超初心者のための「レコードプレーヤーって何?」
アナログレコードがますます人気。デノンからも創立110周年記念モデルとして専用ヘッドシェル付きMC型カートリッジが発売されました。ところで、そもそもレコードプレーヤーってなんなのでしょうか。レコードの種類は? そんな疑問にデノンオフィシャルブログがお答えします。
そもそもレコードプレーヤーの起源とは?
錫箔円筒式蓄音機「フォノグラフ」
まずレコードの起源ですが、かの発明王、トーマス・エジソンが1877年に発明したフォノグラフだとされています。
フォノグラフは大きなラッパの奥にマイカ(雲母)の小さな板があり、そこに針がついています。そしてこのラッパに向けて歌ったり話したりすると、マイカ板が振動し、その振動が針を動かし、その動きが回転する円筒形の蝋管に刻まれます。蝋管には錫(スズ)やワックスが塗ってあって針の動きが記録できるのです。そして再生する時は針の振動が記録された蝋管を回転させることで、マイカ板を動かし、ラッパから音が出る、そういう仕組みになっています。
エジソンは「メリーさんの羊」を最初に録音したと言われています。これが人類初の「録音」となりました。
円盤式蓄音機「グラモフォン」
そこから1887年、はやくも次の進化形が現れます。エミール・ベルリナーというドイツ出身のアメリカ人が発明した円盤式蓄音機「グラモフォン」です。これが現在のレコードプレーヤーと同じように円盤を回転させて音を再生する仕組みになっています。
記録する媒体として適しているのはエジソンの円筒型か、ベルリナーの円盤型か、当時はかなり論争があったようですが、最終的に円盤型のレコードが選ばれて現在まで至っています。円盤型の録音盤が主流となった理由の一つは複製がしやすいということがあります。録音した原盤ができたら、それを反転させたマザースタンパー(凸盤)をつくり、あとはマザースタンパーを空の円盤に押していけばいいので円筒型よりはるかにコピーが作りやすいのです。
ちなみに日本ではデノンの前身である日本蓄音機商会が1910年に国産第1号の蓄音機「ニッポノホン」をつくっています。ニッポノホンの実機は現在本社の玄関にも飾られています。
本社玄関に展示されているニッポノホン
動力はゼンマイで、針は管を介して直接ラッパにつながっている
電気式蓄音機
蓄音機はゼンマイを動力とし、針がレコードの溝をトレースすることで発生する振動エネルギーで振動板を動かし、ホーンによって増幅するものでした。新たに登場した電気式蓄音機(電蓄)では、針の動きを電気信号に変換し、真空管式のアンプで増幅、その信号でスピーカーを鳴らす方式に変わりました。そして、ターンテーブルを駆動する仕組みもゼンマイからモーターへと変わりました。
こうした仕組みは原理としては今のレコードプレーヤーを使ったHi-Fiシステムと同じものです。
現在のレコードプレーヤー用Hi-Fiシステム。レコードプレーヤー「DP-450USB」+プリメインアンプ「PMA-800NE」(どちらもDenon)
そもそもレコードはなぜ音が出るの?
ではそもそもレコードはなぜ音が出るのでしょうか。
それはレコードに溝が刻まれているからです。この溝はエジソンの蓄音機と同じく、音声による振動エネルギーを針の動きとして記録した物です。再生時にはその溝に針を落とすことで、針が振動し、その振動が音へと変換されます。
上の写真はレコードの音溝を顕微鏡で見たところ。この上を針が走ることで針が振動して音が出ます。
レコードプレーヤーを使ったことがある方はご存じだと思いますが、アンプの電源を落としてレコードプレーヤーだけを回しても音は聞こえます。音はか細いですが、何の曲なのかはわかるぐらいの音は出ています。ですから基本的な仕組みは蓄音機から変わっていないということです。
ちなみにレコードの溝は50ミクロン程度。髪の毛ぐらいの細さです。また溝が左右の溝に干渉すると針が飛んでしまうので、レコードのカッティングには高い技術が必要とされます。
上の写真は、日本コロムビアにあるレコードのカッティングマシンです。録音された音楽信号を振動に変換して溝のないツルツルの原盤に溝を切っていきますが、非常に高度な技術を要する音の匠の技です。
デノンブログにはアナログレコードのカッティングについての記事があります。
ぜひこちらもご覧ください。
レコードの種類って?
最後にレコードの種類についてご説明しておきましょう。
SP盤(スタンダードプレイ)
最初にできたレコードがSP盤といわれる規格のレコードです。
SP盤はスタンダードプレイの略。特徴としては78回転で再生される点が挙げられます。LP盤が33回転、EP盤が45回転ですから、かなり速いスピードで回しています。その理由の一つは蓄音機ができた当時はゼンマイ式であり、回転を高い精度で制御するのが難しかったことがあります。SP盤は1960年代に生産が終了。モノラル盤のみ。また素材はシュラックという樹脂で、落下するとすぐに割れてしまうため、取り扱いには注意が必要です。
デノンのレコードプレーヤーDP-450USBの回転切り換え部。33/45/78の切り換えが行え、DP-450USB は78回転のSP盤も再生可能。
LP盤(ロング・プレイ)
現在いちばんよく目にするLP盤は、第二次大戦後の1948年に出てきた規格です。こちらはロング・プレイの略。33回転で再生されます。サイズは30センチ。今流通しているLP盤はほとんどがステレオですが、レコードのステレオ再生がはじまるのは1958年であり、それまでのレコードはすべてモノラル録音でした。プレスリーもビートルズも発売された当時はモノラル録音です。
その後1963年に日本でもFMのステレオ放送の試験放送が始まり、ご家庭のオーディオ機器もステレオ再生装置が一般化して、約10年の時間を経てLP盤もステレオ録音が一般的になります。
EP盤(エクステンドプレイ、シングル盤、ドーナツ盤など)
直径17cmで片面に1曲のみ収録されているのがEP盤です。シングル盤、ドーナツ盤とも言われます。再生スピードは45回転。ドーナツ盤と呼ばれる由来は、盤の真ん中に大きな円形の穴が空いているからです。EP盤はもともとジュークボックスでの再生を目的としてつくられた規格で、あの大きな穴はジュークボックスの中でレコードを機械的に自動装填するためのものです。EP盤をレコードプレーヤーで再生する際、EPレコード用アダプターを使います。これはEP盤の大きい穴をプレーヤーに合わせるためのものです。
レコード再生が終了すると自動的にアームが針に戻るオートリターン機能を搭載したDP-300Fには盤のサイズに切り換えがついている
その他のレコード
その他に12インチ(30cm)で片面一曲の12インチシングルがあります。45回転、33回転のものがありますが、レコードの外側だけに録音するため、音質が良いのが特長です。
また、EP盤のサイズで回転数が33回転、数曲が入っている17cm LP、コンパクトアルバムもあります。
さらに子ども向け雑誌の付録などに使われた「ソノシート」と呼ばれたシートレコードもあります。回転数は33回転のものも45回転のものもあります。
最後に主なレコードの種類を表にしてまとめておきます。どうぞご参考にしてください。
(編集部I)