山内セレクション@2023東京インターナショナルオーディオショウ featuring DP-3000NE レポート
デノンオフィシャルブログの大好評企画、デノンのサウンドマスター山内が、いい音で味わってほしい音楽をご紹介する山内セレクション。今回は2023年11月5日に「2023東京インターナショナルオーディオショウ」でDP-3000NEのデモとして行われた「山内セレクション@TIAS2023」の様子をレポートします。
2023年11月3日〜5日の3日間、国内外のHi-Fiオーディオの祭典「2023東京インターナショナルオーディオショウ」が東京国際フォーラムで開催されました。デノンは新たなレコードプレーヤーDP-3000NEを中心に展示やデモを行い、大好評を博しました。
今回はそのデモの中から、デノンのサウンドマスター山内の選曲でDP-3000NEの試聴を行った「山内セレクション@TIAS2023」の様子をレポートします。
2023東京インターナショナルオーディオショウレポートはこちらのエントリーをご覧ください。
DP-3000NEが目指したのは「Vivid & Spacious」
デノン製品のサウンドを統括するサウンドマスターの山内慎一(右)、
聴き手は国内営業本部 営業企画室 田中(左)
山内:みなさんこんにちは。サウンドマスターの山内です。今日は新製品のレコードプレーヤーで、デノンの新たなフラッグシップモデルでもあるDP-3000NEの音をみなさんに聴いていただきます。よろしくお願いします。
田中:試聴の前に本日の機材構成をご紹介します。レコードプレーヤーはもちろんDP-3000NEですがカートリッジはデノンのDL-103Rを使用します。そしてプリメインアンプはPMA-A110を使ってお聴きいただきます。
プリメインアンプはPMA-A110を使用(中央最下段)
デノンサウンドマスター 山内慎一
山内:では試聴に入ります。最初はスティーヴ・ウィンウッドの「BACK IN THE HIGH LIFE」です。UKのアーティストなんですけど80年代にアメリカでも大ヒットしました。シングルカットもその中から何枚か出ましたが、そのアルバムから「Take It As It Comes」という2曲目の曲をお聴きください。
田中: (試聴して)80年代のUKロックだけあって、とってもキレのいい音楽だと感じました。アナログレコードといえば、多くのみなさんは「温かみのある、柔らかい音」のイメージをお持ちかもしれませんが、DP3000NEは山内が現在のデノンのサウンドフィロソフィーである「Vivid & Spacious」を追求するという方向で音作りをしてきました。そうした音の正確さ、ソリッドさと、空気感が味わえた音源ではないかと思いました。
国内営業本部 営業企画室 田中
山内:さて次も80年代のUKのユニット、スクリッティ・ポリッティのレコードで「Cupid & Psyche 85」です。このアルバムはロンドンでレコーディングした後、ニューヨークで当時最先端のサウンドを作っていた「パワーステーション」というレコーディングスタジオでもレコーディングやミキシングをして完成させたもので、非常にモダンで洒落たサウンドになっています。
その中から一曲目に収録されている「The Word Girl」を聴いてください。エンディングもとても洒落た感じで終わるので、最後まで聴いていただきたいと思います。
田中: (試聴して)この曲は、製品の音質検討に使われたんですか。
山内:音質検討は長期間に及ぶので、かなり多くの曲を使いますが、こういったタイプの曲は音質検討が中盤から終盤に入った頃によく使いますね。最初のほうの音質検討はもうちょっと地味な曲でやることが多いので。
DP-3000NEではダイレクトドライブならではの勢いやパワー感に加えて精緻さもプラス
山内:次ですが、1980年代からちょっと時代は現代に進みまして、2000年ぐらいの曲で、エンヤのヒット曲の「Only Time」を聴いてください。
田中:この曲は一世を風靡しましたね。一番眠くなるこの時間帯に眠くなる曲を聴きましたけれども(笑)、みなさん、しっかりと起きて聴いていただきありがとうございました。
ところでDP-3000NEは駆動方式にデノンのレコードプレーヤーの代名詞とも言えるダイレクトドライブ方式を採用しています。山内さん、ダイレクトドライブは音に何か影響はあるのでしょうか。
DP-3000NE
