クラシック音楽ファシリテーターの飯田有抄さんが「RCD-N10」をDALIとPolk Audioのスピーカーで聴く
ミニマルなデザインで日本のみならずヨーロッパでも高い支持を集めているネットワークCDレシーバーCEOLシリーズの「RCD-N10」。今回はクラシック音楽ファシリテーターの飯田有抄さんにとっておきの音源を使って「RCD-N10」をDALIとPolk Audioのスピーカー、さらにCEOLシリーズのスピーカー「SC-N10」で聴いてもらいました。
洗練された音とデザイン RCD-N10のパートナーに選びたいスピーカーとは?
スッキリと、心地よく、いい音で。
そんな気分でリスニング環境を作りたい時にピッタリだなぁと感じるのが、デノンのネットワークCDレシーバー、RCD-N10です。
真っ白。デコボコしていなくて、四角いデザインがとてもシンプル。ごく僅かに角がとれた形状なので、冷たい印象がない。安っぽくなく、なおかつ親しみやすい雰囲気。ストリーミングサービスにWi-Fi経由でサクッとアクセスできるのは、もはやマストですよね。スマホに入れたHEOSのアプリからAmazon Music を聴いたり、Spotifyの「お使いのデバイス」から選べるのも便利です。
設定がめちゃくちゃラクでした。レシーバーが勝手に自室のネットワークを受信してくれるので、一度リモコンでパスワードを入れたらもう完了。いつのまにか(?)机の上のiMacとの連携も済んでいて、Apple Musicの音源やYouTubeの音声もAirPlay 2接続で、高音質で出せます。
もちろん手持ちのCD再生もダイジ。令和な若人たちの間では“懐かしアイテム”化しつつあると噂のCDですが、クラシック音楽をメインに聴く私のような人間にとって、CDはまだまだメイン・メディアです。とくに日本のアーティストは、配信でのリリースのみならず、必ずといっていいほど手に取れるCDという“ブツ”を作ってくれるから、コンサート会場などでも記念やお土産として、思わず買ってしまったりします。
というわけで、ネットワークの音源も、CDも、そしてUSBメモリーなどの音源も、なんでも聴けて、アンプと一体化したレシーバーは、もう本当に便利。重くないしコンパクトだし、「これ一台で文句ないな……」という気分にしみじみさせられてしまうデバイスです。
とはいえ、これだけでは音は出ません。でも、それがまたいいんです!
なぜなら、好きなスピーカーを選んで組み合わせることができるから。
というわけで、今回は、このRCD-N10と組み合わせるオススメのスピーカー、3機種を聴き比べしながらご紹介します!
※実売価格は取扱店によって異なります。
そして今回聴き比べに使用した音源は次の3種類です。
内藤晃が自身で立ち上げた「sonorité」レーベルによる2022年6月リリースの新譜です。プーランク、フォーレ、セヴラック、ラヴェルといったフランスの作曲家の小品をならべた、お洒落で小粋なアルバム。もちろん演奏は絶品で、微妙なニュアンスに富む音色と、語るように歌うように奏でるピアノの美しいこと。楽器の選定にゆるぎないこだわりを持った内藤が、北海道小樽市のホールまで足を運んだ録音。ジャケットや盤面は詩画家ほんまちひろとのコラボレーション。すっきりとおしゃれなシステムでぜひ聴いて欲しい一枚。
CD シューマン:交響曲全集 セル指揮/クリーヴランド管弦楽団 SICC1653~4
クラシック音楽好きの人は、最新の録音だけでなく往年の指揮者の名盤をあらためて聴くことも多いですよね。こちらのセル指揮、クリーヴランド管のシューマンの交響曲全集2枚組は、録音そのものは1958〜60年のアナログ録音による名盤です。CDの復刻版で聴いても、解像度キレッキレのハイレゾ音源とはまた一味違った重厚感と立体感があり、基本に充実なセルのタクトが生み出す音楽の構築性が、格調高いシューマンのシンフォニーを届けてくれます。
エベーヌ弦楽四重奏団:「Beethoven Around the World」より、ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第14番嬰ハ短調 op.131
(ストリーミングによるハイレゾ再生)
来日公演でも客席を沸かせる、大人気のエベーヌ弦楽四重奏団。コロナ禍に見舞われる直前に完遂させたワールドツアーで、全曲演奏したベートーヴェンの弦楽四重奏曲から、今回は内声的で静謐な第14番をチョイス。自分の時間に浸りきりたい夜や休日に、じっくりとスピーカーの前で聴いて欲しい作品。4人の弦楽器奏者の音色の機微をじっくりと堪能できる録音と演奏です。
RCD-N10との相性バッチリCEOLシリーズの「 SC-N10」
デノン公式サイトでも「RCD-N10に最適なスピーカーシステム」として紹介されているとおり、見た目のシンプルさもサイズ感も、とにかく相性の良さを感じますが、とにかく驚いたのはその音です。
W153 × H233 × D200 mmと設置面積はほぼA5サイズですごくコンパクトなのに、音が閉じ込められてしまうような感じはなく、高音も低音も抜けのいい晴朗なサウンドでびっくりしました!
