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 【DENONカートリッジのルーツ(DENONの誕生)】

■昭和14年(1939)

 武蔵野の林と畑の真ん中(東京都三鷹市下連雀)にポツンと芽生えた町工場が資本金11万円で設立された。日本電気音響株式会社、DENONの生声である。
 DENONのカートリッジの歴史は、当時の放送局現状を知らないでは語れない。
 当時NHKに国産で始めて納入された円盤式録音再生機(DR-14-B)形は、画期的な広帯域録音を実現し、特にこの装置に採用されたオイルダンプ式カッターヘッド(C-14-D)形は優れた性能を誇るものであった。
 現在のMCカートリッジの基礎的技術はこの(C-14-D)形カッタヘッドの開発ですでに決定していたのかも知れない。
 こうして、昭和15年に国産機による録音放送が日常化されたのである。

 円盤式録音再生機(DR-14-B)形

■昭和16年(1941)

 録音再生機の録音盤には、当時アセテート材料が使用され、この再生用として開発されたモノラルMI型カートリッジが(P-16-A)形でサファイヤ針であった。

■昭和22年(1947)

 日本コロムビア株式会社の系列下に入る。

■昭和25年(1950)

 第2次大戦後放送技術が急速に進歩し、アメリカ、ドイツなどの新しい技術か導入されるにおよんで、音楽再生にはマイクログループレコードの出現は音質的に著しい向上をみた。この年にはじめてのSP/LP用モノラル・ムービングコイル(MC)カートリッジ(PUC-3)完成。

 SP/LP用モノラル・ムービングコイル(MC)カートリッジ PUC-3

■昭和26年(1951)

 LPレコードが日本コロムビアから発売され、放送用再生プレーヤーの開発が注目を浴び、局用PUにMCタイプのカートリッジ(PUC-3)が採用される。一部のオーディオマニアからも高く評価され、DENONの小量生産、高性能本位の企業休質が特殊メーカーとしての世評を形成した。

■昭和27年(1952)

 LP時代の幕明けとともに、レコード再生技術の開発が急テンポで進められ、これを再生するピックアップもより一層のトレース能力を要求され、これが(PUC-3)形の改番をみた(PUC-4L)形の出現である。

■昭和28年(1953)

 円盤録音用の電磁形カッターヘッドが開発され、レコードカッティング技術がクローズアップされるにおよんで、ノイマン、ウェストレックスなどに採用されているバリアブルピッチ録音方式を独自の立場で確立した。
 昭和29年にはNHKを始め、各レコード会社に納入された。

■昭和29年(1954)

 この時期にわが国で始めてNHKにテープレコーダーが納入され、テープによる放送が開始されたのも忘れてはならない。
 このとき納入された録音機が、(R-26-F)形のポータブルと(R-28-P)形コンソール形である。

 コンソール形テープレコーダー R-28-P

■昭和32年〜昭和35年(1957〜1960)

 NHKのFM放送の実験局が開局し、ステレオレコードの出現によりカートリッジもステレオ用2CH用として(PUC-7D)形が開発された。
 このカートリッジの性能は、f特をみても現在のHi-Fiオーディオ時代のものと比較しても劣らないくらいの値、20〜20,000Hz、針圧4gですぐれた特性を示し、DL-103の出現に大きく貢献した。
 昭和33年に日本で始めてステレオレコードか発表され、またNHKおよび民放もレコード再生による放送頻度が多く、これを聴取して楽しむ音楽愛好家、マニアが増えてきた。

■昭和38年(1963)

 日本コロムビアに吸収合併し、DENONはソフトとハードの一貫メーカーである日本コロムビアの1ブランドとなる。

■昭和39年(1964)

 DL-103の誕生。プログラムソースを如何に忠実に再生するかは再生機器全搬について常に付き纏う問題であるが、とりわけ音の入口であり信号をビックアップするカートリッジは、当時一番責任の重い機器であった。これは、今日の完成度の高いカートリッジを実現させる原動力になった。
 DL-103が40年、NHKとの共同開発で完成され、放送局用、民生用の原点を築いたわけである。

 DL-103 試作第1号

放送用カートリッジDL-103の性能と設計目標についてはこちらをご覧ください。

■昭和45年(1970)

 プロ用として一躍スターダムにのし上ったDL-103をHi-Fiマニアが放っておくはずもなく、ついに45年4月市販を開始させた。プロ用のみのブランドであったDENONが、民生機器に使われ始めたのはこの頃からである。

■昭和46年(1971)

 プロ用カートリッジを市販することで、従来の業務用機器一辺到のDENON市場から方向を換え、当時の業務用DN-302FプレーヤーのフォノモーターをDP-5000として市販するなど、DENONはプレーヤーの名声を不動のものに高めた。

■昭和47年 (1972)

 NHK技研の協力でPCM/デジタル録音機を世界に先駆け開発(DN-023R)、実用化しPCMレコードを発売開始。

 PCM/デジタル録音機 DN-023R

■昭和48年 (1973)

 オールコンピューター操作放送自動化機器納入開始。

■昭和52年(1977)

 14ビットのPCM録音再生変換装置をNHKに納入。

■昭和57年 (1982)

 CDソフトとCDプレーヤーを発売。

■昭和58年 (1983)

 放送局仕様最高級コンシューマー用CDプレーヤー(DN-3000FC)受注生産スタート。

■平成5年 (1993)

 DENONオーディオ機器のフラッグシップモデルS1シリーズ(DP-S1/DA-S1)発売。

■平成7年 (1995)

 ルーカスフィルムと共同で世界に先駆けてTHX5.1規格のAVアンプ(AVP-A1.POA-T2/T3)を発表。

■平成13年(2001)

 10月1日に、日本コロムビアの電機部門とレコード部門が会社分割し、その電機部門が独立、「デノン」としてスタートした。日本のみで使われていた“DENON”の呼称「デンオン」を世界共通の呼称「デノン」に統一し、このグローバル・ブランド呼称を社名とした。

※オーディオの変遷と共に“DENON MUSEUM”、“DENON HOMEPAGE”に掲載の数々の製品を世に送り出し、現在に至っている。DL-103は、現在もMCカートリッジの代表モデルとして生産し続けている。


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