山内:よく言 われることですが、比較的パワーと言うんですか、勢いみたいなものは伝わってくるかなと思います。それに加えてDP-3000NEには、音の緻密さや精密さの再生能力もありますので、とてもいいバランスでアナログレコードを楽しんでいただけるのではないでしょうか。
多彩なジャンルを平均化して再生するのではなく、
その曲の持つ魅力を描き出せるプレーヤー
山内:さて次は、マウリツィオ・ポリーニの演奏、カール・ベームの指揮でベートーヴェンのコンチェルト5番の「皇帝」を聴いてください。これもなかなか古い、79年ぐらいのものかと思うんですけど、演奏スタイルはとても現代的というか、密度もあって、聴きごたえのある演奏だと思います。オケはウィーンフィルですね。
田中:ピアノも弦も鮮烈で、とても40年以上前に録音されたとは思えない鮮やかな演奏だと感じました。現在のデノンのサウンドフィロソフィーは、山内が提唱した「Vivid & Spacious」です。そのビビッドっていうのは、「色鮮やかな、鮮明な、まるで目の前にあるような」という意味です。スペーシャスは「広々とした空間感」ですね。今お聴きいただいた曲は、まさにビビッドな音だったと感じました。
山内:では次はジャズのビッグバンドの曲を聴いてください。角田健一ビッグバンドの「BIG BAND STAGE ~甦るビッグバンドサウンド~」。これは音質評価でいつも聴いている音源です。その中から「タキシード・ジャンクション」という曲をお聴きいただきたいと思います。
山内:(試聴して)ロックやシンセを使った音楽に加え、クラシック、ビッグバンドジャズを聴いていただいたのは理由があります。以前から私が(サウンドチューニングをするときに)心がけていることがあり、それはどんなタイプの曲も平均化して再生するのではなく、それぞれの楽曲のエッセンスや良さがしっかり出てくるようなサウンド、その音楽の魅力が味わえるような再生機にする、ということです。今日はそれを感じ取っていただけたとしたら幸いです。
田中:ある評論家がデノンの製品を聴いて言われていたのは、「感情のダイナミックレンジが広い」ということ。まさに、今山内が言ったことを的確に汲み取っていただいたのかなと思います。「小さい音から大きい音まで、低い音から高い音まで広く出すというより、音楽そのものが持つ力のダイナミックレンジが非常に広いんだと感じる」と、その先生はおっしゃいました。
山内:さて次はスペイン系のファビアーノ・ド・ナシメントというギタリストのアルバムです。今年の7月ぐらいに出たばかりのアルバムです。実はこれ、一昨日ある人に紹介してもらって、聴いたところとても新鮮だったので、Amazonで注文し昨日届き私もかけるのは初めてなんですけど(笑)。どういうふうに鳴るのかワクワクしますがん、いっしょに聴かせていただきたいと思います。
田中:音の浮遊感が、すごく気持ちいいですね。
山内:エレクトロニカやポップとか、ジャズとかクラシックとかアンビエントなど、いろんな要素を混ぜたような、クロスオーバーという感じですね。
次は、TOTOの4番目のアルバムで 「TOTO IV」から、このアルバムの中ではソウルフルなナンバーで、「Waiting for Your Love」をお聴きいただきます。
ところで今日の試聴は80年代ものがちょっと多いとは思うんですけど、やはり78、79年から85年、86年にかけて、これはCDが出できた時期でもあるんですけど、この時期のアナログレコーディングは、完成形に近いというか、とても音が良くなった時代だと思っています。
山内:だんだん持ち時間が無くなってきました。残り2曲をご紹介して終わりにします。
こちらも80年代、これはリッキー・リー・ジョーンズです。ライブ盤というか、1曲だけライブ音源が収録されていて、ジャズのスタンダード曲の「My Funny Valentine」を歌っています。私が説明するまでもなく、曲が始まるとすぐに彼女の独特の世界に引き込まれてしまうと思いますのでぜひお聴きください。
山内:最後にもう一曲、アース・ウィンド・アンド・ファイアーのベストアルバムですが、こちらに入っている1曲目の「Got to Get You into My Life」、ビートルズのカバーを聴いてください。
田中:ということで、駆け足でしたが、いろいろ聴いていただきました。本日はありがとうございました。
山内:ありがとうございました。
(編集部I)