場所を取らずに、しかもこのコストパフォーマンス。いやはや。3機種あるのに、いきなり1発目から満足してしまいました(笑)。もうこれでいいんじゃない? だって本当にRCD-N10との相性がいいんですもの。ちなみに、グリルは取り外し式ではございません。
内藤晃のピアノアルバムはやや高音寄りだけれど、柔らかさもちゃんと感じられる。キラキラとした響きが味わえて素敵。
オーケストラは、ボリュームを上げすぎないほうが、上品で無理のないバランス良い再生となります。コンパクトなスピーカーで、あまり音量を上げすぎるとちょっとムリヤリ感が出て、音が荒めに感じられてしまうことがあるので、見た目にふさわしいボリュームで楽しみたいところ。立体感は感じられて、オーケストラとの親密な楽しさを味わえます。ニアフィールドで聴きたい人には本当によいです。
弦楽四重奏は、クリアに響いて弦楽器の伸びやかな音色が楽しめます。筐体の小ささは気にならないし、弱点を感じませんでした。この組み合わせ、本当にいいな。好きだな。
重厚感、立体感が増したDALI 「OBERON1」
OBERON1は、もともと好きなスピーカーです。どの音域も不自然さがなくて、温かみある音色。以前、600NEシリーズとの組み合わせで聴いたときにも、その安定したサウンドに惚れ惚れしたものでした。何しろこのサランネットの色味と、木目がほっこりするキャビネットがいいですよね。白はこれまたRCD-N10との組み合わせがオシャレ。ブックシェルフ型は、まさに本棚の一角にセッティングしても、「THE 文系」な雰囲気が出てよいです。自室をカフェっぽい空間にしたい人にも本当におすすめですね。音的にも見た目的にもボサノヴァなどを聴きたくなりますが、クラシックにも向いています。
サイズはSC-N10よりひと回り大きくなります。そのためか、やや音に重厚感が増しました。でも、ただ重々しくなるのではなく、オーケストラでは立体感も増してくるので、見た目の違いがそのまま音の違いに近い印象です。とても抽象的な言い方をしますが、SC-N10は爽やかな日曜日の朝、OBERON1は土曜日の夜、という感じでしょうか。ゆっくりしたい時に聴きたくなります。
ピアノの音色は落ち着いた響きに。抜けの良さというよりも、ぐっと楽器に一歩近づいて、音楽に自分が寄り添える感じがしました。どちらかというと低音寄りの充実感があります。弦楽四重奏のアンサンブルは、個々の奏者の音がより分離して聞こえる感じですが、柔らかくまとまりもよく、弦楽器の響きはより柔らかい印象となりました。
好バランスでじっくりと音楽鑑賞したくなる Polk Audio Reserveシリーズ 「R100」
3機種のなかでもっとも大きなスピーカーです。大きいといっても、W166 × H324 × D260 mmで、設置面積はA4よりひと回り小さいブックシェルフ型で、Polk AudioのReserveシリーズの中では一番小さいモデルです。でもやっぱり、音に余裕というか、ゆとりというか、自然な奥行きが生まれます。形状的には突起のあるツィーターや、背面のバスレフポートがこだわりのある雰囲気で、これがお部屋にあったら、「選ばれしスピーカー」という存在感を醸し出すこと間違いなし。
↑Polk Audioの突起のあるツィーターや、独特な形状の背面のバスレフポートが特長
音の印象としましては、SC-N10とOBERON1のいいとこ取りというか、とてもバランスの良さを感じました。エッジが立ちすぎていない印象なので、聴き疲れもしなそう。BGM的に使うよりも、しっかり2本のスピーカーと自分が正三角形になるように座って、じっくりと音楽鑑賞するひとときに良いと思います。
ピアノの音色は、奏者がタッチを繊細にコントロールして生み出すニュアンスをしっかり伝えます。音の陰りまでもが感じられて、内藤晃の弾くプーランクの「愛の小径」は、色気が一段増しました。弦楽四重奏は、第2ヴァイオリンやヴィオラの音もさらに分離されてクリアに受け取ることができ、演奏の生々しさが感じられました。オーケストラは、やはりこのくらいの大きさがあると余裕が出て、奥行きが味わえますね。交響曲の鑑賞には、ReserveシリーズのR100はおすすめです。
RCD-N10のパートナーとしては、3つのスピーカーはどれもしっくりきますが、それぞれの音の特性から、自分の使い方にしっくりくるものを選びたいところ。
3つ聴いた上で最後にもう一度強調しますが、コスパ最強のSC-N10は侮れません!まずはこのコンパクトなセットから導入をスタートしてみるのは楽しいかもしれません。
飯田有抄 プロフィール
東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Macquarie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。音楽専門雑誌、書籍、CD、コンサートプログラム、ウェブマガジンなどの執筆・翻訳のほか、音楽イベントでの司会、演奏、プレトーク、セミナー講師の仕事に従事。NHKのTV番組「ららら♪クラシック」やNHK-FM「あなたの知らない作曲家たち」に出演。書籍に「ブルクミュラー25の不思議〜なぜこんなにも愛されるのか」(共著、音楽之友社)、「ようこそ!トイピアノの世界へ〜世界のトイピアノ入門ガイドブック」(カワイ出版)等がある。公益財団法人福田靖子賞基金理事。