音質だけでなく、デザインと使いやすさも追求した インナーイヤーヘッドホン AH-C120MA/C120MとAH-C50MA
開発者インタビューvol.2。インナーイヤーヘッドホン AH-C120MA/AH-C120MとAH-C50MAの開発背景などをCSBUデザインセンターの冨田洋輔が語ります。
デノンの高音質を追求したハイエンドスタイルヘッドホン、MUSIC MANIAC <ミュージックマニアック>シリーズから、
AH-C120MA/AH-C120M、AH-C50MAのの2モデル3機種のインナーイヤーヘッドホンが4月に発売されます。
開発者インタビュー第2弾はプロダクトデザインと開発時の苦労について、開発チームの冨田洋輔が語ります。
ディーアンドエムブランドグループジャパン
CSBUデザインセンター冨田洋輔
■デザイン面で苦労した点はどんなところでしたか。
冨田:デザイナーが目指していた仕上げのレベルを、実際の製品で実現するのが大変でした。
たとえばAH-C120MA/AH-C120Mのハウジングのシルバーの部分ですが、一番外側はやや艶を落とし、
角をダイヤカットという工程で斜めにカットすることでキラキラした仕上げにしています。
これはデノンのHi-Fiアンプなどのノブの仕上げでも使われている手法で、Hi-Fiのイメージをヘッドホンへと継承するための工夫でした。
しかし、なかなかイメージどおりにいかなかったので、工場に何度も足を運んで、光沢感を調整しました。
また今回は「DENON」のロゴをデザインにも活かそうと、今までは印刷していなかったコードの付け根にロゴをつけたのですが、
工程上印刷が難しい場所だったので、これも結構大変でした。
↑エッジがダイヤカットで仕上げられたAH-C120MA/AH-C120M のハウジング
AH-C50MAに関しては、ハウジング部分は樹脂ですが、蒸着という手法で金属の梨地仕上げのような高級感のあるしっとりした質感を持たせました。
また<ミュージックマニアック>のヘッドホンAH-D7100やAH-D600のようなイメージを持たせようと思い、
ハウジングに「DENON」のロゴを入れました。
AH-C50MAのハウジングはヘッドホンのハウジングをイメージ(左)、AD-D600のハウジング(右)
今回色や仕上げにこだわったのは、このプロジェクトが立ち上がるタイミングで、
自分自身の勉強のためにカラーコーディネーターの資格を取得したことも実は影響しています。
資格を取る過程で「正しい色の見方」などの勉強をしました。
たとえば色を正しくチェックするためには「冬は正午から午後3時の間で直射日光のないところで見る」などいろいろ細かく規定されているんですね。
それで工場に正しい色が再現できる光を見つけるツールを持ち込んだりして、製品をチェックしました。
ですから色味や艶の出し方などの判断は正確にできたと思っています。
↑AH-C50Mのハウジングの試作。それぞれ仕上げと色味が異なる
■リモコンも新開発ですが、苦労はありましたか。
冨田:技術的には大きいほうが設計は楽なのですが、やはりユーザー視点で考えればリモコンは小さいほうが便利なので、設計上ではかなり苦労しました。
形状についてもたくさんのアイディアが出ましたが、さまざまな検証を経て、今の形状となりました。
ボタンの押し心地などについてもこだわって決めています。
これも何度もデザイナーと話し合い、スケッチと試作、テストを繰り返しました。
↑ 開発段階でのリモコンのアイディアスケッチ案
今回リモコンがiPhoneなどのiOSデバイスだけでなく、Android™に対応したのもポイントです。
Android™は非常にオープンな規格で、実はハード側の仕様がバラバラなんです。
ですからそれらに対応するのはかなり大変でした。
Androidのスマホのなかには、一部ケーブルの仕様が違うものがありますので、それらの機種に対応するためのアダプターも付属しています。
これでほとんどのAndroid™のスマホに対応できたのではないかと思います。
ボタンの動作についてもAndroid™はスマホの機種に依存しますが、「音楽再生」や「着信応答」「通話終了」に対応しています。
↑ Androidスマホ用アダプター(付属)
■開発のプロセスで思い出深いエピソードなどはありますか。
冨田:私たちは品質管理をかなり厳密にやっています。
たとえばAH-C120MA/AH-C120Mのロゴの印刷に関しても、髪や服に擦れて印刷が落ちてしまうことがないように、しっかりと耐久性を確保しています。
そのために堅牢度検査というものを行っています。
AH-C120MA/AH-C120Mのロゴの印刷の場合は「数千回同じ強さで擦っても落ちない」というのが基準としてあります。
これは通常機械で擦ります。しかし今回、たまたま機械がないところでも検査せざるを得ないケースがあり、
自分で1時間以上かけて数千回数えながら同じ力加減で擦る、ということもありました(笑)。
またプラグも新たにデザインを起こしたものなのですが、こちらも抜き差しの試験を数千回、やっぱり自分で抜き差ししました。
これも大変でした。ちなみに製造ロットがわかるようにシリアル番号が入っています。
他社含めこのクラスでシリアルナンバーが入っているのもあまりないと思います。
■最後に、開発中に音質チェックでよく聴いた音源があれば教えてください。
冨田:音質の決定には別途音質担当者とサウンドマネージャーが対応しているので、
個人的に試聴を重ねていたのは・・・開発していた時期にちょうど来日公演もあったのですが
「マイス・パレード」というバンドの「カンデラ」というアルバムをよく聴きました。
フラメンコギターにカホンが入り、さらにエレキギターが入っているというおもしろいロックです。
ポストロックにスパニッシュのニュアンスがあって、気に入っています。
アーティスト名:マイス・パレード
アルバム・タイトル:カンデラ
Pヴァイン
■冨田さん、ありがとうございました。
製品情報の詳細について:
インナーイヤーステレオヘッドホン AH-C120MA/AH-C120M
インナーイヤーステレオヘッドホン AH-C50MA
(Denon Official Blog 編集部I)