ジャズ・クリスマス
街はどこもかしこもクリスマスソングのメドレーに次ぐメドレー。同じ曲ばかり聴かされて、辛い思いをしていませんか? そんな重度な音楽ファンのあなたのために、今回は糖度の低い通好みのジャジーなクリスマスソングをお送りします。
いよいよクリスマスが迫ってきましたが、重度の音楽ファンのみなさま、
この時期、ひょっとして辛い思いをしていませんか?
街はどこもかしこもクリスマスソングのメドレーに次ぐメドレー。
この時期ばかりは、毎年毎年どこに行っても代わり映えのしない、
同じような曲ばかりを何度も聴かされます。
しかもたいていは甘ったるいアレンジのものばかり。
もうあと10日以上もこれが続くのか! とお嘆きの貴兄、貴女、そのお気持ち、よくわかります。
というわけで今回は、そんなあなたに糖度の低い通好みのジャジーなクリスマスソングをお送りします。
アーティスト名:ダイアナ・クラール
アルバム・タイトル:クリスマス・ソングス
ユニバサルミュージック
美形女性ジャズボーカルのダイアナ・クラールのクリスマスソングアルバム。
ロックファンなら、エルビス・コステロの奥様、としてご存じかもしれません。
彼女の落ちついたグッと低い声で歌われるクリスマスソングの数々は、
まさに大人の味わいと言えるでしょう。
おすすめはベースからはじまる渋い「Winter Wonderland」と、
スインギーなビックバンドスタイルの
「Santa Claus Coming to Town」「Sleigh Ride」あたりでしょうか。
いずれの演奏も、派手なハッタリとは無縁。実にツボを得たものです。
とはいえ、ジャズ通も納得するような深い味わいと洒落たフックがあり、
何度聞いても飽きません。
クリスマスシーズンでなくても、良質なジャズとして年中楽しめるアルバムです。
セレクトされたクリスマスソングも渋めな曲が多く、
いかにもクリスマスという感じではないので、
この時期の落ちついたパーティでの、気が効いたBGMとしてもオススメです。
アーティスト名:ジェイムス・テイラー
アルバム・タイトル:JTのクリスマス
ソニー・ミュージック
ジェイムス・テイラーは、アメリカを代表するシンガーソングライター。
伸びやかで、軽やかで、美しい声は「ボイス・オブ・アメリカ」と
言っていいのではないでしょうか。他に比べるものがありません。
このアルバムは、ジェイムス・テイラー(ファンからはJTと呼ばれています)の
複数のアルバムからクリスマスソングを集めたもの。
収録曲も「Winter Wonderland」「Jingle Bells」「Santa Claus Coming to Town」、
「The Christmas Song」など有名な曲が網羅されていますが、
いずれもシンプルで素直ながら「これしかない!」というアレンジが施されており、
そこに絶品といえるJTの歌声が載っているわけですから、
贅沢この上ないクリスマスアルバムだと言えるでしょう。
また、共演者が素晴らしいのも見逃せないところで、
「Winter Wonderland」では、人気絶頂のトランペッターのクリス・ボッティが
渋いミュートトランペットでソロを聴かせてくれます。
「The Christmas Song」でのソロはハーモニカの名手トゥース・シールマンスによるもの。
短いながら、粋で年輪を感じさせる素晴らしいハーモニカソロは、さすがの深い味わいです。
そんな中で、個人的に一番オススメしたいのが
ちょっと地味な曲ですが「Have Yourself A Merry Little Christmas」です。
きれいなメロディを飾ることなく、ていねいに歌っていて、
アレンジもそのメロディを活かすために、地味ながら良く練り上げられています。
歌詞としても 「ささやかなクリスマスを祝おう」
とでも言う意味でしょうか。
この曲ばかりは、クリスマスの夜、
家族が寝静まった後、一人でそっと、ヘッドホンで味わいたいと思っています。
アーティスト名:ウイントン・マルサリス
アルバム・タイトル:クリスマス・カード
ソニー・ミュージック(絶盤)
最後にご紹介するのは、ウイントン・マルサリスのクリスマスアルバム。
現在のジャズシーンを牽引していると言っていいウイントンですが、
「Silent Night」「Sleigh Ride」などでは歌も入っているとは言え、
基本的にはインストであり、コンテンポラリーで複雑なアレンジ、
斬新な和声進行、容赦のない高い音楽性です。
かなり耳の肥えたジャズファンであっても「飽きた」とは言えない
内容の濃さと糖度の低さではないでしょうか。
とはいえ、ウイントンの最大の魅力は、トラペットの美しい音色にあります。
比較的シンプルなアレンジの「Winter Wonderland」では、
圧倒的な技術に裏打ちされた、伸びやかで自由自在に歌う
ウイントンのトランペットが堪能できます。
個人的には、この複雑な和音を理解するために、
来年のクリスマスまで聴き続けてもいいかな、と思っております。
(Denon Official Blog 編集部I)