
「デスクトップサイズのHi-Fiオーディオ」を目指して

デノンが培ってきたHi-Fi技術をデスクトップサイズに凝縮したUSB-DAC/ヘッドホンアンプ「DA-300USB」。開発の背景や開発時のエピソードについて、開発チームの菊池敦が語ります。
デノンが培ってきたHi-Fi技術をデスクトップサイズに凝縮したUSB-DAC/ヘッドホンアンプ「DA-300USB」。
開発の背景や開発時のエピソードについて、開発チームの菊池敦が語ります。
ディーアンドエムブランドグループジャパン
P1開発本部 マネージャー 菊池敦
●ブログの読者のみなさんに、まず「DA-300USB」がどんな製品なのかをご紹介ください。
菊池:近年音楽のリスニングスタイルが変わってきて、デジタルプレーヤーやスマホなどで音楽が聴くことが当たり前になってきましたよね。
その結果、音楽データがパソコンの中にあり、パソコンでそのまま音楽を再生することも増えてきました。
DA-300USBは、パソコンで音楽を再生する際に、Hi-Fiグレードの高音質で音楽を再生するためのものです。
●CDより高解像度の、今話題の「ハイレゾ音源」にも対応しています。
菊池:DSDは2.8M/5.6MHz、PCMであれば192/24bitまで再生可能です。
現在入手できるハイレゾ音源には、ほぼすべてネイティブで対応できる能力を持っています。
●ちなみにDA-300USBではじめてハイレゾ音源を聴くという人も多いと思います。ハイレゾ音源は、どんな音なのでしょうか。
菊池:やはりCDよりもデータが多いので、容量が大きいぶん、CDよりも細密に音が再生できます。
音質に関しては私の印象ですが、CDの音は「エッジが強い」という気がします。
一方PCM方式のハイレゾ音源の場合は、48、96、192と周波数を上げるとどんどん音が繊細になり、角が取れたまろやかな音になるという印象があります。
一方DSD方式のハイレゾ音源は、PCMとは雰囲気が違って、非常にくっきりした実在感を感じます。
また同時に空気感もあるんですね。実在感と空気感は一見相反する要素なのですが、DSDはこの両方が表現できるように思います。
ただし音の印象は人それぞれですから、多彩なフォーマットを再生できるDA-300USBで、
フォーマットによる音の違いを聞き比べるのも楽しいのではないでしょうか。
●Hi-Fi機器としては斬新なフォルムですね。
菊池:「デスクトップHi-Fi」というコンセプトですから、今までのHi-Fiコンポーネットとは違うものにしたいと考えました。
ですから開発を始めたころは、かなりいろんな形状のアイディアが出ました。
最終的にはデスクトップに置く「モノ」としての魅了と「デノンのHi-Fi」であること、この2つの要素を兼ね備えた今のデザインとなりました。
実は今までデノンのHi-Fiのプロダクトデザイナーはずっと男性だったんです。でも今回はイメージを変えるために女性を起用しました。
丸みをもった上品なデザインには、どことなく女性らしさが感じられるのではないでしょうか。
●試作も何回もしたのですか。
菊池:DA-300USBには、デノンのハイエンドCDプレーヤーに搭載されているAdvanced AL32 Processingを搭載していますが、
当初は一つ前の世代のAL32 Processingを搭載する予定で試作していました。
結局「音に妥協はしない」ということで、開発の途中で最新の回路を載せることとなり、設計をやり直すことになりました。
ですので、試作品は通常の2倍、たぶん50台ぐらい作ったと思います。ここまでたくさんの試作品を作ったのは初めてかもしれません(笑)
●デザインに関して苦労した点はありますか。
菊池:DA-300USBはプロダクトデザインのこだわりとして「ネジを見せない」というのがありました。
デザイン上のさまざまな工夫を凝らした結果、ネジが見えるのはリアパネルだけになりました。
こうした設計は精度が要求されるので、かなり大変でしたが、今回はあえてチャンレンジしました。
本当にギリギリまで何度も金型をやり直しまして、結局金型だけで十数回作り直しています。
またフロントパネルでも、デザイン的に今までにない試みをしています。
通常フロント面に印刷されている文字に関してですが、DA-300USBはユーザーが縦/横どちらで設置されるかわからない製品ですから、
