デノンの音質評価用リファレンスCDを公開します!
新しいオーディオ機器を開発するとき、どのような音源を使ってチェックすると思いますか? 今回はデノンの音質評価で使用しているCDについて、デノンサウンドマネージャー米田晋に聞きました。
新しいオーディオ機器を開発するとき、どのような音源を使ってチェックすると思いますか?
もちろん開発は計器を使った精密な測定を行いながら進めますが、
音楽を聴くための機器ですから、最終的には音楽を再生して耳で判断します。
では実際にどんな音源で音質評価を行っているのか、興味ありませんか?
今回はデノンの音質評価で使用しているCDについて、デノンサウンドマネージャー米田晋に聞きました。
私がデノン製品の音質評価を行う際に、リファレンス用に使用するCDが何枚かあります。
常に同じ音源でチェックすることで、音質が正確に比較できますし、
演奏のエネルギー感などは測定用の信号音では評価できません。
ですから、演奏・録音ともにすぐれた音楽ソフトを使用しています。
実際には目的ごとに何種類もの音源を使って評価しますが、今回はそのうちの3枚をご紹介します。
(1)ドリー・ベーカー アルバム「オールウェイヴス」より「トラック5 オールド・マン・タイム」
これはいつも最初に聴くソフトです。
シンプルな演奏ですが、実はこの音源、しっかり再生するのが難しい音源です。
一聴すると低域のエネルギーがないと感じられるかもしれません。
しかし、低域もかなりフルビットに近いところまで使われています。
録音自体はほとんどモノラルに近いのですが、帯域がしっかりとられています。
ここでの聴きどころは、ボーカルやベースが、きちっとセンターに定位しているか、
そしてアンビエンス(周囲を音が取り巻いた感じ)がきちんと出ているかという点。
特に一番の勘どころは曲の冒頭、ベースだけで4ビートを刻むところがありますが、その音階の刻みです。
このあたりがきちんと出ていないとデノンの製品としてはダメダメだと。
そういう評価を下しています。
デノンの音がどうあるべきかということにも関わりますが、デノンは日本で録音機を初めて作り上げた会社です。
そして録音機を、放送局に送り出し用の機械として納めていました。
そういう背景がありますので、必然的に音作りの立場としては
「聴き手に、コンテンツが持っているエネルギーや感性を伝えていくか」がもっとも大切であると考えています。
それが今も私たちデノンの音作りの根底に流れている基本的な考え方だと思うのです。
ですから、この曲でも音場や音像が絶対にブレてほしくない。
そういう視点でこの曲を使っています。
(2)シャイー指揮 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 アルバム「ラヴェル:ボレロ」より「トラック12 展覧会の絵(ラヴェル編曲)バーバヤーガ」
次に紹介するのは有名なクラシックの曲、ラヴェル編曲のオーケストラ版「展覧会の絵」です。
この音源は1987年と結構古い録音ですけれども、今聴ける「展覧会の絵」のオーケストラ版で、
ここまでスケールが大きい演奏はなかなかないのではないかと思っています。
この曲での評価の勘どころは、「オーケストラのスケール感と安定感がどこまで出せるか」という点です。
もし機会があれば、ぜひ一度ご自宅のオーディオで再生してみていただきたいと思います。
(3)MALTA アルバム「MANHATTAN IN BLUE」 より「トラック1 アイム・ア・フール・トゥ・ウォント・ユー」
最後は日本のジャズの音源をご紹介します。これはサキソフォンプレーヤーのMALTAの作品です。
MALTAはこのアルバムを出すまでフュージョンぽい作品が多かったのですが、
この音源はジャズへの回帰として録音されたアルバムの1曲目です。
ここでの聴きどころは、まず冒頭のピアノの強いアタックがいかにブレずに、
地に足がついた感じでキチっと再現できるかという点です。
それから、ピアノの後で登場するMALTAのサックスのフォーカス感、サウンドステージがきっちりできているか。
そのあたりを評価のポイントとしてチェックしています。
今回はスペースの都合で3枚しかご紹介できませんが、日頃デノンがどんなことを大切に考えて音作りをしているのか、
その一端はおわかりいただけたのではないでしょうか。
今後、ご自身でオーディオやヘッドホンなどの音を評価する際、
もし今までご自分でリファレンスCDを特に決めてなかったのであれば、
今後「この音源のここの音で、これを評価する」と決めてチェックされると、
今までより明確に自分の好みの音が評価できると思います。
ぜひお試しください。
(Denon Official Blog 編集部 I)