デノンサウンドマネージャー、山内慎一インタビューvol.2
デノンには全製品の最終的な音決めをするサウンドマネージャーがいます。今回は新たなサウンドマネージャー山内慎一のインタビュー、パート2をお送りします。
昨年サウンドマネージャーに就任した山内慎一のインタビューパート2では2500NEシリーズのこと、そして音楽遍歴やフィロソフィーについて語ります。
GPD エンジニアリング デノンサウンドマネージャー 山内慎一
パート1はこちら
【Denon Official Blog】デノンサウンドマネージャー、山内慎一インタビューvol.1
■インタビューのパート1ではデノンサウンドの新しい方向性である「Vivid」、「Spacious」についてうかがいました。
今月はついに新しいHi-Fiシステムの2500NEシリーズが発売となりますが、このモデルには新しいサウンドコンセプトは反映されているのでしょうか。
山内:SX11シリーズも音決めの時点ではかなり作り込みましたが、サウンドマネージャーとして開発の立ち上がりから100%携わったモデルとしては2500NEシリーズが初となります。
このモデルは企画段階から「Vivid」、「Spacious」という要素を重視していましたので、これらのコンセプトは鮮明に出せたと思っています。
■2500NEシリーズの試聴会では様々な音源を聴きましたが、アンビエントやテクノなど、電子音系の音源が印象的でした。
山内:音の空気感、明瞭度、広がり感などの部分は、アコースティック系に限らずいわゆるテクノやアンビエントなど、PCなどで編集、処理された音源を使ってもわかりやすいのです。
特に最近はテクノロジーとリンクし、音の良いソースも多いです。
もちろんオーケストラ作品などもよく使っています。
結局オーケストラの演奏の空気感や演奏会場の空間的なプレゼンスを高めると、自然とエレクトロニックな作品でも、コンテンツや音響効果がよりクリアに再現できるようになります。
(左上)スーパーオーディオCDプレーヤー DCD-2500NE
(左下)ネットワークオーディオプレーヤー DNP-2500NE
製品の詳細はこちらのプレスリリースをご覧ください。
■そういえば、試聴室も先代の時とは様変わりしましたね。
山内:「Vivid」や「Spacious」のような要素の再現性を正確にチェックするためには、このような空間が必要になります。
ただ様々なジャンルの製品の試聴を継続しながらの変更ですので、急にガラリと試聴環境を変えてしまうわけにはいきません。
それでタイミングをみながら少しずつ変えていきました。
今後もスピーカーの変更などがあれば、まだまだ変わっていくと思います。
↑デノン試聴室 手前の3台は2500NEシリーズ(2016年1月初旬時点)
■ところで山内さんはどんな音楽を聴いてきたのですか。音楽遍歴をうかがいしてもいいでしょうか。
山内:小学生の時は家にあるクラシックのレコードを聴いていましたが、その後はロックに目覚めました。
最初の頃はビートルズなどが好きでしたね。
その後パンクロックに出会って、ニューウェーブやダブミュージックなどに興味を拡げていきました。
■山内さんがパンクというのは意外です。
山内:パンクというガチャガチャうるさい音楽と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、自分としては芸術的なムーブメントとしてパンクを捉えたいと考えていました。
■パンク以降はどんな音楽を聴いたのですか。
山内:ニューウェーブをはじめ、jazz他いろんなものを聴きました。
例えばクラッシュの「サンディニスタ」も、今聴いてもビートルズのホワイトアルバムのように混沌としながらいろんな要素が入った良いアルバムだったと思いますし、パンクの後に流行ったネオアコースティックも好きでした。
チェリーレッド・レコードやラフトレード、クレプスキュールなどのレーベルのもの。
またブライアン・イーノからの流れでアンビエントミュージックなどもよく聴きました。
またクラシックでは諏訪内晶子さんやヒラリー・ハーンなどのバイオリンのものが音色的に好きでした。
ジャズではマイルス・デイヴィスの「ビッチェズ・ブリュー」「パンゲア」あるいは「デコイ」「マン・ウィズ・ザ・ホーン」などエレクトリックマイルス時代の音源が好きでした。
■かなり広いジャンルをカバーしていますね。
山内:そうかもしれません。
自分としては現代音楽的な要素やミニマルミュージックの要素など、最先端でありスリリングな要素というか、そういったものがある音楽に面白さを感じます。
■2500NEシリーズの試聴の音源も、いわゆる試聴会でよく聴くタイプの音源だけではなく、かなり現代的な要素が入った曲があって面白かったです。
山内:ちょっと抽象論っぽくなってしまいますが、「アートとして作られている音楽を、ちゃんとアートとして鳴らしたい」という気持ちがあります。
再生する側のオーディオもアーティスティックなアプローチで音楽におけるパッション、そして視覚的なものまで抽出し、今までにない新しさを意識したサウンドをプレゼンしたいと思っています。
■最後にサウンドマネージャーとして山内さんが今後やっていきたいことを教えてください。
山内:先ほども言いましたが、長い伝統を持つデノンのサウンドを守るだけではなく進化させていく。それはずっとやっていきたいと思っています。
ですから新しいモデルを立ち上げる時には、できるだけ新しい要素を模索していきたいと思います。
そのために自分も常に感覚をオープンにしていたいと考えています。
また今後はハイレゾ系ももっと射程に入れていきたいですし、その一方ではアナログレコードにも力を入れていきたいですね。
アナログレコードは古くからある音楽メディアですが、新しいアーティストが新譜としてアナログ盤を出すこともケースも多いので、それを現代的なオーディオで再生したらどんな音になるか、といったあたりも興味が尽きない所です。
■今は確かに、CD以外に、ハイレゾ、さらに音源配信やストリーミングサービス、そしてアナログレコードなど音源のソースも多岐に亘っています。
山内:オーディオファンにとっては、今はとても面白い時代になってきています。我々としては、その期待に応えていきたいと思います。
(Denon Official Blog 編集部 I)