲインのフラットアンプとパワーアンプの2段構成となっています。この構成にすることにより、常用音量域での入力抵抗の熱雑音を最大6分の1まで減少させることができました。パワーアンプ部のUHC-MOSシングルプッシュプル増幅回路は差動3段アンプ回路から、PMA-SX11で採用した安定性に優れる差動2段アンプ回路に変更しました。UHC-MOSの大電流出力と安定性の高い回路構成により、様々なスピーカーを正確に、そして力強く駆動します。
↑新型増幅回路の説明図 (発表会資料より)
またPMA-A110はデジタル入力も装備しており、DCD-A110でご説明したデノン独自のアナログ波形再現技術の最新型Ultra AL32 Processing とQuad-DAC回路を搭載しています。USB-DAC回路と他の回路は電源、回路、GNDすべてを独立させることで、PCなどのデジタル機器からのノイズを遮断しています。
では次にAVアンプをご紹介します。
AVアンプ AVC-A110
希望小売価格680,000円(税抜価格)
2020年10月中旬発売予定
田中:そしてAVアンプのAVC-A110です。
このモデルはデノン110周年の記念モデルであるだけでなく、現在のデノンAVアンプのフラッグシップであり、超弩級の音と機能でAVファンから「モンスターマシン」と称されたAVC-X8500Hをさらに超える実力を持っています。
歴代のAVアンプのサウンドマネージャーを務めてきた高橋が「深淵」をコンセプトに、コストという”たが”を取り去ることで、深い淵の奥に続く無限の可能性、その奥にあるひとすじの輝きを描き出す表現力を磨き上げることで、アニバーサリーモデルに相応しい風格を備えることができると開発に情熱をそそぎました。
AVC-A110の主な特長は
- 音質パーツの再設計、改良
- 低インピーダンス化
- 高い機構安定度と放熱安定度の獲得
この3点が挙げられます。
音質パーツの再設計と改良については、様々なパーツが挙げられますが、そのうちの一つにカスタムコンデンサーがあります。これは基本設計や内部の電解紙の材質、陰極箔の引き張り強度、巻きテンションなど細部まで徹底してカスタマイズされたコンデンサーであり、それによって今までにない深い低域、高域の伸びを実現しています。そのほかにも多くのオリジナル部品を搭載。高品位なサウンドを実現しました。
↑発表会資料より
低インピーダンス化に関しては、基板のパターン箔厚を2倍にすることで、信号線、電源線、GND線の抵抗値を下げ、力強いドライブ力と立ち上がりスピードの速いサウンドを実現しています。
高い機構安定度と放熱安定度の獲得に関しては、パワートランスのベース、パワーアンプの整流回路、安定化電源のラジエターに質量・剛性ともに高い純銅を採用しました。またフットにはかつてのフラッグシップAVセパレートアンプ、AVP-A1で採用した、重量があり安定感にも定評のある鋳鉄製を採用しました。電源回路の放熱板にも放熱効果の高い純銅を使用しています。
田中:そして110周年記念モデルとして最後にご紹介するのが専用ヘッドシェル付きMCカートリッジDL-A110です。
ヘッドシェル+カートリッジ DL-A110
希望小売価格62,000円(税抜価格)
2020年11月発売予定
田中:1964年に放送局のために制作したDL-103は先ほどデノンの歴史のところでご説明しましたが、このカートリッジが現在の民生オーディオブランドとしてのデノンの始まりと言っていい製品です。
↑発表会資料より
田中:1964に誕生したDL-103ですが、実は当時放送局のために制作したものはカートリッジだけではなく、トーンアーム、ヘッドシェルなどを含めた振動系すべてでした。その当時放送局に納められたヘッドシェルを今回110周年記念として復刻し、オリジナルのヘッドシェルとDL-103とのセットとして発売するものです。
オリジナルヘッドシェルとDL-103との組み合わせは非常にシンプルかつストレートなサウンドで、復刻とはいえ、ちょうど今はアナログレコードブームですが、最近の作品をアナログレコードで聞いても決して懐古的ではなく、今の音を忠実に再現しています。そのあたりはぜひ、今後の試聴の機会にお確かめいただきたいです。
というわけで今回は駆け足でA110シリーズをご紹介しました。各製品についてはまた追々ご案内いたします。
本日はありがとうございました。
(編集部I)