文字が横になったりするのがイヤだなということで、思い切って文字要素をフロントパネルから削除しました。
ですからパネルには、ボリュームの表示も品番名もなにもプリントされていません。
これは正直いって社内ルールを破ってます(笑)。でもルールを破るぐらいの新しいモノを作りたかったんですね。
その結果、非常にシンプルでクリーンな、洗練されたフェースになったと思っています。
●音の面ではどんな点で苦労があったのでしょうか。
菊池:まずスピーカーで試聴しながら、ライン出力の音質を構築することから始めました。
DA-300USBはコンパクトなプロダクトですが、実際にはまったくハイエンドオーディオレベルの音作りをしています。
Hi-Fiグレードのアンプとスピーカーで鳴らしてもらえば、サイズからは想像できないぐらいの音のクオリティと、音場のスケール感に驚かれると思います。
私個人としては最上級のCDプレーヤーの音質とさほど遜色ない出来ではないかなと思っています。
そして同じか、ひょっとしたらそれ以上に苦労したのが、ヘッドホンでの音作りでした。
実はこれがやっかいでした。というのもヘッドホン出力とライン出力はの回路はそれぞれ違うのですが、
ヘッドホン出力の回路をいじると、ライン出力の音も変わってしまうんですね。
ですから最終的には常に両方の音を聴きながら、スピーカー、ヘッドホンともに満足のできる音色を追求しました。結構大変でしたけど(笑)。
ちなみにマニアックなところでいいますと、音作りでのリファレンスに使ったのは
スピーカーではB&W N801、N803など。そしてヘッドホンではデノンのAH-D2000(終了モデル)、
AH-D320、SENNHEISER HD-800など、さまざまなヘッドホンで試聴していました。
●いよいよ発売となりましたが、設計者としてDA-300USBをどんなふうに楽しむと良いですか?
菊池:パソコンで音楽を聴くときに、パソコンに内蔵されているスピーカーで再生するのはやっぱり、淋しいのではないでしょうか。
できればパソコンのUSB端子にDA-300USBを繋いで、ヘッドホンやスピーカーシステムで再生していただいて、いい音で音楽を楽しんでほしいですね。
DA-300USBで「いい音」の魅力を知り、Hi-Fiコンポーネントに興味を持っていただければ設計冥利に尽きます。
それと、デスクトップに置くものですから、モノとしての魅力を感じていただけたら嬉しいですね。
デザインや質感にもこだわっていますので、単にオーディオ、ということではなく、
たとえば腕時計や万年筆のような感じで愛でていただけたら、と思っています。
■ちなみにDA-300USBでこの曲を聴いてほしいという曲はありますか。
菊池:私のオススメ、というわけではありませんが、音決めをしたエンジニアがテストをしながら良く聞いていたのは、
トム・ミドルトンの「Life Tracks」というアルバムでした。
いわゆるアンビエントテクノなのですが、音場が緻密に設計されているのでテストするのに良かったようです。
もちろん彼自身の個人的な音楽の好みでもあると思いますが(笑)。
Tom Middleton「Lifetracks」 [import]
●DA-300USBを手がけてよかった、という瞬間はありますか。
菊池:DA-300USBを発表した直後、まだ試聴会もやっていない段階でしたが、製品を見ただけで予約をしてくださった方が大勢いらっしゃいました。
音を聴く前から信頼して買ってくださったわけですから、これは設計者としては本当に嬉しかったですね。
●最後にブログの読者のみなさまにメッセージをお願いします。
菊池:DA-300USBは私たちが提案する「デスクトップHi-Fi」という新しいジャンルを体現している製品です。
ぜひいちど店頭でその音とデザインをご体験いただきたいと思います。
今話題のハイレゾ音源に対応していますし、Hi-Fiグレードのスケールが大きな音場空間の広さが楽しめますので、
音の奥行きや広がりをご堪能いただけるのではないかと思います。
ぜひデスクトップでデノンのHi-Fiの音を楽しんでください。
DA-300USB スペシャルサイトはこちら
(Denon Official Blog 編集部I)